京都文化
トリハダ通信
3

京都文化トリハダ通信3

樂茶碗づくり〈黒樂編〉
学生による授業レポート

Kyoto Art class
Report3
“Raku yaki”
Text by Hinae Suzuki


京都文化 トリハダ通信3
樂茶碗づくり
基礎美術コース 2年
鈴木 日奈惠

(3)_石を採りに行きます

前回窯を作り、採った土を粘土にした私たちですが、
まだまだやることはたくさんあります。

黒樂茶碗は、名前にもあるように黒色の茶碗です。
その黒の正体は、釉薬
釉薬の原料となるのは、京都市中を流れる加茂川、その上流にある自然石です。
私たちはその釉薬も、もちろん、自分たちで採りに行きます。
先生もハイレベルだとおっしゃるほど
ハイレベルな基礎美術の授業。楽しいです。

  • 椿昇先生のコメント

    ここまでやるか!と思ったでしょ?

 

石採りは授業内ではなく、宿題として出されました。
加茂川石は条例で採ってはいけない事になっているので、
今回は加茂川石に似た石を使います。
鉄分やマンガンが多く含まれた、紫がかっていて黒い石がベスト。

探すポイントとしては
・鉄分を多く含んでいるか
・砕きやすいかどうか
・1200度前後で溶けるかどうか

鉄分を含んでいるかは色。
砕き易さは現場で他の石で叩いて割れるかどうかやってみる。
もしくは、チョークのように他の石に書けるかどうか。

  • 椿昇先生のコメント

    子どもの頃にやってないだろうなあ~~

 

場所は、川や中洲、海岸、採石場。
鉄分を含んでいる含鉄土石は、各地に色々あります。
多治見だと玉石、
丹波だと赤ドベと言われる水酸化鉄、通称ソブ。
丹波の川でも昔採れたようです。
小豆島のマントル直結型安山岩は海岸、
和歌山のサヌカイトは山、亀岡のマンガン石、
黒田村の川、別府の海岸、滋賀県途中峠の黒石、
瀬戸の鬼板、島根県来待石、などなどまだまだあります。

  • 椿昇先生のコメント

    ブラタモリだね!学長の尾池先生の専門分野ですね。

 

また、私の地元の愛知県では、
豊橋市南部高師原(たかしはら)というところでよく採れる、
高師小僧(たかしこぞう)という植物の葦(あし)などの
根っこに集まってくる鉄分があるそうです。

鉄分は食べ物だけでなく、
石や植物にも含まれていることを初めて知りました。

本来その石だけで釉薬にしようと思うと
漬物石数個分は必要だそう。
ですが、今回は原料屋で販売している鴨川石と混ぜるので、
男性の拳大5個ほどあればいいとのことでした。

私は友達と二人で、
鴨川デルタ(左京区出町柳駅付近の川)で
石拾いをすることにしました。
朝7時にデルタに集合。
出勤する人や、ランニングをする人、体操をする人など、
ちらほら人がいました。
運良くこの日は気持ちいい晴天で、石採り日和。

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事前に小川先生と清水先生が見せてくださった
加茂川石やテストピースを参考に、
頑張って目的の石に近いものを探そうとしますが、
なかなか見つけられません。
ですが、拾い続けていると、
様々な個性をもった石たちがたくさんありました。

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そして1時間程拾い続け、解散。
早起きはきつかったけれど、朝、夏、川、の組み合わせは
すごく気持ちよくて、何より楽しかったです。

  • 椿昇先生のコメント

    誰もこんな事、鴨川でやらないからね~

 

1つとして同じものはない

普段私たちは、石というものをまじまじと見ることはないと思います。
むしろ普段は踏んだり蹴ったり、素通りするものです。
でも今回石拾いをして、
石の形、色、大きさなど、ひとつとして同じものはありませんでした。
石も人間と同じように個性があるのだと、気づくことができました。

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拾ってきた石は、ある程度金槌で砕き、
その後スタンパーで細かく砕きます。
みんなそれぞれの石を見せ合い、
先生もそれに興味津々のご様子でした。

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私が拾った石たちは、乾いたら、灰色になって石の色でした。
乾く前は黒く見えたのに、、、残念。

砕いた石は受け皿を作り、
その上に砕いた石をのせて窯で焼きます。
受け皿は、橋陶料さんのところで採ってきた土を
粘土にしたもので、テストピースとして使います。
粘土がどのように焼けるか、石が溶けるか、をテストします。

  • 椿昇先生のコメント

    このデータ収集はあらゆる仕事の基礎になります。
    リサーチとかサーヴェイという英語がありますので
    覚えておいてください。
    欧米はこの作業を最も重視していて、
    予算もしっかり出ます。
    日本は結果にはお金を出しますが
    調査にしっかり出すところはまだまだ少ない。
    ここは欧米に学びたいですね。

 

そして、焼けたテストピースを観察。

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溶けた石は、釉薬に使うことができます。
石によって溶け方や色も違っていて、溶けた石はツヤツヤしており、
そのままブローチにしたいくらい可愛い姿をしていました。

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さて、ここまでは準備の段階。
長い。手間がすごい。

  • 椿昇先生のコメント

    なんでも簡単に手に入る弊害。
    物作りがピンチになるのも、
    育つ段階で「手間を省く」事ばかり習うからです。
    ガマンガマン

 

次回はついに成形をしていきます。

※ここではわかりやすいように段階を分けて説明しておりますが、
土作り、窯作り、釉薬作り、成形の工程は、
授業では同時進行で進めているものです。

今回、自分たちで石を拾ってくるにあたり、
清水先生は大量のテストピースを持ってきてくださいました。
それらのテストピースは、
段ボールの板にくっつけられており、
岩倉や高野、貴船など、京都の各地で採石されていました。

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  • 椿昇先生のコメント

    プロセスにこそ真実があります!
    これを見せていただけるのは貴重です。

 

それぞれの石が、
どの温度でどういう風に溶けるのかが細かくテストされていたのです。
その量に、私たちは驚きました。
私は1時間かけて5つほどの石を見つけるので精一杯だったから。

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中には、「子供の楽園の奥の川」と書かれた石も。
行ってみたい。

  • 椿昇先生のコメント

    愛おしいね!この手書き文字も

 

内側に入ってみる

茶の湯はその昔、武士の嗜みでした。
昔に比べて、今はお寺やお料理やさん、
カフェなどでもお抹茶を飲むことができる時代になっています。
お抹茶が身近になっている分、
私たちはそのお抹茶が何産なのか、ましてやお茶碗が
何で作られているかには、あまり関心がありません。
私も、この授業をするまではその一人でした。

でも、実際に自分で作ってみてからは、
お抹茶を飲む機会があるたびに
これはどこで作られているのか、
誰が作ったのかなどを気にするようになりました。

普段私たちは物事の外側を見ています。
外側を見て、知った気になってしまっています。
自分達が来ている服、口にしている食べ物も、
誰が、どこで、どうやって作っているかはほとんど知りません。
そういう活動(農業体験や野菜の規格外品販売など)はありますが、
まだまだ浸透はしてないように思います。

  • 椿昇先生のコメント

    ちょこっと体験は返って
    「わかった気になる」ので危険です。

 

でも、内側に目を向けることで
今まで見えていなかったものが見えるようになり
ずっと持っていたくなったり、嬉しくなったりします。

黒樂茶碗に使われる釉薬の原料が、京都の加茂川の石だったことを
今回の授業で初めて知りました。
知ったことで、私は京都がもっと好きになりました。

もう少し、私たちは内側に入ってもいいのかもしれません。

 

つづく

2019.04.01更新