
「岸田繁、初めて三味線を弾く」
京都のアートやクリエイティブ活動の
最新事情を訪ねてみると、
その奥には必ず伝統という財産が
豊かに広がっていたりする。
いわゆる「古きを訪ね新しきを知る」
という視点からではなく、むしろその逆、
新しいものの向こう側にこそ垣間見えてくる
京都の先人たちの、技や知恵。
この対談シリーズでは、
若い職人さんやアーティスト
伝統文化の世界ではない人からの視点も交えた
異色の対談集というかたちで
京都の伝統文化に新しい光を当ててみたい。
(3)_「岸田繁、初めて三味線を弾く」
●岸田さんは民族音楽とか
いろんな楽器とかお好きですよね。
岸田繁:楽器はすごく好きですね。
ギターとかもわりと変えるほうです。
三味線とかいわゆる3本弦のための曲というのは書いたことないですけども、
たとえばオーケストラ楽器で書く曲は、
バイオリンのチューニング、
あるいはわれわれがふだんやるようなギターのチューニングだと、
さっきでいうと真ん中の弦の調整が違うんですね。
4度で並んでたり5度で並んでたりすると指の動かし方が違うので、
そういうときはやっぱり書くのに
ほんま考えて書かなあかんのですけど。
楽器によって気持ちのいい響きっていうのは違うんですよね。
4度のときと5度のときっていうので
だいたいその弦楽器ってわかれていて、
ぼくらは4度の並びに慣れてるんですけど
バイオリンとかはまた違いますよね。
●三味線とかは弾かはるんですか?
岸田繁:三線は持ってるんでたまに弾いてたりはしましたね。
三味線はまださわったことないです。
さわってみていいですか?
野中智史:もう、ぜひぜひ。
三線とほぼほぼ一緒なんですけど全長が長いので、
指の感覚が広いかもしれないです。
野中智史:さすが。やっぱりすぐ鳴らさはりますねー、音。
岸田繁:こんくらいの感じなんですね。
野中智史:そうですね。
三線と比べたら感覚がちょっとずつ広くなっていってるんですね。
●昨年、野中さんも出演された小唄の会で聴かせてもらった時に、
ちょっとバンジョーに響きが似てるなあって言う印象を持ったんです。
なんかブルースみたいやって思って。
野中智史:小唄は爪弾きなのですが、
たしかに皮をパンパンに張った三味線でバチで叩いて弾くと、
バンジョーっぽい感じになるのわかりますね。
岸田繁:ああでも、たしかにさっきおっしゃったみたいに、
思っているより音そんな大きないんですね。
野中智史:そうですね。叩けば出るんですけど。
岸田繁:中指はふつうに使うんですか?
野中智史:使います、使います。
岸田繁:なんか弾いてもらっていいですか?
野中智史:いいですよ。
僕は爪弾く(つまびく)ときもあるんですけど、
結構バチ使っちゃいますね。
岸田繁:あー、なるほど。
バチが大きいっていうのもおもしろいですね。
しゃもじみたいな。
野中智史:これは長唄用のバチで、これ義太夫さん用なんですよ。
大きいズベンベンベンってやつ。
岸田繁:あんまりとんがってへんね。
野中智史:民謡になると鼈甲(べっこう)のバチ使ったり。
用途も変わればバチも変わってきて、いろいろですね。
津軽とかなると早弾きになるんですけど。
岸田繁:いわゆるアップ(下からバチで糸を弾く)のときって
独特ですね。くるっと回すんですね。
●回すっていうのはどういうことですか?
野中智史:こういって、こう。
岸田繁:あぁ!くるっと返すんですね。
野中智史:そうです、そうです。
岸田繁:持ってみてもいいですか?
野中智史:どうぞ、どうぞ。
三本指こうしてもらって、横にかけて、手首グゥッと。
どっちかっていうと半身で胴の皮面が少し見える感じで、
上からペタッと押してる感じですね。
岸田繁:けっこう手が痛いですね。
野中智史:そうですね、最初は。
岸田繁:小指はここに折り込んでおく?
野中智史:そうですね。折り込んどく。
岸田繁:うわぁ、全然できない。小指が出てまう。
これで早いの弾くってすごいですね。うーん、難しい。
ありがとうございます。
野中智史:やっぱり、勘所が掴まれるのが早いですね。
いいところの音だしはりますね。
岸田繁:いやいや。
つづく
2019.05.01更新