伝統工芸のつくり方-後編-

オキサトさんにきこうトップ2枚目

伝統工芸について
オキサトさんに
聞きました

Okisato
interview 5
-second part-

回答
永田 宙郷

質問
ファッションデザインコース 2年 岸直輝


Answer
Okisato Nagata

Questioner
Naoki Kishi

「伝統工芸って何ですか?」
「職人さんはなぜ減っているのですか?」

京都の職人や伝統工芸のことを学び始めた学生が考える、
ハテナはとても根源的なこと。

そこで、作り手と使い手と伝え手を繋ぐ様々な仕事をされている
プランニングディレクターの永田 宙郷(ナガタ オキサト)さんに
思い切っていろんな質問をしてみることにしました。

 

 

学生 Q :

どうすれば伝統工芸になりますか?(岸くん)

オキサトさん A :

かき氷機を作り始めようと決めた岸くんは、
そのかき氷機をどうやって
『伝統工芸』と呼ばれるまでに育て上げるのか。

さて、真夏に40度を越え、山に囲まれ、
陶磁器製造も盛んな岐阜県の多治見で
かき氷機を作り始めようと決めた岸くんは、
そのかき氷機をどうやって『伝統工芸』と呼ばれるまでに育て上げるのか。

『伝統工芸=(天+地+材+工)×時間の蓄積』という方程式の
「天」「地」の話しは前回、書きましたので、その後編です。
話しを忘れた人や呼んでない人はコラム5の前編を読んでくださいね。

 

次に必要な要素は「材」です。

では、作るモノが決まれば次に必要な要素は「材」です。
暑い地域だからこそ食べたい
かき氷を削るために必要な刃や器を、
地域の作り手たちと開発しましょう。
関のノウハウがあれば、
きっとこれまでにない食感の刃も出来るはず。
近隣の森で育ち、木曽五木のひとつであり、
古くから船床にも使う強くて水に強いサワラを使うと、
プラか金属製のイメージが強いかき氷機とは差別化ができるし、
保温も効くのでバッチリ。
こんな風に地域の材を活かしましょう。

さらには、農家と協力して
地域の食材を活用したシロップづくりや、
冬場の南アルプスの氷を確保できたら、美味しくなるし、
仲間やファンも増えると思います。
真夏の暑さと地域の素材が重なり、
多治見だからこそ生まれた多治見のかき氷機。
しかも、刃物は世界に誇る関と工夫した一品で、
ぴったりの器も地域の陶磁器を活かしてつくってもらう。
美味しい岐阜のシロップがたっぷりとかかってる。
うん。
地域固有のものづくりとして成立してきたし、
こだわりも追求できそうですね。

オキサトさんに聞こう

 

そして「工」です。

そして「工」です。
刃物や器に関わってくれるこだわりの作り手とともに、
岸くんも技を磨き、
工夫を重ねなければなりません。
より良いかき氷機とは?を考えてトライしつづけましょう。
岸くんのかき氷機でつくったかき氷はひと味ちがう。
多治見で食べるかき氷は他にはない美味しさがあると
言ってもらうために工夫を重ねましょう。
伝統は革新の繰り返しです。

時には、需要の落ち込む冬のために
綺麗に削れる鰹節けずり機なども開発して、
あたらしい繋がりや、異なるマーケットに出会うのも忘れずに。
果敢にトライし、研究しつづける岸くんの姿に
共感してくれる人が現れるはずですし、
多少、売れれば、
多治見で他の人もかき氷機を作り始めるかもしれません。
ぜひ、切磋琢磨できる
かき氷機職人を育てたり、誘ったりしましょう。

 

最後に「時間」です。

最後に「時間」です。
『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』では、
最低100年間は、その地域で続けられている
ものづくりである必要があると書いています。
100年ということで、
孫の代かひ孫の代まで続けてもらいましょう。
つくり続けるためにも使い続ける需要が必要だとあらためて感じます。
作り続けること=使い手(ユーザー)や伝え手(ファンやショップ)も含めながら、
ものづくりのサイクルが回っていること。
大切ですね。
*詳しくはコラム3を読んでください。

あと、記録をとることを忘れずに。
100年続いている証拠を残しておかねば、
認定の際にダメ出しされる可能性があります。
事実、北海道のユーカラ織りは、
口語での技術伝承だったので文書や写真での記録が無く、
そのために伝統的工芸に認定されるのが
遅くなったと言われています。
加えて、ファイル形式が開けなくなる可
能性はあるので
データ保存だけでなく、
物理的に書類などを残すこともオススメします。

そして、ついに100年後。
試行錯誤を重ねながら岸くんが作り始めた
かき氷機づくりが残っていれば、
多治見らしい道具として、
多治見の暑さに基づく食生活を支えて発達・発展してきた、
地域の文化的なものづくりとして、
地域の人が必ず伝統的工芸に推してくれることでしょう。
かき氷機の制作をはじめた岸くんの偉業を讃え、
銅像を立ててくれたり、漫画化してくれることにもなるでしょう。
そして、世界で岸くんのかき氷機は愛され続けていくのです。

オキサトさんにきこう

 

まあ、ざっとですし、へんな喩えでしたが、
こんな風に地域の風土や素材、
周辺の技術などを取り込みながら、
生活の道具や調度品として伝統工芸はつくられてきました。
僕はじめ伝統工芸のプロデュースをする人も、
教えられた訳ではないけれど、
無意識に「天地材工」をどう活かすか、
そしてどうつくり続けることが出来るかを考えてやっています。

ちょっとだけ真面目なことを言っておくと、
効率や経済性だけでなく、
地域固有の歴史や文化や自然の特徴を活かす事は忘れてはいけません。
単に技術を活かして
面白いものをつくってもそれは
「伝統工芸が生んだ一時的な話題」となっても
「伝統工芸に育つ」ことはありません。
伝統をつくるくらいの意識で挑みましょう。

ということで、岸くん、
検証のために多治見で
100年後の伝統工芸づくりに挑んでみてはいかがでしょう?

2019.03.01更新

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永田宙郷(ながたおきさと)
合同会社ててて協働組合共同代表・プランニングディレクター。

1978年福岡県生まれ。
『ものづくりをつくる』をコンセプトに数多くの事業戦略策定と商品開発に従事 伝統工芸から最先技術まで幅広い事案に対し、時代に合わせた再構築や、視点を変えたプランニング を多く手掛ける。 作り手と使い手と伝え手を繋ぐ場としてデザイナー、ディストリビューター、デザインプロデューサーと 共にててて協働組合を発足し、2012年より、『ててて見本市』を開催。

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似顔絵       AIUEO  kaorin
イラスト    竹之内 春花