伝統工芸のつくり方-前編-

オキサト

伝統工芸について
オキサトさんに
聞きました

Okisato
interview 5
-first part-

回答
永田 宙郷

質問
ファッションデザインコース 2年 岸直輝


Answer
Okisato Nagata

Questioner
Naoki Kishi

「伝統工芸って何ですか?」
「職人さんはなぜ減っているのですか?」

京都の職人や伝統工芸のことを学び始めた学生が考える、
ハテナはとても根源的なこと。

そこで、作り手と使い手と伝え手を繋ぐ様々な仕事をされている
プランニングディレクターの永田 宙郷(ナガタ オキサト)さんに
思い切っていろんな質問をしてみることにしました。

 

学生 Q :

どうすれば伝統工芸になりますか?(岸くん)

オキサトさん A :

今回は、どうやったら
伝統工芸になるかを考えるために、
かなり強引ですが
『伝統工芸のつくり方』です。

こういう質問をもらうと、どう答えようか悩みますねw
でも頑張ります。

今回は、どうやったら伝統工芸になるかを考えるために、
かなり強引ですが『伝統工芸のつくり方』です。
岸くんがどうやったら伝統工芸のひとつの創始者になれるかを
考えていきましょう。

まずは、コラム3で
天地材工の4つの長所を活かしたものづくり+時間の蓄積(伝統)=伝統工芸』の
話を書いたと思いますので、それからはじめますね。

伝統工芸を方程式っぽく書くと

(天+地+材+工)×時間の蓄積=伝統工芸


になりますね。
理想ではありますが、この方程式の通りに
それぞれの要素を丁寧に組み合わせて行けば
伝統工芸ができるはずです!
あと、コラム4で書きましたが
いろんな伝統工芸があるので、
今回は、③の「生活工芸・手工業」と呼ばれる
伝統工芸のカテゴリーで設定して進めていきます。

 

「天」
その土地なりの魅力が凝縮できるように、
今回は、特徴ある場所で
始めることにしましょう。

最初は、「天」です。
まずは天を味方に付けましょう。
天候や気候によって、その土地ごとの特徴は異なります。
その土地なりの魅力が凝縮できるように、
今回は、特徴ある場所で始めることにしましょう。
例えば、作るときに湿気が必要になる漆器は
湿度の高い日本海側で発達しました。
また東北では冬の雪深い期間を利用してのわら細工か、
寒さに耐えるからこその目の締まった
木の皮を使った工芸などが盛んになりました。
このように工芸と気候は非常にシンクロしてます。

ということで、気候にとても特徴があって、
岸くんの学ぶ京都からもアクセスしやすめな土地を探しました。
見つかったのは、夏が暑くて有名な岐阜県多治見市です。
2018年の最高気温はなんと40.7度!
これだけ特徴的な場所であれば、
特徴をもったものづくりが生まれそうなので、多治見にしましょう。
そして、岸くんが、多治見に拠点をつくるところから、伝統工芸の産まれ方を考えましょう。

オキサトサンに聞こう

「地」
その地域や周辺に、
どんな技術や歴史や文化があるかを
ちゃんと調べます。

次に「地」です。
今回は多治見を選びましたが、その地域や周辺に、どんな技術や歴史や
文化があるかをちゃんと調べます。
周辺には陶磁器や刃物の大きな産地があり、作り手も多く、作る拠点を
比較的安価で確保でき、名古屋という市場にも近いです。

昔から交通や流通の要所にものづくりの産地が付随している法則にも一致します。
多治見はなかなかものづくりには良いところですね。
多治見の気候と土地の特徴を活かして何をつくるか考えないとですね。

何をつくるかは、今回は一気に決めました。
作り続けてナンボなので、多少は需要がありそうで、
多治見の暑さや周辺の器と刃物を活かして作れるもの考えました。
そして思いついたのは、『かき氷削り機』!!!
日本有数の暑さを誇る地域でのものづくりだからこそ、
作るに至った地域の背景も想像できるし、
需要も細くも長くありそうですし、和の気配もします。
良さげですね。

実際にいまより物流や素材の確保が難しかった時代、
その土地と周辺にあるものを組み合わせたものづくりがほとんどです。

岸くん、多治見のかき氷機を伝統工芸にすることに挑みましょう。

オキサトサンに聞こう

戦国時代などは、
戦いがあると第2次産業というかものづくりの人々は
戦いに勝利した人に連れて行かれ、
相手の場所で新しい産業を
起こす役割を担うこともありました。

伝統工芸の多くは、元々は地域の手工業です。
その土地の条件に合わせてはじまります。
陶芸など土の質や燃料となる木が
豊富にあるかどうかも関わりますから尚更です。
似たような気候や風土の土地で栄えているものづくりを見つけると、
そこの職人を呼び寄せて技術指導をしてもらったりもします。
石川県の工芸の多くは財力も自然も豊富だった前田家が、
京都はじめ各地からトップランクの職人を招いて
スタートしたものが殆どですが、その資金だけでなく、お金では買えない
友禅に適した水温や水質、漆工に適した湿度や木材、磁器制作
が可能な土の発見など、自然環境自体が工芸のものづくりであったからこそ、
工芸王国と呼ばれるまでになりました。

 

因みに、工芸が一気に広まった室町後期から江戸前期を見ていると、争いの結果、
技術が広まっているのではないかと思うことがしばしばあります。
当時の戦いは、農地と技術の奪い合いだったので、職人は戦いに勝利した側に連れて行かれ
相手の場所に技術を伝え、新しい産業を起こす役割を担う訳です。

昔は、陶磁器や金属器の製造というと先端産業ですし、
華麗な装飾技術は高級輸出品として
金銭以上の役割を持つこともありますから、
腕の良い職人を領地に抱えていることは
財力や競争力にそのまま関わることだったんです。
今のシンガポールが流通と金融の要所で、
その力で世界中から優秀な人材を集めて
さらに国を強くしようとしている事と同じですね。

さて、岸くんは多治見でどんなふうにかき氷機を作り、
伝統工芸にしていくのでしょう。
続きは次回。
お楽しみに。

2019.02.01更新

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永田宙郷(ながたおきさと)
合同会社ててて協働組合共同代表・プランニングディレクター。

1978年福岡県生まれ。
『ものづくりをつくる』をコンセプトに数多くの事業戦略策定と商品開発に従事 伝統工芸から最先技術まで幅広い事案に対し、時代に合わせた再構築や、視点を変えたプランニング を多く手掛ける。 作り手と使い手と伝え手を繋ぐ場としてデザイナー、ディストリビューター、デザインプロデューサーと 共にててて協働組合を発足し、2012年より、『ててて見本市』を開催。

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似顔絵       AIUEO  kaorin
イラスト    竹之内 春花