どうすればもっと日本の伝統工芸は注目
されますか?

オキサト

伝統工芸について
オキサトさんに
聞きました

Okisato
interview 8

回答
永田 宙郷

質問
ビジュアルコミュニケーション
デザインコース2年 久米香織


Answer
Okisato Nagata

Questioner
Kaori Kume

「伝統工芸って何ですか?」
「職人さんはなぜ減っているのですか?」

京都の職人や伝統工芸のことを学び始めた学生が考える、
ハテナはとても根源的なこと。

そこで、作り手と使い手と伝え手を繋ぐ様々な仕事をされている
プランニングディレクターの永田 宙郷(ナガタ オキサト)さんに
思い切っていろんな質問をしてみることにしました。

学生 Q :

どうすればもっと日本の伝統工芸は注目されますか?(くめちゃん)

くめ

オキサトさん A :

なぜいままで日本の伝統工芸は注目されていなかったかを考えてみましょう。

たしかに伝統工芸はもっと注目されても良い可能性を秘めているように感じますよね。
ぼくもどうすればよいかと悩んでいます。
きっとなにか方法はあるはずです。
はじめに、なぜいままで日本の伝統工芸は注目されていなかったかを考えてみましょう。

本来、道具としての機能をもってる工芸品ですが、
使うことどころか、普段の生活で目にする機会がずいぶんと減りました。
道具としての工芸品の良さや、使いこなす楽しさを実感する機会はほとんどないので注目しようがないと思います。

美術品や素晴らしい造形の品として注目するにしても、
美術館の展示ケースの向こう側に置いてあるものを見ても、
まあ、そのときは凄いなと思えても、
なかなか興味を持ち続けることはできないと思います。

日本ならではの「ものづくり」として関心を持つにも、
歴史は学べてもモノとしての実感や、他のものづくりとの違いを比較して学ぶ機会も、さらにはそれを教えてくれる人に出会うことすら稀少な分野なので、
表面的に把握するのが精一杯になると思います。

なかなか注目されるにも接点が少ないことが分かってきますね。
でも、どうやったら注目されるのかを考えるのが、
この質問への答えですし、ぼくの仕事でもあります。

プランナーとしては、課題の一つ前に立ち戻って、
考えるという手法があるのですが、
今回も同じように注目のひとつ手前の「興味を持つ」というステップをどうすればふやせるのでしょうか?を考え、その結果、注目を得れるようになるという仮説で考えてみたいと思います。

僕たちは普段、まずは、日常でふとしたきっかけで得た僅かな情報を元に、
ぼんやりとした興味をもって知識として学び、その次はyoutubeや出会いが重なれば日本での生活でその他国の文化に触れたときに体験として興味を持ち、
さらには実際に行って、現地の人たちの中でその文化を体験・経験したときに初めて具体的かつ、自分にとって長く注目できたり、関心を持ち続けることのできる対象に代わるんじゃないかと思いますがどうでしょう?
ふむふむ。確かに。ですよね?

だけど、残念ながら最初に道具としての伝統工芸でも書いたように、
現在、ふとした日常で伝統工芸に出会う機会も少ないです。
出会ったとしても多くが日常雑貨として作られているものが多く、
「かわいい~」って以上の話しになりづらいと思います。
入り口になるふとしたきっかけが非常に少ないのです。

であれば、強引な手段ですが、
強いインパクトを持った体験として伝統工芸に触れる機会を増やすのが良いのじゃないかなと僕は思います。
強いインパクトは別に強引な手段でなくても大丈夫です。
印象やコミュニケーションが強ければ良いと思います。
忘れられないほどの体験や印象は、
注目し続けるにも、思い出すにも充分な理由になるはずです。

そんな強いインパクトを持った忘れられないほどの体験や印象は、
どうやったら作れるのか。
意外とそれは簡単です。
作っている現場に行き、本物の職人と一緒に本物の道具でもって、
一度、ものづくり自体に挑んでみることです。

僕は、これまでいろんな産地と工房を巡りました。
その中で、何を思い出すか、何が語りやすいかと考え直すと、
自分自身がものづくりに参加したことがあるものについてです。

実際に、本当の現場でものづくりを体験するだけで、
どんな風に伝え続けられてきたのか、
何が難しいのか、どこにこだわりがあるのか、
多くの事を一気に感じることができます。
まさに「百聞は一見に如かず」です。
また職人の現場には比べてみることができるほどに、
いっぱいの在庫や仕上がりの違うものがあります。
例えば和紙だとしても、比べて僅かながらも違いに気付きだすと、
一気にそのバリエーションの多さが視界に入ってきます。

ただ、意外かつ残念なことに、
本物の現場で本物の道具で本物のものづくりを体験する機会の少ない理由は、
それが『職人たちのとって日常』だからなのです。
僕らが興味を持ったり、特別なものだと感じるとは露とも思っていないのです。

かつては違いましたが、どこにどんな伝統工芸があるかネットで検索すればすぐに出て来ますし、連絡先も調べることができます。
それに、なにより以前と違って今は、取引先でなくとも職人は技を見せてくれますし、工房も見学させてくれます。
それどころか、積極的に見学プログラムをちゃんと作り始めている産地も増えていますが、
それでも、職人の中で、「自分たちの日常=興味を持ってもらえること」と意識している人は少ないです。

旅行会社のツアーコーディネーターも、
これまで「観光」というコンセプトで、風光明媚な場所を巡り、豪華な料理と綺麗な宿を準備して、
ストレス無く汚れなくい旅を商品として作ってきたので、
販売する傾向がまだまだ強いです。
地域のものづくりとの繋がりは非常に少ないです。

現在、少しずつ、お客さんの個人的な好みを反映できる「体験」を重視した旅行も作り始めていますが、
急ごしらえの関係性や予備知識では、なかなかツアーを企画するにも難しく、なかなかプログラムが増えない状態で、
体験工房を作ったのに集客がないという伝統工芸産地とのすれ違いも多く見られます。

これから、伝統工芸の特徴をしっかりと把握した上で、
各地の作り手と繋がりながら、体験プログラムやツアーを考えることのできるプロデューサーやツアーコーディネーターは必要かつ重要な仕事になっていくはずです。
リアルな職人との繋がりや、ものづくりのアドベンチャーやエンターテーメントとしての可能性を堀深めていく必要があるので、
人工知能に置き換わる仕事でもありません。
もし在学中とか卒業後に友だちとベンチャーを立ち上げるなら、
体験を軸に工芸に注目を集め直す仕事もオススメですよ!

オキサトさん

 

2019.06.01更新