Innovation Works
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錺金具・飾り金具製造 株式会社竹内

釣りと職人?!
「boil」について
お話を伺いました。
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Innovation Works
interview 1

boil
Miya Inada

空間デザインコース 4年
稲田 弥也

「イノベーション」とは、
新しいものを生産する、
あるいは既存のものを新しい方法で生産することであり、

生産とはものや力を結合することと定義される
(『経済発展の理論』Schumpeter)

本研究センターでは、
伝統文化におけるイノベーションの創造を目指すと共に、
イノベーションを起こしている
様々なクリエイター
/ 企画者を取材することにより、
発想やきっかけが生まれた物語を記録、発信していきます。

「釣り」と「職人」を掛け合わせて、
ルアーをつくる「
boil」という制作。
京都造形芸術大学 空間デザインコース4年 稲田弥也くんに
そのイノベーションが生まれた話と考え方を聞きました。

 

(1)_「まだそんな釣りしてんのか」

制作に至った経緯を教えてください。

さかのぼること7年前、
知り合いのおじさんに誘われ釣りに行ったとき

「まだそんな釣りしてんのか、男はトップ一本や」
と言われたことから始まりました。
釣りにはたくさんの種類があり、
おじさんが教えてくれたのはトップウォーターという釣り。

通常ルアーと言われる疑似餌を沈め、
水中で魚を狙うのが一般的な釣り方であるのに対し、

水面にルアーが浮かんだ状態で、生きているかのように巧みに動かし魚を誘う。
ルアーが浮かんでいるので、
魚が水面を割って食べにくるためとてもドキドキする。

しかしトップウォーターの釣りは全く釣れない釣りとしても有名なんです。
丸一日やって釣れないのは当たり前。
10 回行って1匹釣れれば上等。
釣りは魚を釣るためにやるものなのに、
なぜわざわざ釣れない釣りをおじさんはしているのかと聞くと
「魚なんかいっぱい釣ってもしゃない、
釣れるわけないと思っとるもんで釣ったほうがうれしいし、かっこええやろ。
釣れへん時間が長ければ長いほど一匹のうれしさ倍増や」

そう言われ私はトップウォーターの世界に飛び込みました。

しかしトップのルアーはとても高く 6,000~30,000 円ぐらいが相場で、
当時中学生だった私には手に届かないものでした。

そこで、買えないなら作ればいいと
庭に落ちてる木とカッターで掘り出したのがそもそもの始まりでした。

そして、今年の夏に釣りをしているときにふと思ったんです。
天気、気温、風にあわせてルアーの種類を変える。
糸を巻くスピードを変えてみる。投げる場所を変える。

それは職人が、用途に合わせ道具を持ちかえるのに似ている。
釣りと職人。
通ずるところがあるのであればルアーを共同製作できないだろうかと。

木を掘り、本体は自分で作ることができるので、
そこに取り付ける金属パーツを作っていただけないかと思い、
早速「錺金具・飾り金具製造
株式会社竹内」という
寺社仏閣などの飾り金具を製造している職人さんのところに電話したんです。

 

職人さんはどんな反応でしたか?

職人さんと共同作業でルアーを作りたいと考えています。
よければ一度お話しできないでしょうか。と電話すると

「ハネものですか?面白いですね。作りましよういつにしましょう
ハネもの=ハネのような金属がついたルアー
と、驚くスピードで製作に協力していただけることになりました。

後にお話しを伺うと、竹内さんは無類の釣り好きで、
ご自身でもルアーを作りたいと考えたことがあったそうです。

金属パーツのデザインは寺社仏閣に実際に使われる模様を掘っていただき、
それに合わせた本体を私が削り出す
という分担で制作することになりました。
ちなみに春には竹内さんと釣りに行く約束までしました。



錺金具・飾り金具製造
株式会社竹内

創業50
伝統工芸多く残る町ある京都灯篭屋として企業。
現在は、これまに培った技術と感性仏壇金具・仏具金具・
納骨壇金具・寺院金具
の和の錺金具を主に製造している。


 

錺金具・飾り金具製造 株式会社竹内

錺金具・飾り金具製造 株式会社竹内

「つくるものに合わせてつくるもの」

漆のルアーもありましたが、
こちらはどのような工程で生まれたのですか?

20189月、漆塗りしていただくため
長野県塩尻市
旧木曽郡) 北原漆工房さんに足を運びました。
この町は昔、漆が豊富に取れたため漆の町として栄えていました。

職人さんに、漆塗りは可能でしょうか。と木彫りのルアーを見せると
北原さん「私もこのような形のものを塗るのは初めてなので
うまくいくかはわからないですが、
やってみましょう。
通常うつわなどを塗る際は内側に吸盤や木の棒を立て持ち手にするのですが、
ルアーにはそれができないのでそこが問題ですね。この穴はなんですか?
私「重りを入れる穴です。」
北原さん「この穴に木の持ち手をつけましょう
では持ち手をつくるところから始めましょう。」
という流れで木工場に連れていっていただき、
木を旋盤で回し持ち手をつくるところからスタートしました。
(ルアーを削りだすのに似ていた) お話しを伺うと、
漆ぬりに必要な工具はほとんで、ご自身の手作りとのこと、
持ち手から筆までつくるものに合わせて
工具を製作するとこらから始めるそうです。

錺金具・飾り金具製造 株式会社竹内

後日工房を尋ねると、机には釣りの本がたくさん置かれていました。
なぜかと尋ねると「昔はよく釣りをやっていた。
今のルアーの形少しでもわかればと
思って久々に釣具屋に行ってきましたよ
笑)またはじめようかなぁ」 と。
職人と釣りの関係に感動するとともに
職人の勉強熱心さにも深く心をうたれました。

 



北原漆工房

創業53
木工の仕事と漆の仕事は分業でおこなわれるのが通常。
北原漆工房では挽物 ( ろくろ )、指物、 刳物といった
木地作り
( 木工 ) の仕事から漆の仕上げまでの全ての工程を
一貫して自分の手で行い、
自らデザインした作品をかたちにしている。
また 1986年から1987年にかけて行われた、
金閣寺の昭和大修復の際に漆工部主任を務めた。


 

次に、長野県塩尻市旧木曽郡)にて北原さんの提案で、
もう一軒、漆職人をお尋ねさせていただくことになりました。

なんと人間国宝さん。
北原さんも同行してくださり、緊張しながらもルアーをお見せして、
「こちらを塗っていただきたいのですが。」と言いました。

すると、職人巣山さんは「なんでワシがこんな学生さんのおもちゃなんかぬらんなんのずら」 と一言。
そこをなんとかお願いでいないでしょうか。と三時間ほど交渉を続けました。
すると、北原さんのサポートもあり
2つだけなら。という条件で塗っていただけることになりました。

通常の漆塗りが 5~8 回ほど塗り重ねるのに対し、
巣山さんの行う木曽堆朱塗りという技法は、

まず貝殻を貼り、その上に漆を盛りあがるように
10~18 回塗り貝殻が出てくるまで研ぐ。
するとカラフルな模様が浮かび上がるというもの、
漆一層に対し乾燥時間は湿度などにもよりますが
1~2 週間ほどだそうです。
今では巣山さんもご高齢のため、
あまり塗る機会はない中で塗っていただき
本当にありがたい気持ちでいっぱいです。

作業場などを拝見することはできませんでしたが、
自らが現場に足を運ぶことの重要さを感じました。

 


清海屋漆器店

人間国宝 瑞宝単光章 巣山栄三
木曽漆特有の技法「木曽堆朱塗り」などを用い、
下地塗りから、一貫製作している漆工。
新しい色の試作にも取り組み、伝統的な漆黒・朱・茶だけでなく、
5段階に塗り分けてグラデーションを表現する「5色塗り」を考案。
従来にないカラフルな漆器を生み出した。


 

錺金具・飾り金具製造 株式会社竹内

つづく

 

2019.05.01更新