KYOTO T5 研究センター長が
「パリ」へ。
視察報告(2)

KYOTO T5 VISIT
PARIS & LONDON #1
SAKAI YOHSUKE

酒井 洋輔

KYOTO T5の研究センター長 酒井洋輔によるパリとロンドンの出張日記。

パリへは「メゾン エ オブジェ」という国際見本市に出展する計画を練ることを目的に。
ロンドンへは、国立の美術大学「Royal College of Art(RCA)」と交流授業を展開するために視察へ行って来ました。
その報告をレポートします。

 

 

 

デザイナーのセザくんとLA PARISIENNE

パリに家のあるセザくんに連絡をとって、ポンピドゥセンター前で待ち合わせ。
余談だけどポンピドゥセンターは、エキセントリックで下品な外観の美術館だけど
これ、僕は、何かをリノベーションした建築だと思っていた。
セザくんと話して、0から建てたことを知る。
当時パリジャンは大反対だったそうだ。そりゃそうだろう。
だけど、今、ポンピドゥはちゃんと建っている。
京都でいうと、京都タワーみたいなものなのかなと思う。
京都タワーも京都市民にとっては当時異物でしかなかったろう。

 

セザくんにメゾンオブジェのことを話して、協力をお願いする。
セザくんは優秀なデザイナーで、その友達にとびきりスマートな仲間もいるらしい。
「自分にとっては初めてのジャンルの仕事だ!エキサイティング!」
と、自信を持って、楽しそうに引き受けてくれた。

 

これで出展空間はメールのやり取りで打ち合わせしながら、制作はパリでやれそうだ。
日本で作って、それを輸送するというのは現実的ではなかった。

 

たぶん、見せ方が大事だと思う。
大事だと思うけど欧米のバイヤーに「クール」と思ってもらえる絶妙なラインが
日本人の自分たちには掴みかねる。
そういう意味でも現地デザイナーのメンバー入りは大きい。
(余談・セザくんとは日本では、銭湯友達です)

 

簡単な打ち合わせの後、
僕が前の日にカフェで飲んだクラフトビール「LA PARISIENNE(ラ パリジェンヌ)」を探し回る。 セザくんはママに電話して、クラフトビールの店の場所を聞き、マレ地区を案内してくれる。
なかった。
普通のスーパーの方がある、ということでMONOPRIX(モノプリ)へ。
なかった。
このビールを気に入った理由は味ではなく、ラベルのデザインに女性が描かれていること。
そんなビールを日本では見たことがない。パリのマダムは素敵だ。
どうしても持って帰りたいと思ってしまった。
思ったことはだいたいやらないと後々ひきずる。
(後日、百貨店ボン・マルシェ食品館にて無事購入することができた)

 

 

 

おいしいChartier

「京都造形芸術大学のファッションの卒業生が今、パリに住んでいる」
ということで、待ち合わせをして夕食を共にすることに。
シャルティエというお店に18:30。
少し早く着いたので、先に席に着いておこうと入ろうとしたら、エントラスで止められ
「何人だ?」
「3人です」
「後の2人は?」
「まだです」
「じゃあここで待っとけ」
と玄関の椅子で待つ羽目になる。
待ってる間にお客が来ること来ること、どんどん入店していく。
ぱっと見、相当広くて席もたくさんあるけど とにかく人が来続ける。
早く着いたのに、満席になったらどうしようとそわそわ。
なんとか満席前に連れの2人が来てくれたからよかった。
もう「1人だ」って言って入ろうかなと思ったくらい。

 

正直な感想として、味はそんなに美味しいと思わなかった。
別に普通じゃんと思った。
できれば誰だって、口に入れた瞬間に「!」とシビれる電撃な体験を期待する。
そういうことは、なかった。
にも関わらず、このお店にまた行ってもいいかなと思えている不思議。
また行こうというお店って、日本にいても、そう多くはない。

シャルティエの雰囲気は素晴らしい。
ギャルソンという名のウエイターは、背筋が伸びてるのが命かなとか
店を包み込む熱気のようなものに陶酔させられる。
舌がおかしくなって、美味しいと勘違いしてもおかしくない。
エスカルゴなんか食べたくなかったけど、食べちゃった勢い。

「おいしい」の7割は味覚で感じるものだと思うけど
ここでは「おいしい」の7割は味覚外で感じさせられる。
特に気に入ったことは、伝票ではなくテーブルクロスに直接注文したものを書き込むスタイル。 これは新鮮。
お会計の時も、その場でギャルソンが筆算する。

 

特においしくなかったのに、
とてもおいしかった気になって店を出る時に
外にお客が200人以上順番待ちをしていたのを目の当たりにして
またしても、幸福感に包まれる。
「シャルティエは特にうまい!ってわけじゃないけどおすすめだよ」が適切な案内だと思う。

 

 

 

BON MARCHE美術館

ボン・マルシェはお金がなくても立ち寄るがいい百貨店。
世界で初めての百貨店だという噂。
何が違うのかって、「余裕」がある。
例えば、パリの百貨店ではギャラリーラファイエットも有名だけど、
そっちは人がたくさんいて、酔う。観光客でごったがえしている感じ。
ボン・マルシェは不思議と人がそんなにいない。
人がいないと、廃れてるような印象を生みそうだけど、それが全くない。
人生、毎日毎日汗水垂らして働く期間があってもいいけど、余白があることに憧れる。
その余白がボン・マルシェにはあると言えばいいのか。
憧れが、そこにはあるんだろう。

 

 

ボン・マルシェに来た目的は「オルセー美術館のハチミツ」を買うためだ。
当のオルセーでは売り切れ!
で「ボンマルシェにはまだあるかも」と言われてやってきた。
オルセー美術館は屋上で養蜂をしている。
しているが、想像するにこのハチミツのクオリティは高いとは言えない。
パリはイメージと違って、街に花は決して多くない。
だから、オルセーの屋上の蜂は困っている。
カフェでコーラを注文して、外で飲んでると必ずと言っていいほど、蜂がやってきて
コーラを吸って帰っていく。
家の外に出されたゴミ袋にも蜂が立ち寄っているのを見かけた。
というような観察から、このハチミツには花の蜜だけでなく、
ふんだんに“都市の生活”が含まれている。
蜂があらゆる糖分を蜜に変換しているのだ。

自分の家と大学でニホンミツバチの養蜂している自分としては、
このハチミツは別に食べたくないのだけど
前述したようなストーリーは面白いし
何より箱がかっこよすぎて3つも買った。
ハチミツは食べるけど、蜂は嫌い という人はすごく多い。
にも関わらず、このハチミツのパッケージの箱の内側には
たくさんの蜂が意匠として描かれている。
このようなデザイン例は、なかなかない。
普通にマーケティングすると、このデザインには絶対にならない。
「蜂が嫌いな人が多いから、群の蜂をパッケージにする案はナシ」となるに決まっている。

ハチミツを抱えて向かった 食品売り場のレジがまた、
天井も高いし、余白十分でかっこいい。
銀行のカウンターや美術館のチケット売り場のようだ。
ボン・マルシェは無料の美術館って言ってもいいかもしれないな。

 

つづく