
まずは木地づくりから
学生による 漆芸授業レポート(5)
(5)_「ホンモノを理解するには?」
お盆の内側ができたら、
外側もお盆の形に木を切り取ります。
一枚の板だったものが、いよいよお盆らしくなります。
ここからは微調整に入ります。
大きく削りすぎないように、
細かいところにノミをあてていきます。
優しく、優しく。
慎重に。
_______________________________________________________________________________________
魂を入れる
微調整までできたら
ここでお盆完成!ではなく
最後の仕上げとして、“面取り” をします。
上縁(うわぶち)と内縁(うちぶち)、
底のラインをキレイに出すために、
斜めに角を落とす作業です。
こうすると、
作ったものがキュッと締まり
良い作品になります。
ただ、面取りは、
お盆の形が決まる大事な作業です。
だるまの目を
最後にうつ時のように
自分の魂を入れるつもりで、削っていきます。
-
椿昇先生のコメント
茶碗のときの高台削りに似ているね。
使う道具は鉋(カンナ)と紙ヤスリ。
上縁は角度小さめ、底は少し大きめで
内縁は上縁より小さめで
削っていきます。
▲カンナは、1mm でも削れる厚さが変わる、
とても繊細な道具です。
この時、木の繊維に沿って鉋を動かします。
なぜかというと、木が傷ついてしまうから。
-
椿昇先生のコメント
繊細な自然に向き合うことがとても大切。
頭で考えるだけでは環境の保護はできませんよね。
ついに、お盆の完成です!
(最後までできなかった子は、来年までに仕上げます)
私たちの新しい世界観を
お盆に詰め込み
同じものは一つとしてない、
自分のお盆の基盤が出来上がりました。
-
椿昇先生のコメント
正直に言ってみんなの作品見て
「とても良い」と思った!
これはビギナーのときだけにやってくる。
この無心を乗り越えるのに10 年かかったりする。
それが物作りの不思議なところです。
_______________________________________________________________________________________
木も人間も呼吸している
完成した木地は、来年まで大切に保管します。
木は、人間と同じように呼吸しています。
水分もたっぷり吸います。
なので、木のまま放置すると、
お盆が反ってしまったり、形も変わります。
季節の境目は、特によく動くそうです。
その為、タオルや新聞紙、ビニール袋に入れて
空気に触れないように保管します。
-
椿昇先生のコメント
湿度30%の日と95%の日が交互にやって来る日本。
正倉院ってほんとにすごい。
湿気を含んで
木が伸び縮みする性質を利用した湿度管理。
先人の知恵恐るべし。
そう、この漆の授業は2年間にわたって行う、長期戦の授業。
漆を塗るのは、来年までのお楽しみ。
_______________________________________________________________________________________
「文化は情報ではなく、身体で納得するもの」
私たちが学んでいる京都という場所には、
職人さんがたくさんいらっしゃいます。
“職人” ときくと、
「すごい」「こわい」「近寄りがたい」などの
イメージがあります。
でも、先生とお話ししていると、
職人さんは別にこわくも、近寄りがたくもありませんでした。
(先生は職人さんではなく、作家さんですが)
-
椿昇先生のコメント
作家と職人の境界をあまり考えず、
素晴らしい作品を生むために
全力を尽くす人になって欲しいな。
「世間一般が抱いているイメージって、案外胡散臭いものだ」
と先生は言いました。
だから、私たちはしっかりと
見極めなければいけません。
-
椿昇先生のコメント
そうなんだよね、
基礎美術も「日本文化の基礎とは何か」を
稽古で会得するために創設したけど
「デッサン習うんだ」と
勘違いされて困ってます(笑)
京都にいると、
「本当の日本」とか、
「本物」という言葉に振り回されて
本質を見失ってしまいそうになることがあります。
その見極める力をつけるために、
基礎美術コースの授業はあると、椿先生はおっしゃいます。
だから、
基礎美術の先生はホンモノの方々しかいません。
ホンモノを理解するには
ホンモノに触れることが
何よりの近道です。
-
椿昇先生のコメント
本物に「近道なし」だよ〜。
すぐに出来たり簡単だったりする事なんて何もない。
根気強くねばり強く
しぶとく続ける。
続ける事に理由を求めない。
理由を求める近代人
(そんなのいないとブリュノ・ラトゥールは言っているが)に
なってはいけないよ〜〜。
日本の伝統を生業にしていらっしゃる先生方から
ホンモノを学ぶことのできる私たち。
これからも、そのホンモノを
先生方から学んで吸収していけるよう、
日々、精進の気持ちを忘れないようにしなくてはなりません。
-
椿昇先生のコメント
「案ずるより産むが易し」と
昔の人は言ったというけど、
きっと昔からそんな事言ってくれる
大人なんてそんなにいなくて
「石橋をたたいて渡りなさい」とか言われてたんだよね。
でも最近ネットの情報とか調べすぎて
簡単に理解した気になってしまう。
まあ難しいけど未来はわからないから面白くて、
根拠を求めることを
社会が若者に強いてはいけないと思う。
日本が縮んでる最大の理由がその
「生真面目さの強制」(コンプライアンス病)だね。
35 歳くらいまでは
盲滅法好きな方向に突き進んで問題なし!
なんか予感がしたら
根拠なく突っ走って欲しいんだけど、
その気になれなくしている空気が
社会に蔓延してる・・。
でも負けるな基礎美生。
2018.12.15更新
おわり