イベント
レポート

おベンチさん カンニン

「おベンチさん」
出現の裏側を聞きました。

Event
report
「OBENCHISAN」
Interviewer by Takeuchi Haruka

イベントレポート
「おベンチさん」
空間デザインコース2年
竹之内 春花

20181026日に開催された、
京都 岡崎エリアで複数のコンテンツが同時進行していく、
ある野外イベントにて出現した5つの「おベンチさん」。
ベンチの上部にネオンで掲げられたのは
「オオキニ」「カンニン」「イケズ」「カナン」「ハンナリ」の
5つの
京ことば

その「おベンチさん」のデザイナーの2人
dot architects 代表 家成俊勝さんと
KYOTO T5センター長 酒井洋輔さんにお話を聞きました。

 

「おベンチさん」の出現したあのイベントは、
どういったイベントだったのですか。


家成
 「岡崎明治酒場」。東京オリンピックの関連です。

酒井 東京オリンピックの時に国内外から人がたくさん来るので、
その時に京都でも色々と仕掛けたくて、
そのテストとして1回やってみようというイベントだったみたいです。
僕たちはそこに「おベンチさん」として参加しただけです。
主催ではないので、詳しいことはWebでっていう感じですね。

なんで「おベンチさん」を作ることになったんですか。

家成 酒井先生から、ベンチ で何かやろうという話があったんで。
あれ?なんでベンチやったんですっけ。

酒井 主催者からの依頼で、ベンチを5個っていうのは決まってて。
で、
ベンチ といえば家成さんかなっていう。(笑)
それで家成さんにご協力を依頼しました。

私も「おベンチさん」見に行きました。
ベンチの上に「ハンナリ」や「カンニン」など
ことば がネオンで掲げられていましたが、なぜですか。

酒井 とりあえず「岡崎明治酒場」が京都であるので
京都らしいことがいいじゃないですか。
それで、初め僕は 
ドカン を。

家成 そうそう。ドラえもんの空き地に置いてある。

酒井 あれを家成さんに提案したんですよ。

家成 そう。めっちゃ面白いアイデアなんですけど、
ちょっとコスト的に
ドカン を段取りすることができず。(笑)
あと設営期間と撤収もその日で時間が短いから。

酒井 1日だけですから。

家成 うん。撤収とかはね、もう夜終わってすぐやからちょっと厳しくて。
その案はまた眠らせて。

ドカンですか?

酒井 全国の地下にあるでしょ。ドカンって。実際あるんですかね?

家成 あるとこあると思いますよ。

酒井 ドカン屋さんもあるんですか。

家成 あると思いますよ。うん。
でも段々少なくなってると思いますけどね、今。

酒井 今日本全国、水道の取り替え工事してますよね。
あれってドカンじゃないんですか。陶器製ですよね。

家成 ああそうね。焼いてる、釉薬をつけて。そうそう。

 

コストと設営時間の関係で、ベンチに。

家成 そう。ドラえもんの空き地ってドカン置いてあるだけ
でジャイアンのリサイタル会場になったり、
中に寝れたり、座って野球みれたり、
いろんな活動を誘発できる、ただの筒なんで。
すごい面白いアイデアだなと思ったんです。

酒井 「ベンチ作る」ことになって、
初めに思うのは階段がベンチだし、人って色んなところに座る。
だから「ベンチを作る」っていうのが
ちょっとなんていうか言い方悪いけど馬鹿馬鹿しいなと思った。
その日のためだけにベンチ作るのは。
だからそのままで座れるものがいいなと思って出てきたのが
ドカンやったっていう。
で、京都らしくするために、ド
カンの中の空間に京都の伝統工芸を飾ろうとしてました。
で、そこに子どもは入れるみたいな。
とはいえ、実際はむずかしく。

そのタイミングでうちの大学の吉田事務局長が、
主催者に僕らのプロフィールを勝手に送ってくれて。
その時に家成さんのプロフィールに使われてた写真が、
ネオンの文字のもので、あれいいじゃないですかって。

家成 やりますかって。

酒井 あれのベンチ版やりましょうって。

おベンチさん オオキニ

 

それでネオンの文字とベンチになったんですね。

家成 そう。光ってる何かが公共空間であるっていう。
それだけで空気感が変わるかなと思って。
それで酒井先生と 京都のことば をピックアップして。
「イケズ」とか。

 

あの ことば はどのようにして選ばれたんですか。

家成 あれ「イケズ」と、「ハンナリ」と、

酒井 「カンニン」

おベンチさん イケズ

おベンチさん ハンナリ

 

その 京都ことば を調べられてて、
「お〇〇」や「〇〇さん」がついているのが
多かったとおっしゃってましたね。

家成 「お」がついてるんですか。

酒井 そうですよ。なんでも「お野菜」「お大根」とか。

家成 確かに。

酒井 なんでも「お」がついてますよ。
「お日さん」とか、「さん」もついてる。
それ京都の特徴です。

 

確かにそうですね。
そのベンチを作るということが決まって、
ベンチとは改めてどういうものだと考えられましたか。

酒井 その辺を僕は考えるのを放棄して、
家成さんに頼んだんですよ。ベンチの専門家に。

家成 (笑)

酒井 ベンチは1番小さい建築という風にとらえてもいいですか。

家成 まあ、確かにそうですね。
家具だけど公共空間にあって、すごい大切なアイテムですよね。
日本ってあんまり、広場の文化無いですよね。
ヨーロッパって教会の前に広場があって、
人が溜まって話したり、ご飯食べたり、文化がある。

日本人って広場が無くて、道の文化なんですよね。
広場使える体があんまり無いから、
岡崎公園(岡崎明治酒場の会場)とかにベンチがただ置いてあっても、
夜だし暗いしね。
誰も気づかずに通り過ぎて終わっていく。
そこで京都のキーワードがポンと光っているだけで、
ちょっと寄って行こうかな、写真撮っていこうかなとか。
じゃあちょっと座ろうかな、とかそういう感じで。
ただかっこいいベンチ置いてても、誰も気づかないと思う。
ちっちゃいし。

酒井 そもそも日本ってベンチ少ない国だと思う。
ゴミ箱も。
外国の観光客は来たら結構困ってるみたいです。
座るとこがないし。

 

確かに。東京オリンピックの時に困りますね。
それぞれの「おベンチさん」は設置場所と
掲げられた
京都ことば は何か関係しているんですか。

家成 多少ね。関係付けて考えたんですよ。
岡崎エリアに同時に複数のイベントが起きていて、
その時に中であるコンテンツと、近くなるように配置したんですよ。
ただ、その中のコンテンツとどう合わしたかを忘れてしまった。

酒井(笑)

家成 平安神宮の前なんやったっけ。
「ハンナリ」?「ハンナリ」は、
平安神宮ではやっぱり「ハンナリ」ってなるし、
「カンニン」は、動物園前か。
動物に対しては、夜静かに寝たいのに
(イベントで)わちゃわちゃして「カンニン」。

酒井 (笑)そんなん家成さん考えてたん。

家成 そう考えてたんですよ。あと、こじつけたやつもありますけど。

酒井 「カナン」は。

家成 「カナン」は地下に降りていくコンテンツやったから、
地下に降りんのが「カナン」。

おベンチさん カナン

 

そんな工夫が隠れていたんですね。
私たちKYOTO T5は、京都の伝統工芸や伝統文化について知り、
イノベーションを行っていくことを目指しています。
家成さんにとって伝統とはなんですか。

家成 やっぱり長い年月をかけてずっと残っているものやから、
残ってる理由があるし。
そういうのを知りたいっていう欲望がそこにある。
今のものづくりとかと全然違う作り方で作られてますよね。
工場で大量に作られるのではない、コツコツ、手で作っていくとか。

そういう、体でしかわからない感覚で
ものを作っていくっていうのはすごい大切やと思うんですよ。
感触とかね。
そういうのが無くなると寂しい。
かといって伝統ばっかりってわけでもないけどね。
新しいものと伝統っていうのが
ちゃんと共存した状況ができたらいいなぁと思う。

伝統とは、先生みたいなもんですね。
いろいろ教わることがある。建築もそうだし。

酒井 去年、家成さんと金沢21世紀美術館で
藁の家を作るワークショップしたんですよ。
そこに土壁を作る職人さんが来てて。
土壁って自然そのものじゃないですか。
だから「水かけたらまた使える。」って言われて。
すごいなと思って。

今、建て物壊したら全部産業廃棄物になるけど、
綺麗とかだけじゃなくて使い終わった後のことも
考えてたのかな昔の人みたいな。
やとしたら自分たちよりもだいぶ賢いなっていう。
面白いなって思うことがたくさんある。

その大工さんが言ってた1番心にしみた言葉は、
「家なんて、完成させるものじゃなかった。」
今の家は全部完成して売られるけど、
昔は例えば子どもが生まれたらちょっと増やすか、みたいな感じで。
フレキシブルに、どんどん自分たちで手を入れて増やしていく。
増やしていったり、
いらなくなったら潰したりするようなものだった。
「自分たちが生きてる限り、ずっと未完成。」って言ってて。
すごく感動したね。
そういう思考を取り入れた建築家や
デザイナーがもっと出てくるといいなぁと思う。

家成 土の色で町の景色が変わる。
その土地で摂れた土の色で、
その町の色が決まっていくっていうのがあって。
地面から始まってる感じがして面白いよね。

 

伝統工芸を作るのは「天地材工」だと聞きました。
「天地」はその土地の気候や風土。
「材」はその土地だから採れる材料。
「工」は継承していく技。
その土地だからこそ、その伝統工芸が生まれていて。
建築と伝統工芸は繋がっている気がしました。


家成
 うん。繋がってると思う。いいっすね。

酒井 いいっすね。

家成 なんかその、
さっきの酒井先生の「未完の家」っていうのも、
昔は建築家なんていなかった、日本には。
大工さんと、その家の人で話して決めてた。
だから一説によると、旦那が働いて
奥さんが図面書けたんですよ昔は。
大工さんとやりとりして、こんな感じ、こここんな感じって。
だからみんながもっと身近に、作ることに関われてた。
今図面書ける人なんていない。

酒井 愛着も変わってくるかなぁ。
そういうの知れば知るほど昔の方が優れてたなぁっていう凹みに入ってしまう。

家成 (笑)確かに。すごい、昔の人。

おベンチさん

2019.02.01更新

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Interviewer by Takeuchi Haruka

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