職人技の機械化についてどう思う?

オキサト

伝統工芸について
オキサトさんに
聞きました

Okisato
interview 6

回答
永田 宙郷

質問
空間デザインコース2年 竹之内 春花


Answer
Okisato Nagata

Questioner
Haruka Takenochi

「伝統工芸って何ですか?」
「職人さんはなぜ減っているのですか?」

京都の職人や伝統工芸のことを学び始めた学生が考える、
ハテナはとても根源的なこと。

そこで、作り手と使い手と伝え手を繋ぐ様々な仕事をされている
プランニングディレクターの永田 宙郷(ナガタ オキサト)さんに
思い切っていろんな質問をしてみることにしました。

 

 

学生 Q :

職人技の機械化についてどう思いますか?(はるか)

オキサトさん A :

元々、あらゆるものづくりは、
その地域の固有性を含んだ生活や文化に必要な
道具を作ることをスタートにしています。

元々、あらゆるものづくりは、
その地域の固有性を含んだ生活や文化に必要な
道具を作ることをスタートにしています。
そして、そのものづくりの最初は、
どうしても試しながら少量ずつ作りますし、
素朴な素材や技法を手探りで組み合わせながら、形を持たせていきますので、
多少の成熟を見せたとしても
「手工芸」と言われるようなものづくりになります。
多くの場合、伝統工芸は、この手工芸という技法を保ちながら
継続してきたものづくりを指しています。

手工芸(=地域ならではの固有性を含んだ生活や文化に必要な道具を作ること)を続けて行くと、
生活必要品をつくっているため、
「どうしたら必要な人に、必要なだけ、効率的に提供できるか?」
という気持ちから、
どんどんと効率的な作業を実現するために機械を導入し、
いわゆるところの「機械化」が進んでいきます。
最初は、より固有性を高めるために機械は使われはじめるのです。

ただ、あまりに機械化が進むと、
手工芸に比べて、あまりに効率的かつ経済的にものづくりができるので、
地域の固有性をもった生活に
必要なものづくりというところから、
地域の雇用だとか規模拡大のためと変わっていき、
「機械化」の目的が「地域産業化」になっていきます。

そして、「地域産業化」したものづくりは、
本来のその地域での生活や文化に必要なものを作る
という視点がさらに薄れ、
世界中で同じように買って使ってもらえる便利なものを作ろう
という気持ちが膨らみ、
判断としてもそれが優先されていき、
次第に「工業化」「(一般)産業化」されていきます

これがさらに大きくなると同じ機械と同じ素材さえあれば、
どこでも再生産が可能になるため、
地域でつくることすら必要がなくなります
「グローバリゼーション」と呼ばれるものづくりになっていきます

こうして、「機械化」を発端にしたものづくりの
「工業化」「産業化」が過度に進むと、
ものづくりが当初に持っていた
「地域の固有性に対して必要なものをつくる」という
役割そのものが無視されていきます
そうして、いつの間にか、
固有性をもった地域の生活と文化をより便利に実現するか
という本来の目的が裏返されて、
まったく逆の効果を生んでしまう事になるのです。本末転倒ですね。

はるかちゃんが、
機械化が進みすぎることを危惧する理由には、
こういう機械化が進むことで失われるものへの
心配があるのだと思います。

オキサトさん

ただ、僕自身としては、
だからといって闇雲に機械化を反対はしません。
ちゃんと、どう機械や新しい技術と向き合っていけば良いのかを
考えた上でやっていけば良いと思っています

良くも悪くも、伝統工芸と呼ばれるものづくりが今できることは
「生活必需品を提供する」ということではありません。
当初のものづくりの目的である
「地域の生活や文化という固有性を支えるため」に存在することが、
いま伝統工芸が見直され、必要とされている
大きな役割であり存在の意義です。
つまりは、これまでのような工業化・産業化のための機械化ではなく、
これからは固有性の再確認・再構築のための機械化であれば、
伝統工芸にとっては有益な機械化と言える可能性は大きいと思っています。

たとえば、これだけ継承者が少なくなると
自動的にその技の記録を残してくれるマシンはぜひとも必要です。
従事者がこれだけ高齢化していますから、
力仕事を軽減できるアシストスーツもあると良いと思います。

オキサトさんに聞こう

教えてくれる師匠も、
お互いに学び合う同僚も少なくなってますので、
多業種や他産地とスムーズにコミュニケーションのとれる
ネットワークも必要だと思います。
成熟消費のステージに入った国や層には、
ものづくりの背景を理解したいという人が多いので、
しっかりとものづくりの背景を共有できる情報発信と
共有のためのテクノロジーの採用は必要不可欠です

オキサトさんに聞こう

このように、これからは、
かつてのように人間の動力の代用として「機械化」するのではなく、
ものづくりの根底となる地域の固有性と文化を受け継いでいき、
伝統工芸の意義や役割を最大価値化していくには、
どの部分をどのように機械化をしていくことが良いのかを考えることが、
いまのプロデューサーやデザイナーや作り手が考えなければならない
伝統工芸における機械化の問題になっていくとも思います。

なんだかもらった質問とは、
少しずれた答えになってしましましたが、
伝統工芸にとって本当に必要な機械化の内容は、
時代によって変化してきたことは確かですので、
せっかくですし、これからの伝統工芸に必要な機械化を
考えてみるのも面白いのではないでしょうか?

 

2019.05.01更新

 

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永田宙郷(ながたおきさと)
合同会社ててて協働組合共同代表・プランニングディレクター。

1978年福岡県生まれ。
『ものづくりをつくる』をコンセプトに数多くの事業戦略策定と商品開発に従事 伝統工芸から最先技術まで幅広い事案に対し、時代に合わせた再構築や、視点を変えたプランニング を多く手掛ける。 作り手と使い手と伝え手を繋ぐ場としてデザイナー、ディストリビューター、デザインプロデューサーと 共にててて協働組合を発足し、2012年より、『ててて見本市』を開催。

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似顔絵       AIUEO  kaorin
イラスト    竹之内 春花