京都文化
トリハダ通信
1

ひとつのために

「樂焼で自然とのつながりを 実感できる」
学生による
器づくりの授業レポート(4)

Kyoto Art class
Report #1
“Rakuyaki”
by Suzuki Hinae

基礎美術コース 2年
鈴木 日奈惠

(4)_「ひとつのために」

「仕事は神事である」
お茶碗一つに 60以上の道具。

 

〈削り〉

ー成形から数日後ー
削っていきます。
樂茶碗は、削りも全て人の手で行います。
削るときに使うかんなも、自分で作ります。

  • (椿先生のコメント)
    なんでも買えば済む時代って、ほんとはみんなが不幸になってゆくんだよね。自分で作れるという事を知ると、未来が少し確かな姿を見せてくれるのです。それは生きてゆく上で哲学にも似た背骨を私達に与えてくれるのですね。

 

私たちは一つしか作れませんでしたが、
先生たちはお茶碗一つに60以上の道具を使います。
それらもすべて自分で、
使いやすいように 加工して作るのだそうです。

「仕事は神事である」
と考える先生は、 道具にも感謝することを大切にしているのが、
先生の仕草や 扱いかたから伝わって来ました。
「掃除ではじまり、掃除で終わる」 も、神事であるが故にです。

  • (椿先生のコメント)
    「仕事は神事である。」 と考える先生は、道具にも感謝することを大切にしているのが、先生の仕草や扱いかたから伝わって来ました。
    「掃除ではじまり、掃除で終わる。」 も、神事であるが故にです。

気持ちが変われば、作品を作る気持ちも 変わっていきます。
お茶碗が成形できたら
次は “削り”の工程に入ります。

 

_______________________________________________________________________________________

高台はお茶碗の「顔」。
成形時から7割は削る。

〈削り〉

順番は内→外という順番で、 内の方が多く削ります。

削りはただ削ればいいというものではなく、
自分の理想のお茶碗をイメージし
使う人のことを考えながら削っていかなければいけません。

最初は荒目に削ります。
注意しなくてはいけないのが、 削りすぎないこと。
薄すぎると割れてしまうし、
やりすぎると破れます。
また、お茶碗は焼くと縮む習性があるので、
そのことも念頭において、削ります。

やっぱり、削りすぎて穴が空いてしまったり、
乾燥してきて亀裂が入り崩れてしまった子など、
みんな悪戦苦闘している様子でした。
特に高台の部分はお茶碗の見所の一つで、
“お茶碗の「顔」“ とも言われている部分なので慎重に。

私は大胆すぎて穴空きました。
なんと、驚いたことに成形の時から、
7 割以上は削ってしまいます。

みんな黙々と、 集中して削り進めていっていました。
授業内でできなかった子は、 持ち帰ってやったり、
空き時間を利用して削りました。
その後、 底と口部分の乾燥具合を合わせるように
交互にゆっくりと乾かして、
爪が入らなくなり白くなっていたら 乾燥終了。
素焼きしていきます。

〈素焼き〉

素焼きとは、お茶碗を焼く前の準備のことで、
釉薬をかける前に低い温度(700℃~900℃)で
焼き固める工程のことです。
素焼をする事により、作品の強度(特に水に対する強度)が増します。
また、吸水性が増し、
水に溶いた釉薬を素早く吸収し、
均一に塗る事が出来ます。

電気釡は結構深いので、 落とさないようにひとつずつ入れます。

 

また、お茶碗には、
誰が作ったか 分かるように彫ったり、
“印” を押したりして自分のサインをいれます。

“印” も粘土で作り、
お茶碗と一緒に素焼きし釉薬をかけ、一緒に焼きます。
サインにも、作る人の個性が出るのが良いですね。

素焼き後のお茶碗。ひとつひとつ 表情が違っておもしろい。

 

素焼き後の印と、高台。

 

三角錐だった粘土が、ついに形になりました。
素焼きしたお茶碗をサンドペーパーで少し削ったら、
次回は釉薬(ゆうやく)を 掛けていきます。 釉薬が何かは、また次回。

_______________________________________________________________________________________

大量生産を目指さない、
ひとつのためのお茶碗。

 

削っていて、何度も底や側面が破れたり
乾燥してヒビが入ってしまったり、
何度もやり直しをしました。

果てしない作業でした。

  • (椿先生のコメント)
    手作り没頭しているうちに「果てしなさ」が快感になるんだよ。

樂焼は、大量生産を目的としていません。
ひとつひとつ違うものであり、ひとつのためにものを作ります。

だから、こんなに時間がかかります。
時間がかかった分だけ愛おしく、大事にしたいものになります。
楽茶碗には、手づくりの良さが つまっています。

なんでも省略して
簡単にできるものが多くなった時代だからこそ
手間を惜しまない楽茶碗の様なものが
より価値あるものに みえてくるのでしょうか。

  • (椿先生のコメント)
    普通の暮らしをしていると、ついつい便利だからとか安いからという単純な理由でプラスチック製品を無造作に買っては廃棄するというルーティーンに入ります。
    お茶の世界は見事なまでに「無駄」(お道具も仕草も)がありません。環境問題を考えても、明らかに日本の文化には知恵がありました。この知恵を身体を軸に会得してゆきましょう。

 

つづく