京都学
レポート
4

京友禅型染
丸染工株式会社 横田武裕さん

丸染工株式会社
横田武裕さん による京都学

Kyotostudy Report #4
Marusenko
Yokota Takehiro

by Takenouchi Haruka
  Mizobe Chihana
  Suzuki Hinae
  Kishi Naoki

丸染工株式会社
横田武裕

空間デザインコース2年 竹之内春花
空間デザインコース2年 溝部千花
基礎美術コース2年 鈴木日奈惠
ファッションデザインコース 2年 岸直輝

京都学レポート4

ゲスト 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

担当は文筆家・工芸ジャーナリストの米原有二先生と、
空間演出デザイン学科准教授・デザイナーの酒井洋輔先生です。

この授業では、毎回異なる職人さんがゲストとしてお越しくださり、
京都が育んだ手仕事とその粋、
京都のことや日本のことなどを教えていただきます。

京都の工芸には、日本の工芸と違って
ものづくりが他の文化と連動し、
繋がっているという特異点があります。

京都に住む70人に1人が伝統産業に携わりながら
生活しているこの京都という地で、
私たちはそんな京都の伝統について学んでいます。

そして、学生がそれぞれ授業を受けて考えた新しいアイデア(イノベーション)を
レポートとして提出してもらっています。

 

今日の職人さんは、京友禅型染 丸染工株式会社の横田武裕さんです。
京友禅のはじまりから、
あまり知られていない職人さんの仕事や、
横田さんの思うこれからの京友禅についてお話ししてくださいました。

 

“妻の家業を継ぐ”

横田さんは元々I T・PCサーバーの営業をする
サラリーマンだったそうです。
ですが結婚を機に、
奥様の家業であった型友禅の職人に転職をされました。

奥様のご実家である丸染工株式会社は
明治26年、下京区で創業されました。
京友禅の職人だった奥様のひいお爺様が独立されて作られた会社です。
横田さんは2015年に京もの認定工芸師を取得し、
今年で型友禅の職人を初めて10年目となります。

京都学レポート4

京友禅には94種類もの技法があり、
丸染工株式会社では
型友禅と呼ばれる技法を専門とされています。

京友禅自体は1688年から1704年の
江戸時代元禄の頃に誕生したそうで、
初めは着物に手で絵柄を描いて染める「手描き友禅」が行われていました。
世の中が安定してきて、
文化というものが盛んに動いた時代である元禄に
その手描き友禅は生まれたのだそうです。

京都の知恩院の前で
宮崎友禅斎が扇子を作る職人でもあったことから、
当時有名だった絵描き達を集めて大きな扇の絵を描きました。
その見事な絵が「友禅扇」と言われだしたことから
扇は現在でも友禅の着物に描かれる代表的な図柄となり、
のちに着物の模様や染色技法を指す言葉にもなったそうです。

1色刷りや簡単なデザインのものしかなかった着物に
新しい風を吹かせたという宮崎友禅斎。
その歴史を教えてくださいました。

型友禅は1880年、明治に入って10年目に誕生したものだそうです。
海外から化学染料が入り、
「写し糊」という水にもち米と糠と塩を加えたもの、
または化学糊を適度に薄めて硬く練って
染料を作る技法が開発されたことで、
型紙を使って染めるこの技法が生まれました。

型友禅は糊で”防染”(せき止め)をすることで地の色を染め、
図柄を表現していく技法です。

京都学レポート4

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また手描き友禅では1枚の着物に1ヶ月以上かかりますが、
型友禅は10枚を1度に染めていくことができます。

このような型友禅が生まれる前の
図柄を描く生地の装飾というのは、
刺繍や箔加工、
絞り染(布の一部を絞るなどして圧力をかけ模様を作る技法)、
板締め(布を板で挟むことで防染して模様を作る技法)などのみで、
これらは絹地の風合いを損ねてしまうものでした。

ですがこの型友禅は絵を描くように、
思いのままの絵柄を染められます。
また、配色を変えることで同じ型でも
印象を変えられるのが型友禅の醍醐味なのだそうです。

 

“職人の経験と勘で作られる色”

型友禅は、着彩したい部分が
くりぬかれている型紙を着物に合わせ、上から着彩していきます。
何枚も何枚もその型を合わせ、
異なる色を乗せていくことで、
図柄を浮かび上がらせることができます。

まず原寸大の図案に、
色鉛筆で着色して型を彫ってくれる
「型彫り師さん」に必要な型の枚数を伝えます。
つまり色の数の型紙が必要です。
それが場面場面(着物の部分)に必要なため、
とてもたくさんの型が必要となります。

色鉛筆で着色する作業は、
横田さん自身が色鉛筆で塗って行っているそうです。

京都学レポート4

1枚の着物でだいたい合計150枚、
多くて250枚ほどの型を、
その専門の職人さんである型彫り師さんがすべて手で彫られていると言います。

授業で前方に飾ってくださっていた
赤い着物は25色使われていて、
型はなんと300枚も使っているとおっしゃっていました。

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

着物1つの柄で、20から30色を使います。
赤という1つの色でもたくさんの色があり、
それらの色を把握するために、
京友禅で使われる色には番号がつけられています。

着物1つの柄で、20から30色を使います。赤という1つの色でもたくさんの色があり、それらの色を把握するために、京友禅で使われる色には番号がつけられています。

次に、この型友禅では色糊という
化学染料に糊を混ぜたものを使っています。
またその糊はもち米で作られているそうで、
色を作る調合も職人さんたちが行っておられます。

「色を作ったりするときは、計ったりしません。
見本帳をみて、その色に合わせるように職人の経験と勘で作ります。
その日の気温と湿度で糊の乾き具合も変わるので、
同じ染料でも毎回何gとその染料を
信じてやってしまうと思った色になりません。
職人さんが毎日調合をしています。
また、生地に色を乗せてから蒸して乾燥すると、
染めたての色とは全く異なる色になります。」

染めているときの染料はすべての色が黒色に近く、
ほとんど違いもわからないほどでした。
それらが染め上がると、とても鮮やかな色に変わります。

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

(蒸して乾く前)

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

(蒸して乾いた後)

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

染め上がりを想像しながら、色を調合していきます。
僕も最初の1年はここにいましたが、
それでも使えるレベルにはなれませんでした。」

そして染料ができたら長いもみの木台の上に生地を乗せ、
染めていきます。
その台は1枚1枚に少し曲がっているなどと特徴があるため、
職人さんたちはそれを考慮しながら作業をされているそうです。

天井にも長い板が渡されており、
染めた後の生地をかけて乾かしています。
そのかける位置が少しでもずれたら
板同士がぶつかってしまって傷がついてしまうので、
大体の場所を覚えて作業されています。

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

模様のあるところを伏せ糊で隠して防染し、
その上から「地入れ」という地の色(絵柄の背景となる色)を乗せます。

色むらができないように筆で塗っていくそうですが、
これはとても高い技術が必要だそうです。
そうして図柄も染めた後は
余分な染料と防染に使った糊を落として、
98度で20分から50分高温で蒸して色を定着させます。

そして最終工程として、
ポイントになるところに
京都の伝統工芸の1つである「京刺繍」を施したり、
糊を置いて金箔やプラチナ箔をおく「金彩」という仕上げを行います。

これらにも専門の職人さんがおられますが、
現在では刺繍でなくフィルムを貼っているものも多く、
ここでも職人さんが減ってきているという
問題があると教えてくださいました。

このように、
手で染められた京友禅の着物は
1枚100万円以上するとても高価なものです。
しかし、現在ではインクジェット印刷が
台頭してきているといいます。

手染めか、機械染かというのは裏面を見ないと、
職人さんでなければ、
なかなかわからないそうです。
裏面を見たとき、地の色が染みていれば手刷り、
染みていなければインクジェットという見分け方があるそうです。

ですが店頭に並べられて私たちが着物を選ぶときは、
すでに振袖になっているものなので裏面を見ることがなく、
私たちはそのような違いに気づかず
選んでしまうということが起こっています。
この2種類はほとんど同価格で、
むしろ安価なインクジェットの方が
結果的に高く売られているという現状もあるそうです。

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

“日本の女性を一番美しく魅せてくれる着物”

友禅染の企業は、
2314社だった昭和54年から
平成25年の34年間で565社にまで減少したそうです。
これはパーセントにすると、75.6%という驚きの数字です。
生産数も、1652万反(着物の単位)の昭和46年から
平成25年の42年間で43万反。
97.4%も減少しています。

「他のどの企業、業種でもこんな数字は出ません。
そして今年(2018年)はさらに激減していて、
京友禅従事者数は約10工房で平均65歳以上という現状です。
家業だった職人の仕事ですが、
現在ではリクルートで募集をしたりしています。」

そんな現代ですが、
昔よりは着物が着やすい時代になったと
横田さんはおっしゃっていました。
10年前は、京都を歩いたら「着方がなってない!」
知らない人に止められて怒られるということもあったそうです。
ですが今はそのようなことはほとんどありません。
それに古典を引っ張ってきた振袖ですが、
現在は若いクリエーターが増えて
着物をファッションとして捉えて楽見、
着方の幅を広げている動きもあります。

「着物って日本人しか着ない。
日本の女性を特に一番美しく魅せてくれるものだと思います。
ですが、今日本人はほとんど着ていない。
売れているから、とあぐらをかいていた京友禅は
新しい体制にならなければいけません。」

京都学レポート4 京友禅型染 丸染工株式会社 横田武裕さん

 

  • 岸くんの感想

私の職人のイメージは技術を極める人です。
〇〇職人だったら、
その〇〇に入る事のみをやる感じです。
ですが、横田さんは1度、
IT・PCサーバーの営業をするサラリーマンをしてから
型友禅の職人になれた経歴が意外でした。

型友禅は何枚も何枚も型を合わせ、
異なる色を着色し柄を浮かび上がらせる工程で、
1着作るのに何百枚もの型を使われている事が驚きです。
また、何百枚の型をあれほど美しく彫ることができる技、
1つの色でもたくさんの色があるのに、
使いたい色に近づけるために毎日染め上がりを想像して
調合して色を完成させる技は職人だと思いました。

ですが、このような素晴らしい職人技が
施されているのに機械で染められている着物と
一般の人では見分けがつかない事、
安価な分手染めよりも
結果的に高く売られてる事がとても悲しい事だと思いました。

 

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

 

学生アイデア

・京友禅ストリート
綺麗な京友禅を街中のアーケードで飾る。
歩いてみて回った後は、なんと!出入り口で気に入った友禅を借りることができる。
「お気軽に着物を着て街へ出よう!」という企画。
街中に当然のように並んでいれば、店へ足を運ぶ、検索するといった手順を
省くことができる。気恥ずかしさも減る。
Idea:奥津陽彦

 

学生アイデア

・着物で水族館に行く
京都市水族館と京友禅のコラボ企画を行う。
水族館という、暗い室内にパッと光っている水槽が非常に幻想的で、
これまでにない新しい撮影スポットや
着物で歩く特別な雰囲気を味わうことができる。
SNSに写真を投稿すれば口コミで話題になり、
着物を着る人が増加。
水族館の来場者も増加させることができる。
Idea:石田花鈴

 

学生アイデア

・型紙を壁紙に
一つの着物ができるまでに200枚以上使う壁紙は、
染め終わると必要なくなると聞きました。
色々な職人さんの手から生まれているのに捨てられるのは勿体無いと思ったので、
小さな柄がたくさん散りばめられている型紙を
切り貼りして一枚の絵のようにして、
壁などに貼ったら可愛いものになると思った。
Idea:森國文佳

 

2019.03.01更新