
「樂焼で自然とのつながりを 実感できる」
学生による
器づくりの授業レポート(2)
(2)_「菊練り 3 年」
さて、粘土が完成すると次は茶碗にしていく作業、
成形が始まるかと思いきや、
成形する前にしなくてはいけないことがまだまだありました。
道のりは遠い、、、
「掃除ではじまり、掃除で終わる」
そうすることで心を整える。
〈粘土を練る〉
練る前に、自分が使う場所を綺麗に掃除します。
そうすることで心を整え、
よしやるぞ、
と スイッチを入れるのです。
『掃除で始まり掃除で終わる』
この授業ではこれを徹底して行いました。
-
椿昇先生のコメント
何ごとも「段取り」に尽きますね。
段取りとはプロセスにおける予測能力です。
予測のためには経験が必要ですが、
直接経験するよりも間接的に掃除をしながら
お師匠の息遣いを盗み、次に起こることを予測する。
これが徒弟制という現場力を総合的に高める伝統の教育システムです。
いかにクリエイティブに掃除をしているのか・・
師匠は横目でちら見していますよ。
今回ベースとなる土は、
童仙坊土 4 : 再生土 6
の割合で作るので、
出来上がった粘土を成形しやすいように加工していきます。
まず粘土を均一に混ぜ、柔らかくするするために「荒もみ」をします。
「菊練り 3 年」と
言われる 陶芸のせかい。
次に、粘土の中の空気を抜く「菊練り」。
これは、粘土の中に空気の粒があると、
焼いたときに膨らんで作品が壊れてしまうのを
防ぐためにする工程です。
この作業を 100 回程行います。
お茶碗の授業で、
この「菊練り」が一番の曲者でした。
「菊練り」の名前は、
菊の花びら模様みたいな形になるからこう呼ばれているのですが、
これが、全然、菊の花びらにならない。
お手本を見ていたら、先生は簡単そうに
ギュッギュッギュッギューとリズムよくこなしていくので、
私もできると 思っていました。
が、全然できませんでした。
それもそのはず。
陶芸の世界では、「菊練り3年」と言われているほど
難しく大変で、たいせつな工程なのです。
でも授業は全部で5週間しかないので、
やるしかありません。
しかも3日しか時間はありませんでした。
3年かかることを3日でやるって、鬼ですか 先生 …。
-
椿昇先生のコメント
はいそのとおり!
先生ではなくお師匠さんです。
素晴らしい作品を生み出すために妥協しないのです。
甘やかされてはきみたちの未来が小さくなってしまいますよ。
みんな、いつもより早く学校に来て練習したり、
授業後に残ったりして必死でやりました。
できるようになった人は、他の人に教えます。
教えることで自分もさらにできるようになります。
私も負けじと、練って練って、練りまくりました。
その結果、
ギリギリ菊の花びらに見えるようになりました。
菊練りができたら徐々に
“もみあげ” (成形しやすいように三角錐のような形にすること)、
これも 100 回程度やったら、 成形準備完了です。
_____________________________________________________________________________________
お茶碗の授業の中で
この菊練りが一番大変 だったと思います。
なかなかうまくならないから
精神的にも身体的にもキツイし、
腱鞘炎になってしまった子もいました。
-
椿昇先生のコメント
物作りの現場はみんな体を粉にしてがんばるのです。友人の彫刻家船越桂先生は、長年床に座って木彫をしたために背骨が曲がって、痛み止めを打ちながら作品を造っています。
でも、簡単にできてしまったらおもしろくないですよね。
何事も継続することで、
できるようになっていくものだと思います。
先生たちも、
「最初はできなかった。長年やってきたから できるようになった。」と、
おっしゃっていました。
継続することは、簡単なようで難しいです。
この楽焼の授業は、
まさに 基礎美術コースの本質を学んでいる授業でした。
-
椿昇先生のコメント
口当たりの良いワークショップ系の授業で誤魔化す事は
一切このコースにはありません。
師匠たちの熱い叱咤に全力で答えると、
いままで見えなかった景色が
みなさんの前に広がるようになります。
その瞬間の快感を一度どこかで味わってほしいですね。
私たちがよく授業中、口にしていた言葉が、
「諦めたら、そこで試合終了ですよ。」 (SLUMDUNK より)
素人とプロの違い、
それは 続けられるか、
続けられないかだと
私は思います。
-
椿昇先生のコメント
とはいえ、
あなた達が1回生でおどおどしていた頃と、
一年たった今では
明らかに身体も心も大きくなっていると実感します。
確実に堂々として来たのを感じて嬉しく思います。
つづく