京都文化
トリハダ通信
3

京都文化トリハダ通信3

樂茶碗づくり〈黒樂編〉
学生による授業レポート

Kyoto Art class
Report3
“Raku yaki”
Text by Hinae Suzuki


京都文化 トリハダ通信3
樂茶碗づくり
基礎美術コース 2年
鈴木 日奈惠

(7)_好きこそ物の上手なれ

〈合評〉

お茶碗作りも終わり、残るは合評。
先生に作品を講評していただく時間です。

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お茶碗は人それぞれ。
見ているだけでその人の個性が溢れ出ていて、
とても面白いです。

  • 椿昇先生のコメント

    個性にあふれているうちはまだまだ(^^)。
    それは単に下手くそと紙一重なんだよね。
    誰がやったのか個性も消えた果に
    禅の求める世界が拡がっています。
    って・・・こんな難しい事今言ってても仕方ないけどね、
    何十年かたったらわかるかもしれない。
    個性より真似る事。
    完全な銘品のコピーが作れるようになってから
    はじめて個性と呼べる世界が拡がってきます。
    誰でも手に入れられるようなものでは無いのが
    真の「個性」なんですよね。

 

土をとり、釉薬のための石をとり、
これを通して何を得たか、赤樂の時との違いは何か
などをエスキースなども見せながら先生方に話します。

私たちの作品に対して、私たちの良いところは良い、
足りないものがあると感じられたときは、
何が足りなかったか?の問いを投げかけたり、
一人ずつ丁寧にコメントをしてくださいます。

お茶碗には、その人の性格がよく反映されます。
手に持ったとき、
これでお抹茶を飲みたいと思えるお茶碗を作ろうと思った子は、
お茶碗のことをとてもよく勉強していて、
一番お茶碗らしいお茶碗でした。

外から見たらわからないけど、
実は愛嬌があって話しやすい子のお茶碗は
お茶碗にも愛嬌があって、
普段見せない力強さが出ていたお茶碗でした。

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また、お茶碗にトマトの絵を描いた子は、
「このお茶碗は黒くなるなんて、不思議でわくわくした」
と楽しそうに話している素直な姿に、
その子の知らなかった一面を見ることができた気がして
私までわくわくした気持ちになりました。

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  • 椿昇先生のコメント

    これはよき椀なり!!

 

合評が全て終わったら、
先生が用意してくださったお菓子と、
自分たちが作った、作りたてのお茶碗で
お抹茶をいただきます。

  • 椿昇先生のコメント

    育てるは愛でること。
    愛でるとなぜか欠陥を愛してしまえるようになる。
    愛してしまわざるを得ない欠陥。
    意図してもできない欠陥。
    それが個性の彼方にあります。へうげもの~

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  • 椿昇先生のコメント

    すばらしい茶席だね~。
    茶の湯はどんな場所でもできます。
    旅行に薄茶のセットを持参する人もいますよ。
    山口桂先生も常に携行されています。
    僕も内田鋼一さんのお茶碗ありますが
    怖くてニューヨークに持っていけない

 

「茶の湯のためのお茶碗」と言われる所以

ここでまた、樂茶碗が
「茶の湯のためのお茶碗」と言われる所以をご紹介します。

先に書いたように、
樂茶碗は急熱急冷で焼かれるため、
胎土(原材料として使用された土)が焼き締まらず、
軟らかい陶質になります。
茶の湯では、
五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)の中でも特に、
触覚的な感覚を大切にします。
この軟らかい性質の土肌は
水を含むとしっとりとした柔らかい感触になり、
さらに、軟陶質は熱を伝えにくく、
実際に茶を点てて使用する時は沸かしたてのお湯でも
その熱さを抑えることができます。

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さらにさらに、
一度ゆっくりと温められたお茶碗は、
点てられたお茶を冷めにくくしてくれる役割もあるのです!
お茶碗を通して伝わる心地よい暖かさは、
その人の心をも暖かくします。
まさに、細やかな心配りを大切にする
茶の湯のためのお茶碗というにふさわしいお茶碗なのです。

焼きたての、自分で作ったお茶碗で飲むお茶は、
頑張ったなぁという達成感と、
自分で作ったという愛着が湧いてくると同時に、
「もっとこうすればよかった」
という反省点が数え切れないほど出てきます。

  • 椿昇先生のコメント

    さあ!次は授業外で作ってみよう。

 

「作ったお茶碗は、今後も使い続けて育てて下さい。」

人でもないのに「育てて下さい」という言い方が、
すべてのものに神様が宿るという
考えを持つ日本人らしくて、
私は好きだと思いました。

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実際に基礎美術コースの子達は、
持ち帰った後でも、自分で作ったお茶碗で、自分で抹茶をたてて
お茶碗を育てています。

これから、お茶碗がどういう表情を見せてくれるのか、
楽しみです。

  • 椿昇先生のコメント

    和菓子も好きになって来るよね。
    ここから精進料理に興味を持って欲しいなあ。

 

底なし沼

数多くある工芸または美術表現において、
焼成”という方法を使うものはそう多くありません。
手を施せば報われるものでもなく、
理解していてもその通りになるものではありませんが、
すべからく、意識の蓄積が結果に反映します。

思い通りになるのか、ならないのかも
焼きあがってみないと分かりません。
そこが焼き物の難しいところであり、
ハマればハマるほど抜け出せなくなる
底なし沼のようなものだと感じました。

私は、本来持っている良さ(衝動的にできること)と、
まだまだ勉強不足なところがあると
ご指摘を受けました。
私は今回、赤樂の時より衝動を抑え、
冷静になろうとお茶碗作りをしていました。
それが先生方にはわかったのだと思います。

「足りへんと思うんやったら、
自分が頑張れば良いだけの話やろ。」

そう言っていただけるだけでありがたいのですが、
やはり、先生は厳しいです。

「好きこそ物の上手なれ」
どれだけ勉強するかよりも、どれだけハマるか。
自分の“”をまだ見つけられていない私にとっては
耳の痛い言葉でしたが
私も続けていれば、好きだと思うことを続けていけば
自然と沼にハマっているのだろうなと思います。

  • 椿昇先生のコメント

    「好きこそ物の上手なれ」の前に横たわるのは
    「好きになるには」「忍耐あればこそ」
    という厳しい現実です。
    一切教えてもらえず何でこんな事してるんだろうと
    10年以上自問自答に明け暮れる、
    もう止めようと思った時にうっすらと明かりがさして・・
    ようやくひょっとしたら続けてゆけるかもしれないと思う・・。
    苦難の連続に一瞬輝くのが「好き」かもしれないね。

 

プロの世界であればあるほど、
プレイヤーにとって条件が整うことは皆無だそうです。
そして悪条件だからといって
それが評価に加味されません(大学ではちゃんとしてくれます)
その中でどう時間をつくり、練磨し、
創造性を失わずにモチベーションを上げてゆくか。
勿論、どう稼いでいくか。
これはクリエイティブな仕事をしていくいかないにかかわらず、
能動的に人生を歩むのであれば、
常に対峙しなければならない大変大変大変難しい問題です。

故に昨年の赤樂、
今年の黒樂で私たちが先生方から学んだスキルや思考、
それ以外のところでも、
大きなプラスになったと思います。
非常に圧縮したカリキュラムの中、
投げ出さずにやり通したことは
私たちの自信になり、そして誇りになりました。

「この世界はタフな業界です。」

先生方がそうしてきたように、私たちも恐れず、
身を削ってでも突き進むことが
必要なのだと感じた1ヶ月間でした。

  • 椿昇先生のコメント

    頭をからっぽにして単純作業をしていると・・
    いつか何かがそっと背中を押してくれます。
    とにかく4年間で毎日続けられる何かに出逢ってくださいね。

 

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私たちが作った内窯は壊れてしまいましたが、
燃え尽きて、真っ白になってもなお美しく思えました。
ありがとうと言いたくなるような作品。
お疲れ様でした。ありがとう。

  • 椿昇先生のコメント

    「感謝」が僕たち作家を育ててくれます。
    君たちもね!

 

〈参考文献〉
樂 篤人・吉左衛門(2013)『定本 樂歴代』樂美術館 監修 , 淡交社

 

おわり

2019.04.15更新