京都文化
トリハダ通信
2

JAPANを学ぶ

トリハダ通信

まずは木地づくりから
学生による 漆芸授業レポート(1)

Kyoto Art class
Report #2
“Shitsugei”
by Suzuki Hinae

学生による 漆芸授業レポート
基礎美術コース 2年
鈴木 日奈惠

(1)_「JAPANを学ぶ」

縄文時代から続く日本の伝統工芸

日本の伝統工芸には
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、
などの区分があります。

その中で、今回私たちがやるものは、漆芸

漆(うるし)とは、
ウルシの木からとれる樹液を加工した天然樹脂塗料です。
塗料として漆工などに利用されるほか、
接着剤としても使われています。
漆の歴史は古く、
9000 年前の縄文時代から使用されていたと言われており、
英語表記は “JAPAN” とまで言われている
日本に大変馴染みのあるものです。

授業を担当してくださった先生方は、
新宮州三(しんぐうしゅうぞう)先生と、
古川貴志(ふるかわたかし)先生です。

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新宮州三先生は、兵庫県に生まれ、
輪島漆芸技術研修所に入学、
1999年に宇治市に移り、
村山明さんに師事。
その後
2006 年に独立され、
2008 年には初めての個展をされるなど、
作家さんとしてご活躍されていらっしゃる先生です。

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古川貴志先生は、枚方市に生まれ、
京都美術工芸大学伝統工芸学科を
卒業されていらっしゃる先生です。

 

一回の授業で漆塗りまでやるかと思いきや、
2 回生では、まず、土台となる木地を作ります。

漆塗りは 3 回生になってから。 2年かけて、完成させます。

使用する木は広葉樹であるクリの木。

  • 椿昇先生のコメント

    我が家にも栗の木が 2 本あって
    毎年たくさんの実りを届けてくれます。
    不思議な事に肥料をあげると虫が来ますが、
    自然にまかせると虫は来ません。
    そして材木となって何百年も使える建築材になったり
    工芸品になったりします。
    自然とともに末永く暮らす智慧が
    日本人にはあったはず・・。
    照葉樹林という言葉調べておいてください。

このクリの木の、
柾目まさめ)という木目のものを使います。
柾目(まさめ)とは、
丸太の中心付近を通って切断した時にできる
まっすぐ平行な木目で、
伸縮しにくく反りなどの狂いが出にくいのが特徴のもの。

  • 椿昇先生のコメント

    木が正しいという漢字を見ると
    その字の由来がわかりますよね。
    お盆などはこの木目を使うことが多いそうです。
    他にも、“板目” という丸太の中心を通らない部分を
    切断した時にできる木目は、
    山形であったり、
    自由な曲線を描くような形になります。

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

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〈板選び〉

まず、先生が用意してくださった
クリの木の板の中から
自分の好きなものを選びます。

木は、すべての太さが揃ってまっすぐ生えているわけではなく、
下の方が太く上に向かって細くなっている木が多いです。
なので、根っこの方が木目が荒く、
間隔が大きいです。
上の方は木目の間隔が小さくなります。

「この木目かわいい」
「おもしろい」
などと言いながら、みんな真剣に選んでいました。

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

 

  • 椿昇先生のコメント

    集成材という板がホームセンターに売っています。
    ムク材は変形するので
    忙しい現代では住宅の多くに
    細かくした木をボンドでくっつけた材木を使っています。
    その上に薄く剥いだ高級な材木の皮を貼って
    銘木に見せたりもします。
    集成材が悪いと言っているのではありませんよ、
    経済的時間的な理由で
    それを求める文化になったという事も
    考えておきましょう。

「木目がかわいい」と思うのは、
少し変わった表現だな、と思います。
そう思うのは、
「生きている」
と感じるからなのでしょうか。

 

〈木を切り出す〉

木は先生が切り出してくれます。
自分の作りたい形と大きさの下絵を厚紙に描き、
その形に切ります。
それに合わせて板も切っていきます。

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

  • 椿昇先生のコメント

    先生の「無」の日本手ぬぐいがヤバイ。
    君たちへのメッセージ??

下絵は、キッチリとした形にしたい人は、
コンパスや定規を使って正確に形を描きます。
逆に、無造作感を出したい人は
フリーハンドで形を描いていました。

  • 椿昇先生のコメント

    フリーハンドには罠がある(笑)

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

縦横の長さ、全体の高さ、内側の高さと角度も
同時に決めていきます。
私は、京都の料亭などで使われるという「半月盆」と、
「我谷(わがた)盆」のようにノミ跡を残す技法を合わせた
「我谷半月盆」を作ることにしました。
石川県我谷村で作られていたという、
刳りあとをあえて残したお盆。

  • 椿昇先生のコメント

    「我谷半月盆」音に出して読んでみよう。
    美しい音 ですよ。

形も、これという決まりもなく、自由でした。
「作ってみて、うわ、ダッサ!と思ったら
次いいもの作ればいい」
何回も試行錯誤を繰り返して、
自分の納得できるお盆を作ります。

  • 椿昇先生のコメント

    量のなかに質が生まれます。

板を切るときは、最初に少し薄く切って割り、
中が割れていないかよくみます。

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

割れていないことが確認できたら、
切ります。
そして厚さを薄くしていきます。

薄すぎると木がねじれやすく、厚すぎると重くなるので、
ちょうど良い厚さにします。

その厚さは、8ミリ~10ミリ。
これにプラス
5ミリした厚さで 切り出していきます。

  • 椿昇先生のコメント

    先生が簡単におっしゃるのですが、
    その厚さに落ち着くまでに
    先人の多くの試みがあることを思い出しましょう。
    今度博物館で盆を見るときに全く違う見え方がします。

 

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修理不可能の一発勝負

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Report #4 “JAPAN~Woodland~” (1)_「JAPAN を学ぶ」

木地は、一度削ってしまったら元に戻せません。
消しゴムで消すように、やり直しがききません。
画性が大事になってきます。
なので、実際の大きさより少し大きめ、厚めに切ります。

  • 椿昇先生のコメント

    昨年と今年取り組んだ「作陶」も
    実は土を盛っているようで削る意識が重要です。
    素材は違いますがいずれも数をこなして
    手と頭に「美しい計画」が刻印されることが大切。

誰が、何のためにこのお盆を使うのか
想像しながら制作していきます。
そうすることで
お盆に役割を与えることができ
一層、気持ちを込めることができます。

  • 椿昇先生のコメント

    使い手の事を考える力は
    実際に売って使ってもらうなかでしか生まれません。
    厳しくやりがいのある仕事で、
    どんどん謙虚になってゆきます。
    卒展で盆を100枚くらい作る学生が出てこないかなあ〜〜

板を切ることができたら
次はさっそく刳る作業に入ります。

 

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「使わせていただく」という気持ち

木は生きています。
呼吸しています。
機械のように、無機質なものではありません。
木の仕事は木の命を奪うことです。
私たちは、命を奪うことをします。
なので、責任感がいります。
先生方からは、その覚悟のようなものが
ビシビシと、肌に伝わってきました。

  • 椿昇先生のコメント

    これは比喩ではなく、
    ほんとうに人間の皮膚は
    感覚器官として情報を受け取っています。
    目だけに頼っていては良い仕事はできません。

自然のものを「使わせていただく」ということが
私たちには足りないと気づきました。
常に意識してものを作ることで
自分にも、他人にも
その気持ちが伝わってくるのではないでしょうか。

 

  • 椿昇先生のコメント

    そんなに甘くはない(笑)

2018.12.01更新

つづく