
まずは木地づくりから
学生による 漆芸授業レポート(2)
(2)_「“作家” と “職人”」
道具は作り手の命
お盆を刳る作業にはいる前に、
少し道具のことを。
私たちに渡された道具は、
丸ノミ、平ノミ、プラスチックハンマー。
この3つを使って刳っていきます。
-
椿昇先生のコメント
どの写真もとてもいいね!
学友を撮影してるから愛を感じる。
ですが、先生方普段使う道具は、
私たちの何十、何百、何千倍。
ノミやカンナでも、用途によって大きさや形が
異なります。
▲古川先生の道具の一部。
ノミでもいろんな種類があります。
▲仕上げ用のカンナ。
1寸 4分 ( 約42mm) ほどの小さな道具。
先生のサインがカワイイ。
基礎美術コースの先生方に共通することなのですが、
先生方は道具を何よりも大事にされています。
道具がなければ、お茶碗を作ることも、
花をすることも、木を刳ることもできません。
-
椿昇先生のコメント
道具を作る人達も道具を使う人が減って、
廃業が相次いでいます。
とても簡単な事はプラスチックの椀でいいやと
思う人が増えればこの文化と伝統全体が消えてしまうのです。
そんな国にしたくないという思いから
このコースを創設しました。
先生たちのように心ある若者が
必死にその流れと闘っているのです。
君たちもその勇気を受け継いで欲しい。
道具の裏を傷つけないように、
必ず裏を下に、台からはみ出さないように置きます。
____________________________________________________________________________________
先生から技術を“盗む”
もちろん、ノミも自分で研ぎます。
お手本で先生がノミを研ぎ始めると
みんな、技を盗もうと先生から目を離しません。
-
椿昇先生のコメント
職人は教えない!
それが学び手のやる気に繋がります。
いまの教育はサービス過剰で、
その結果受け手のやる気が育たないのです。
日本の教育全体が大きな危機のなかにあります。
過剰なサービスの影には 「ごまかし」が潜んでいるよ・・
先生が研いだノミは、
驚くほど切れ味が良くなります。
中砥と仕上げ砥という2種類の砥石を使って、
中砥は水につけておき、
仕上げ砥は使う直前に水をかけて使います。
右手でノミを持ち、左手は人差し指と中指を添えます。
横から見て、ぴったりの角度を見つけたら、
右手を回しながら前後にスライドさせて
刃の前面を研ぎます。
ある程度研いだなと思ったら
仕上げ砥で仕上げます。
刃物を満遍なく研ぐために、
砥石は平面でなければならないので、
時々ダイヤモンド砥石を使って面直し
(砥石の面を平面にすること)をしてあげます。
-
椿昇先生のコメント
砥石も使い終わったら磨いて平らにするんですよ。
僕はサボり気味;;)
技術と身体はつながっている
今は砥石を使って研ぐということは
何かのプロの人だったりしない限りはあまりしないと思います。
なので、最初は私たちもうまくできませんでした。
みんなおどおどしながらも見よう見まねで研いでいきます。
モノづくりは、技術だけだと思っていたけれど、
技術と身体はつながっているのだと、実感しました。
-
椿昇先生のコメント
脳も「身体」ですよ、忘れないでね。
使い終わった刃物は、油で拭いてからしまいます。
そうすることで、切れ味を保ち、綺麗に保管することができるのです。
お盆は基本的に木目が並行になるところが正面になります。
先生がおっしゃるには、これは日本人の美意識なのだそう。
-
椿昇先生のコメント
このコースは日本人の美意識が洗練された
室町時代にフォーカスしています。
▲新宮先生の作品。
これは、フリーハンドで描いたものだそうです。 欲しい・・・!
-
椿昇先生のコメント
僕は先生に
「三顧の礼(地位ある人や目上の人が、
賢人に礼を尽くして物事を頼むことのたとえ。
中国の三国時代、蜀の劉備が
無位無冠の諸葛孔明 (しょかつこうめい)を軍事として迎えるために、
礼を尽くしてその草庵を
三度も訪ねたという故事に基づく。)」で
このコースにお越しいただきたいと説得しました。
そのきっかけが先生の個展で
四段刳物のお重を買い求めた事がきかっけです。
ほんとに欲しいと思う。
それが美の原点ですね。
次はいよいよ、板に刃を入れていきます。
____________________________________________________________________________________
“作家”と”職人”の違い
新宮先生は、私たちに
“作家” と “職人” の違いについて教えてくれました。
“職人” は、自分の作りたい気持ちを殺して、
依頼主のいう通りに従って作る人のこと、
“作家” は、0から自分で考えて売ってご飯を食べている人のこと。
-
椿昇先生のコメント
両方いったり来たりして創作してる事もあるよ。
勘がいい職人さんは、田舎の、自然が豊かな場所で
生まれ育った人が多いと言います。
でも、私たちの多くは生まれた時から
アスファルトがある暮らしをしてきました。
地面がアスファルトの中で育ってきた人たちは、
日々の湿度の変化に気付きにくいといいます。
-
椿昇先生のコメント
怖い話。
タワーマンションの上層階で育った子供が
集中力無くて成績が伸びないというデータがありました。
フィンランドは宿題も出さず
野山で遊ばせる方向に転換して、
意欲のある優秀な子供が増えました。
日本の政策決定どこか時代遅れ。
「勘や手先の器用さが育ちにくい環境にいる一方で
私たちにしか見えない新しい世界観が詰まっている。」
だから先生は、自由に作ったらいいと
言ってくれたのでしょう。
私たちは私たちにしかない世界を作り出すことができるのでしょうか?
-
椿昇先生のコメント
スマホに囲まれる暮らしをどうコントロールするか。
日が落ちたらスマホは触らないとか?
2018.12.01更新
つづく