京都文化
トリハダ通信
3

京都文化トリハダ通信3

樂茶碗づくり〈黒樂編〉
学生による授業レポート

Kyoto Art class
Report3
“Raku yaki”
Text by Hinae Suzuki


京都文化 トリハダ通信3
樂茶碗づくり
基礎美術コース 2年
鈴木 日奈惠

(6)_「冷静に熱く頑張っていきましょう」

お待たせいたしました。
ついにお茶碗の最終工程、窯焚きです。

〈窯の組み立て〉

前日のうちに窯を組み立てておきます。
赤樂茶碗の時は、
耐火レンガを蓋のないはこのような形で並べましたが、
今回は、耐火レンガを筒のような形に組み立てていきます。

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  • 椿昇先生のコメント

    炎と土って人間の根本にある大切な
    「何か」なんだけど、
    もう誰もその在処がわからなくなってますよね。
    めちゃ凄い薪ストーブだと思って
    炎を見たらデジタルだったりとか笑えない・・・。
    人間はどこへ向かっているのか
    不安になったら炎を眺める機会を持ちたいですね。

 

レンガは、組み立てやすいように
凸凹している面をコテなどで削っておきます。
この作業がなかなかに大変でした。

  • 椿昇先生のコメント

    再利用してゆく賢さを身体化することは、
    これからの君たちにはとても大切。

 

ガリガリガリガリ。

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腕がめっちゃ疲れました。

  • 椿昇先生のコメント

    液晶画面から世界を見るだけじゃ
    身体はどんどん遠くへゆく。
    でも人間は病気をしたり怪我をしないと
    その事に気づかないのですね。
    そういう僕もこうやって
    液晶画面にコメントを書き込んでいます(笑)

 

テレコになるように積み上げて、
その隙間をモルタル
(セメント1に対して2~3の砂を混ぜて水で練ったもの)で
埋めていき、
作った内窯を入れ、炭を敷き詰めて準備完了です。

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  • 椿昇先生のコメント

    セメントは日本で豊富に採取できる資源のひとつです。

 

下の方には、風を送るため隙間を
4箇所空けておきます。

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黒樂の窯では、
ふいご(人工的に風を送る装置)”によって
窯の焼成部に空気を送り、
窯内部の木炭の焼成を一気に高め、
温度を急激に上昇させます。
私たちはこのふいごの代わりに、
ブロワー(送風機)で風を送ります。

  • 椿昇先生のコメント

    さすがにここは電気を使うんだね。
    足踏み式ふいごもありますよ~。

 

お茶碗の授業が行われたのは、
夏真っ盛りとも言える時期。
盛夏の引き出し黒はなかなかに過酷です。
油断したら、火傷、一酸化中毒、熱中症、
命と隣り合わせの窯焚きになります。

  • 椿昇先生のコメント

    危険を丁寧に現場で学ぶ教育が
    消えて久しくなりました。
    基礎美の先生たちはひるまない!

赤樂茶碗は900度くらいですが、
黒樂茶碗はより高温の、
1250度くらいまで温度を上げます。
なので、覚悟を持って臨まなければいけません。
普段私たちが入っている
お風呂の温度が大体42度くらいだとすると、
だいぶ熱いことが分かります。

  • 椿昇先生のコメント

    爆笑!!!

 

服装は、
ツナギ、もしくは長袖長ズボン、
サンダル以外の靴、サングラス、
顔と頭を覆うためのタオル。
手は軍手の上から皮手をして、限界まで守ります。

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見た目はあれですが、
こうでもしないと、火傷したり、
髪が燃えてしまったりするのです。

  • 椿昇先生のコメント

    「あれ」とは何を指し示すのかな~~~。
    チコちゃんより。

 

冷静に熱く

〈窯焚き〉

先生方は朝8時から準備をしてくださいました。
私たちも授業が終わった人から合流。
私たちが作った内窯を使った直炎窯と、
清水先生が持ってきてくださった
清水窯(先生自作)も使い、
一人2碗は焼けるようにどんどん焼いていきます。

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炭を入れています。

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火を起こしています。

お茶碗を焼く前に、
高台(お茶碗の底の部分)がくっついてしまわないように、
”という粘土を小さくめるめたものを3つ程くっつけます。

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  • 椿昇先生のコメント

    僕は高台に残る“メ”の跡が結構好きです。

 

そして、
お茶碗を窯の周りに並べて温めます。
温まったら、火ばさみでお茶碗を挟み、内窯の中に入れます。
直炎窯は3碗ずつ、
清水窯は5碗ずつ焼いていきます。

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先生も私たちも必死です。

しかし、ここで事件発生。
私たちが作った内窯が、
2回目を焼いている途中で崩壊してしまったのです。
そのため、途中で清水窯に引っ越しし、
その後は清水窯のみで焼いていくことになりました。

  • 椿昇先生のコメント

    その瞬間のエネルギーの移動する様を忘れないでね。

 

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清水窯

30分おきぐらいに入れ替えて、
火を落とせないので
その場にいる人からどんどん焼いていきます。

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温度上昇がイマイチだと感じたら、
炭を追加していきます。
蓋を開けて、炭を入れたら、すぐ閉める。
そしてまた炭を追加したら、すぐ閉める。
温度が下がってしまわないように、
作業はスピーディでなければいけません。

さらに、樂焼は窯の中で温度が下がるのを待つのではなく、
釉薬が溶けたらすぐに引き出し冷却します。
つまり、急熱、急冷するのです。

  • 椿昇先生のコメント

    なぜこの方法になったのかな?先生に聞いて見た?

 

必死のパッチですが、この暑さです。
無理な人は頑張り過ぎず、動ける人が動いて、
みんなで助け合うしかありません。

「冷静に熱く頑張っていきましょう。」

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革手袋をせずに火に近づくとこうなります。
軍手では弱すぎた、、、。

  • 椿昇先生のコメント

    危機一髪!でも純綿の軍手って万能です。

 

窯場のすぐ近くに休憩場所として教室をお借りして、
ポカリなどの水分もたくさん用意していただきました。

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あと、記録もしっかりと。
鎮火作業を終え、帰る頃には外は真っ暗になっていました。

  • 椿昇先生のコメント

    このホワイトボード現場感がすばらしい!
    この環境も作品といえるかもしれません。

 

一瞬の美

「私達は明日マジでやります。
協力して下さい。宜しくお願いします。」
清水先生は窯焚きの前日、
私たちにこの言葉をおっしゃいました。

この瞬間、私たちがこれから行う作業が、
どれだけ過酷なことなのか
ハッとさせられました。

  • 椿昇先生のコメント

    先生を「マジ」にさせるのは学生次第です。
    そこが現場で忘れられている。
    教育は共同作業で
    先生が一方的にするものではないのですね。
    良い噺家と良い観客がいてこその芸能です。
    授業もひとつの芸能の美学に基づくのが僕の理想です。

 

当日は万全の準備をし、臨んだため、
怪我人は出ませんでしたが、
先生方はいつもこんなに大変なことをしているのかと思うと、
改めて先生方のすごさを実感します。
まさに身体知。

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また、
引き出したばかりのお茶碗は
「俺に触れると火傷するぜ」と言わんばかりに赤く、
太陽のように輝いています。

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  • 椿昇先生のコメント

    地球誕生の時の輝き!
    遺伝子に反応するんだろうな~。

 

その後、まるで日食のようにそれは漆黒へと変化します。
その過程は、
目を離せなくなるほど美しく儚いものでした。

  • 椿昇先生のコメント

    すばらしい表現だね!

 

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窯焚きの時、
先生方の纏う空気は普段よりもピリッとしていました。
それは、先生方が本気でやっているから。
清水先生も小川先生も、
私たちに対して本気で向き合ってくださっているからだと、
後から気づきます。

それが私たちにとってどれほどありがたいことなのか。
「学生だからやる気がなくてもしょうがない。」
「学生だからできなくてもいい」
というような理屈は通用しません。

先生方が本気だから、私たちも本気で答えねば。
というか、私たちが先生方以上に本気でなければいけない、
と思ったのでした。

  • 椿昇先生のコメント

    うーん。
    ありがたいと思っているうちはダメだね。
    永遠に先生には届かなくなる。
    反発して乗り越えて先生たちの上に行くぞと思わないと、
    ますます距離は遠くなってしまいます。
    悪い意味で良い生徒にならないように。

 

つづく

2019.04.15更新