
創業394年
唐長さんにお話を
伺いました。
(1)
Traditional Craftsman
interview 7
KARACYO
Senda Kenkichi
唐紙屋 唐長
千田 堅吉
空間デザインコース 2年
溝辺 千花
一度廃業しかけた唐長を、
ほぼ0から作りあげた
唐紙師「唐長」11代目 千田 賢吉さんのお話。
中国の唐から伝来し、
400年変わることなく守り続けられた日本独自の文様。
全て手摺りで、
時代のライフスタイルに合わせ形が変わります。
芸術には、理屈や数値では表すことのできない
心が必要だと教えてくださいました。
(1)_400年守り続けられた文様
「唐長」の仕事はどういったことをされていますか。
絵の具を調合し、和紙を染め、
それに板木(はんぎ:文様が彫られた木版)で文様を摺り、
唐紙を作ります。
昔は便箋等、今はインテリアが中心に使われています。
唐紙は名前に “唐” とあるように中国から伝わったのですか。
いいえ、文様は唐(中国)のものもあるけど、
多くはヨーロッパのものです。
唐長ではアレンジすることなく、それらの文様を残してきました。
江戸時代に創業してから400年、
板木は一切変わっていません。
板木の数は650枚以上。
唐長は持ち味として、
古く、変わっていないものを今に合わせようとしています。
400年。
誰が文様を変えない、新しい文様を作らないと決めたんですか。
相手(買う人)。
「それでいい」と指示される、それが唐長の文様を変えさせない。
息子っていうことがハンデになる
どのようなきっかけでこの世界に入られたんですか。
単純にここが廃業しかけたからです。
僕は芸術が得意じゃなくて、その道を避けてきました。
化学が得意で大学卒業後は
5年間サラリーマンをしてました。
26歳で転身。
なんで戻ったかというのは若さゆえに。
先代とスタイルは変わりましたか。
変わってるでしょうね。
周りに反対されましたもん。
余計なことしすぎてね。でも、
廃業しかけやから逆に何したってええ訳でしょ。
先代の仕事を見られたりしていましたか。
ほとんど見てません。
垣間見るってこともなかった。
当時は職人さんが3人いました。その人らの仕事を見様見真似して。
ただ、息子っていうことがハンデになるんよね。
「なんで来たん、邪魔や」っていう。
「なんでこうやんの?」って聞いたら
「こうするもんや」って言われて、
もう「なんで?」と聞くのをやめました。
先代の技や、
それまでの儲けを受け継いで始めたのではなく、
一度落ちたものをご夫婦で築き上げてきたのですね。
そう。
それで僕の理系独特の論理的な部分を
捨てる決心をしました。
失敗ばっかりしたら悩むねん、人間って。
嫌になってくる。
それでも辞めずに続けるとなんとなく、それがバネになるんよ。
バネにして、
経験と失敗を繰り返してたら、
段々評価も変わってきてね。
先に「Yes」から始まる。
自分と違うことを試したい。
数をこなし、バネにすることが大事なんですね。
そう。
繰り返せば繰り返すほど慣れて、
できるようになる。
考えるより、感じるってことの方が手に出るんやろね。
仕事って、早い方がうまい。
数をこなして、ある域に到達しているから早いのよ。
なんでもそうやね。
仕事が早い人程、的確。
でもいい加減にやると、ボロが出るから完璧に。
自分に厳しくというよりも、
どれだけ仕事を楽しんでやれるかなんですね。
難しい仕事にもチャレンジする。
断らない。
今の若い人は情報が常に入ってきて、選択肢がいっぱいある。
僕も、今の時代で若くいたらこういう面白いこと考えてたやろなぁ。
「面白そうやなぁ、変やなぁ」って思うやつに
乗っかる方やったからね。
先に「Yes」から始まる。
自分と違うことを試したい。
今までインタビューしてきた職人さんとは
考え方が違うように思いました。
今振り返ったら、
「それやって何になんの?」ってことばっかりやってきました。
でもそんな中に、発見は必ずあります。
体験するんやからね。
未知のものに期待をして、やっています。
つづく
2018.12.01更新