伝統工芸ってなに?

オキサトさんにきこうトップ2枚目

伝統工芸について
オキサトさんに
聞きました

Okisato
interview 4

回答
永田 宙郷

質問
情報デザインコース1年 東浦美結
空間デザインコース 2年 竹之内 春花


Answer
Okisato Nagata

Questioner
Miyu Higashiura
Haruka Takenouchi

「伝統工芸って何ですか?」
「職人さんはなぜ減っているのですか?」

京都の職人や伝統工芸のことを学び始めた学生が考える、
ハテナはとても根源的なこと。

そこで、作り手と使い手と伝え手を繋ぐ様々な仕事をされている
プランニングディレクターの永田 宙郷(ナガタ オキサト)さんに
思い切っていろんな質問をしてみることにしました。

 

学生 Q :

そもそも伝統工芸とは何か(タンクトップ子)
伝統工芸って何ですか?(はるか)

  

オキサトさん A :

今回は、伝統工芸の解説として、
伝統工芸の持つ多様性というか、
いろんな伝統工芸があることを書きたいと思います。

前回、『天地材工』の長所を活かしたものづくり=『工芸』と
定義していく際に引用してきた中国の工芸観に、
さらに日本の文化や歴史、
さらには実際の現状と擦り合わせてまとめてみました。

  • 使い手や伝え手も含めながら、ものづくりのサイクルが回っていること。
  • 地域や土地の特性を活かして、素材と工法を吟味して、
    実用に叶うものづくりを行うこと。
  • ちゃんと頭を使って考えて、技を磨きながら長く作り続けられ、
    使い続けられていくこと。

きっと、こんなことなんじゃないかと思います。

ただ、気持ちは一緒でも
出来上がってくる工芸品を見ていくと、
どうももう少し広がりというのか、
幅があるように感じます。
例えば、神社にあるお飾りと、
家でつかう漆器だと同じ歴史的な技術と言えども、
生活への寄り添い方や、技法をどう守るかの意識が異なっています

なので、今回は、伝統工芸の解説として、
伝統工芸の持つ多様性というか、
いろんな伝統工芸があることを書きたいと思います。
例えば「ケーキ」とひと言でいっても、
モンブランも、苺のショートケーキも、チョコケーキもあるように、
『伝統工芸』とひと言でいっても、
いろんなものがあるんです。

大きく規模や目的に応じて、僕なりに整理してみたところ、

①祭具など伝承を目的としている『伝承工芸
②技を引き継ぎながらも鑑賞を主目的につくる『美術工芸
生活用品を伝統的な作法や素材を背景につくる『生活工芸・手工業
地域を支える地場産業のサイズまで大きくなった『産業工芸

の4つに分けることが出来そうです。

①『伝承工芸』は、僕の周りにも
神社のご神体になる鏡を作っている職人がいますが、
見た目や機能の新しさはさほど求められず、
やはり変わらないことに価値があり
変わらないための工夫や努力を日々しています。
いま一番、絶滅危惧種のジャンルだと思います。
ただ、文化や祭礼の継承には必要不可欠な仕事です。

②『美術工芸』は、
床の間、百貨店の伝統工芸コーナーや美術コーナーで
販売されてそうなものと言えば分かり易いかも。
使えなくはないけど、
使うよりも飾って鑑賞するほうが良さそうだなって思うやつです。
着物や壺など、装飾的で高価なものというイメージが
一番つよいジャンルです。
昔は人気商品でしたが、
ここ近年、買ったり使う人が激減している商品です。

美術工芸

 

③『生活工芸』は、
クラフト作家さんがつくる
生活の実用品を指す場合も最近は増えてきてるので、
「手工業」という言葉を補助で入れてみました。
歴史的に継承されてきた地域の素材や技法を背景に、
生活の実用品をつくるものづくりです。
「○○さんの器」のように、
セレクトショップやインテリアショップで紹介されている器などは
ほぼこのジャンルです。
実用性と作家性や地域でのものづくりなりの
ストーリーが魅力として語られます。

生活工芸

 

④『産業工芸』は、
陶磁器・織物・刃物などで多く見られるのですが、
機械化や効率化も進み、
近代産業として、しっかりとやれてきたものです。
名古屋の瀬戸など大きな産地に行くと面白いですよ。
お茶碗でも、『美術工芸』のポジションの物は数万円しますし、
『産業工芸』の物だと数百円です。
同じ機能で同じエリアで作られていても、
こだわりや作るものの背景をどう考えているかで
随分と価格にも差が出てきます。
無印なども最近、地域名を出して商品を売っていますが、
それを支えているのはこのような産業工芸の産地と企業です。

産業工芸

 

ただ、①~④が産地や工房ごとに
綺麗に分類できるかというと、そうでもありません。
最近は、ひとつの工房やメーカーの中で、
②と③のものづくりを共存していこうとしたり、
①や④のものづくりが立ちゆかなくなり、
②や③のものづくりを目指す場合もあります。

関係する法律も違います。
①と②(の一部)は、
無くなってしまう技術を守ろうということで、
文化庁による『文化財保護法』という法律でサポートされますが、
③(の一部)や④は
地域の産業として盛り上げようということで
経済産業省による『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』で
サポートされています。
なので、伝統工芸のものづくりに関わる場合は、
関わる先の作り手が
この①~④のどの伝統工芸に位置しているか、
そして①~④のどのポジションに進みたいかは
しっかり観察したり、相談すべきだと思います。
じゃないと、守ってきたものや進みたいものと
ズレたものづくりになり続けるには
しんどくなってしまう事も多いです。

 

『伝統工芸』という
たった漢字4文字の単語を
もう少し深く読み深めたり、
分解整理してみると良いと思います。

伝統工芸を守るために、
短期的に「売れる/売れた」「話題になった」という
結果だけではダメだというのが、
伝統工芸とものづくりをする際に
気をつけなければならないことですし、
つくり続けたい・使いつづけいたいと
思ってもらえる物をつくるためにも、
『伝統工芸』というたった漢字4文字の単語を
もう少し深く読み深めたり、分解整理してみると良いと思います。

今度、伝統工芸のアイテムをみたり、
工房に行くことがあれば、
①~④のどの部分を大切に
ものづくりをしているのか考えてみてください。
きっと、関わり方や出来そうな事が
違った視点で見えてくると思いますよ。

2019.01.01更新

_____________________________________________________________________________________

永田宙郷(ながたおきさと)
合同会社ててて協働組合共同代表・プランニングディレクター。

1978年福岡県生まれ。
『ものづくりをつくる』をコンセプトに数多くの事業戦略策定と商品開発に従事 伝統工芸から最先技術まで幅広い事案に対し、時代に合わせた再構築や、視点を変えたプランニング を多く手掛ける。 作り手と使い手と伝え手を繋ぐ場としてデザイナー、ディストリビューター、デザインプロデューサーと 共にててて協働組合を発足し、2012年より、『ててて見本市』を開催。

_______________________________________________________________________________________

似顔絵       AIUEO  kaorin
イラスト    竹之内 春花