京都学
レポート
6

香道
みのり苑 二柳順蔵さん

みのり苑
二柳順蔵さんによる京都学

Kyotostudy Report #6
Minorien
Zyunzo Niyanagi

by Takenouchi Haruka
  Mizobe Chihana
  Suzuki Hinae
  Kishi Naoki

みのり苑
二柳順蔵

空間デザインコース2年 竹之内春花
空間デザインコース2年 溝部千花
基礎美術コース2年 鈴木日奈惠
ファッションデザインコース 2年 岸直輝

京都学レポート6

ゲスト 香道 みのり苑 二柳順蔵さん

担当は文筆家・工芸ジャーナリストの米原有二先生と、
空間演出デザイン学科准教授・デザイナーの酒井洋輔先生です。

この授業では、毎回異なる職人さんがゲストとしてお越しくださり、
京都が育んだ手仕事とその粋、
京都のことや日本のことなどを教えていただきます。

京都の工芸には、日本の工芸と違って
ものづくりが他の文化と連動し、
繋がっているという特異点があります。

京都に住む70人に1人が伝統産業に携わりながら
生活しているこの京都という地で、
私たちはそんな京都の伝統について学んでいます。

そして、学生がそれぞれ授業を受けて考えた新しいアイデア(イノベーション)を
レポートとして提出してもらっています。

 

今日の職人さんは、みのり苑 二柳順蔵さんです。
日本で育ってきた香道(香を焚いて香りを鑑賞する芸道)文化のお話から、
みのり苑4代目となる二柳さんの香木に対する深い愛情を感じました。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

 

“目には見えない世界”

お香というのは、香木という香りが豊かな天然木材の香りのことです。
香木には様々な種類があり、
そのまま香るものや、加熱したり、一定の湿度が加えられたりすることで
香りを出すものなどがあるそうです。
お香の世界というのは目に見えないものです。
しかし、この「香り」というものが
空間を作るのだと二柳さんは教えてくださいました。

仏教の世界だけでなく、
カトリックでも教会の空間でお香を焚くことがあるそうです。
同じ香りが漂うことで、その空間が寺あるいは教会になるのです
そのようにお香の香りは空間を作ってきました。

「フランスは香水の国、日本は香木の国です。」
空間を漂うものはお香であり、
肌の上を漂うものは香水であるとお話してくださいました。
また、あまり知られていない事実ですが、
実はお香に使われている「香木」は日本では採ることができないそうです。
香木はベトナムやインド、マレーシアなどの
国々のジャングルでしか採ることができません。
昔から日本はアジアの輸入ルートを確保して、
なんとか大変貴重な香木を仕入れてきたのだそうです。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

 

“お香は聞くもの”

お香は「嗅ぐ」ものではなく、「聞く」ものなのだそうです。
香りを聞いて、嗅ぎわけることを「聞香(ぶんこう・もんこう)」と言います。

聞き香炉という香炉で5種の香りを順番に焚き、
その香りの組み合わせを当てる「源氏香」などといった
組香の遊びがあるそうです。
今でも行われている遊びで、
香元がその日味わう香りを文学的なテーマで選び、
聞き香炉を回して1種ずつみんなで香りを記憶します。
5種の香りを聞き終わった後、香元が香りを順に読み上げ、
自身の記録と照らし合わせて成績をつけるといったものです。

組香のテーマには「源氏香」の他に
「七夕香」「星合香」など
古今和歌集の歌を題材にしたものなどがあるそうです。
物語にタイトルがあるように、
香りにもタイトルをつけて楽しんでいたと言います。
ただ香りを楽しむだけでなく、歌と絡めることで心を傾け、
空間(情景・季節)を想像しながら香りを楽しんでいました。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

 

“ほんものの香り”

「お香は高いさかいええんやなくて、
日本人がお茶とかの文化を大事にしてきた。その極みです。」

竹の皮に包まれていたことで200年、
300年前の香木の香りが保たれていたということもあったそうです。
「こんなに小さな木の片が、なんと素晴らしいことか。」
香木は採れる国、島によって香りの質も変わります。
肘から手の先くらいまでの長さで30万円ほどする大変貴重な香木たちは、
1つとして同じものはありません。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

「沈香(じんこう)」という香木は特に高価で、オイル(油)が多く採れます。
しかし、今ではスカスカで
水に沈まない香木しか手に入らないのだそうです。
オイルの詰まった良質な香木はどんどん価格が高くなり、
一般の市場には出回らなくなってきています。

また、白檀(びゃくだん)というお釈迦さまの生まれた国
インドのジャングルで育った、清らかな香りの香木あります。
しかしこの白檀も、今ではチップの状態でしか出回っていないのだそうです。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

「今はお香の世界にビジネスが介入して、
ほとんどアラブの産油国へ輸出している。
かつては金と同じ価値であったのに
今では10倍に。
悲しいかな、人を位付けするわけやないけど
貴族社会のためだけのものになってしまってきている。」
戦後豊かになり庶民が香道を楽しめるようになりましたが、
今再び価格の高騰によって庶民の手から離れていってしまっています。

また、中国が香木をかき集めて大量に国に留めているということも
問題となっています。
相場が減ることがないため、
現金として持つよりも安全で自分たちを守ってくれるという点から、
香木として財産を保管しています。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

 

“香りで国を分類していた”

香木の名前は、かつての国の名前を表しています。
伽羅(ベトナム)、羅国(タイ)、真那伽(マラッカ)、
真南蛮(マラバル)、
佐曽羅(サッソール)、寸聞多羅(スマトラ)
6つは全て香木の名前であり、かつての国の名前です。

香木は銘があるだけでも数百種類に及びますが、
香道においてはこの6つを使用することとなっており、
分類規準のようなものとなっています。

また、仏教とお香の伝来は通じていると言います。
最初、仏教伝来以前の香りは杉・檜・榊など
木の香りを凝縮した自然そのままの香りでした。
しかし仏教伝来とともに「香」というものが伝わり、
それまでの香りよりも、より濃密な香りを持つ香木が渡来し、
仏教儀礼の場で
焚かれるようになったのだそうです。

また、お香には味があります。
甘・酸・辛・苦・しおからい)という5つの味です。
千年近くも昔の、刺激物のない時代の人々が感じていた味なので、
同じ「甘」といっても今の私たちの思う
「甘」とはかなりかけ離れているそうです。

このような6つの国と5つの味を合わせて分類することを
「六国五味(りっこくごみ)」と言います。

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

香道 みのり苑 二柳順蔵さん

また、香木の香りは日本に四季があることで生きてくるのだそうです。
「日本には四季、湿気がある。その中で香りが生きてくる。
湿気がないと発揮されない香りがある。
逆もあって、日本では売れない香りがある。
このようなことが香水との差です。
線香も香木を使うのと使わないのとでは値が違う。
でもお香は高い安いではなく、香りが合うか合わんかで選ばれる。
良さをわかってもらえるのは3割程度(の人々)です。
今ではありとあらゆるどんな香りも作れる。
やけど自分が生きてる間だけでも、本筋を守りたい。」

香道 みのり苑 二柳順蔵さん 香道 みのり苑 二柳順蔵さん

 

  • 岸くんの感想

自分の兄はお香を自分の家で焚いて生活しています。
案外身近で使われているものなんだという認識があります。
「香り」というものが空間を作る。とありますが、
その通りだなと感じました。
お香を焚いた時、
香りは目に見えていないが部屋全体を取り囲んでいるのがわかります。
部屋に置いてある、服、布団、などにお香の匂いについているからです。

授業を聞いて1番驚いたことは香木の価値です。
私の想像では高くても数万円ぐらいだと思っていましたが、
金(ゴールド)の10倍まで価値が上がっているものもある。
しかも自分の財産として香木を貯めている人もいるなんて。
また、日本は四季があることによって湿気があり、お香本来の香りができると。
それはあくまで日本でのことで、
世界に向けてあるお香の香りが気になりました。

お香は今、若者も自分の部屋で焚く人が増えているような気がします。
街でもお香のお店に若者が入っているのをよく見ます。
認知度などは高いと思いますが、
その人はお香本来の匂い、価値、お香についてなどは
あまり知らないと思います。
みんなが買うのは自分に合っている匂いや、
香木が使われてない香りじゃないかと思います。
この授業を受けて、
みんなにもお香について知ってもらいたいと思いました。

 

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

・源氏記号パッケージ
「源氏香之図」にある「夕顔」「梅枝」「幻」などの香りを
表す記号の形がとても可愛いと思ったので、
この記号を商品を売る時の箱やパッケージにデザインとして入れると、
若い人にも香を買ってもらえるのではないかと思う。
Idea:森國文佳

 

2019.05.01更新