京都のスープ

常連客のもう一つの家
喫茶 チロル

創業50年を迎える
喫茶店 チロルへ。

Soup of Kyoto
interview 1
TYROL
by Takenouchi Haruka

京都のスープ 1
喫茶 チロル
空間デザインコース 2年
竹之内 春花

「アイスクリームもない、ホットケーキもない。
年金喫茶、老人喫茶。
それでもここに来ないと日が暮れないってみんな言ってくれるんです。」

来年4月に創業50年を迎える喫茶店「チロル」
先代の思いの詰まった喫茶店を切り盛りする秋岡登茂さんと秋岡誠さんにお話を聞いて来ました。

 

 

喫茶 チロル

先代の思いの詰まった喫茶店

来年4月に創業50年を迎える喫茶店「チロル」
2代目秋岡誠さんの父で1代目の秋岡勇さんと、お爺様が
2世代に渡り勤めていた会社が倒産したことをきっかけに、
喫茶「チロル」は誕生しました。

勇さんと、今でも店の看板を務める奥さんの秋岡登茂さんのご夫婦で創業。
山が好きで、写真が好きで、クラシックが好きだった勇さんの思いの詰まった店内は、
山小屋をイメージしてつくられました。

壁には知人から集めた昔の京都を写した写真が、
勇さん自らの手で複写、水張りされ、飾られています。

角地にあった家を、勇さんとその弟さんでお店に改装し、
料理と経営は独学で営業を始めました。

「僕も父も、どこの料理屋で修行した訳でもない、 喫茶学校へ行った訳でもない。
だから進化はしてないんですよ。(笑)」

登茂さんと、息子さん、そして登茂さんの義妹さん、 娘さんのご家族とアルバイトの方で、
当時のままのお店を守っておられます。

喫茶チロルとヨーロッパ企画

喫茶チロルは、京都を拠点に全国で活動する劇団 「ヨーロッパ企画」とも
深い関わりがあります。
劇団の俳優さんや、「曲がれ!スプーン」などのSF作品を描く脚本・演出家 上田誠さんも常連客の一人です。
そのヨーロッパ企画の劇中では、チロルが度々登場します。

『タクシードライバー祇園太郎』は毎回、
主人公のタクシードライバー祇園太郎がお客さんの悩みを、
京都をドライブしながら解決していくというヨーロッパ企画のラジオ番組から生まれたドラマです。
2011年にNHKにて実写化、話題を呼び3話のストーリーが43話に拡大され、放送されました。

その祇園太郎の行きつけの店として、チロルと、 チロルの厚切りカツカレーが登場します。

作品を鑑賞した全国のファンの方々が、
そのカツカレーや、脚注にも描かれるチロルの暖かさ、懐かしさを求めて
ここを訪れているのです。
今でも、チロルは上田さんの作品の源泉となっているそう。

「上田くんはね、いつもあの角の席に座るんですよ。 あそこに座ると(物語が)降ってくる、と言っていました。(笑)」

 

 

常連客のもう一つの家

喫茶チロルには、常連歴30年を超える常連客が多くいます。
チロルでいつもデートをしていた方々が結婚され、今度は子供を連れて、
家族になって来られるということもあったそうです。

看板を務める登茂さんを“お母さん”と慕い、お客さんが訪れます。
お母さんと話していると、いつの間にか店内の他のお客さんにまで話の輪が広がっている、
なんてこともありました。

「アイスクリームもない、ホットケーキもない。
年金喫茶、老人喫茶。
それでもここに来ないと日が暮れないってみんな言ってくれるんです。」

開店当時から変わらないメニューと、秋岡さんご家族のいつでも暖かく迎えてくれる接客に、
多くの人がもう一つの家のように、 チロルを愛し、通っています。