京都学
レポート
7

山本合金製作所
山本晃久さんによる京都学

Kyotostudy Report #7
Yamamoto Alloy Factory
Akihisa Yamamoto

by Takenouchi Haruka
  Mizobe Chihana
  Suzuki Hinae
 

山本合金製作所
山本晃久

空間デザインコース3年 竹之内春花
空間デザインコース3年 溝部千花
基礎美術コース3年 鈴木日奈惠

京都学レポート7

ゲスト 和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

担当は文筆家・工芸ジャーナリストの米原有二先生と、
空間演出デザイン学科准教授・デザイナーの酒井洋輔先生です。

この授業では、毎回異なる職人さんがゲストとしてお越しくださり、
京都が育んだ手仕事とその粋、
京都のことや日本のことなどを教えていただきます。

京都の工芸には、日本の工芸と違って
ものづくりが他の文化と連動し、
繋がっているという特異点があります。

京都に住む70人に1人が伝統産業に携わりながら
生活しているこの京都という地で、
私たちはそんな京都の伝統について学んでいます。

そして、学生がそれぞれ授業を受けて考えた新しいアイデア(イノベーション)を
レポートとして提出してもらっています。

 

今日の職人さんは、和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さんです。
かつて日本に存在した隠れキリシタンの信仰心を支えてきた特別な「鏡」を作る山本合金製作所。
あまり知られていない銅鏡の制作工程や、
山本合金製作所の歴史から学んだ伝統工芸を守っていく術、
山本さんが考える職人の姿について教えてくださいました。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん  和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

 

“世界でただ1つの銅鏡製作所”

山本晃久さんは京都 梅小路公園の近くに工房を持つ、
山本合金製作所の5代目となります。
和鏡・魔鏡師と呼ばれるこの職人さんは、現在世界で山本合金製作所の職人さんのみです。
この「鏡師」の仕事は、神社の拝殿に飾られている前たて鏡や、ご神体となる丸い鏡であるご神鏡の制作や直し、
博物館所蔵の鏡の復元などがあるそうです。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

また、山本さんが作られている鏡は、
私たちがよく知っているガラス鏡とは異なります。
青銅や白銅で作られている銅鏡という鏡です。
重さもとても重く、形は丸かったり、鏡背に文様が彫られたりしています。
銅なので、酸化して緑に変色もしていきます。
そんな古い鏡の傷やへこみなどの修復も山本合金製作所では行われています。
傷のある部分にさらに穴を開け、銅玉を入れて、カシメた(金槌で叩くこと)後、それがわからなくなるまで削り磨いて修復します。
なので使えば使うほど、修復すればするほど銅鏡は薄く育っていきます。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

 

”古いものは古いままでいい”

この銅鏡は中国大陸から伝わってきたとされているそうです。
弥生時代から古墳時代の遺跡で多くの銅鏡が発掘されています。
その後日本で銅鏡は独自の発展をとげ、「和鏡」と呼ばれる銅鏡が誕生しました。

また、この「和鏡」は時代によって様々な形態に変化してきたそうで、
中心に紐が通されたものなどもあったと見せてくださいました。
その形態変化に伴って、作り方も異なってきました。
奈良時代の頃は、蝋型鋳造法という粘土と蝋で作った型に銅を流し込み、
冷却させる製法で作られていました。
平安時代の頃には、真土(まね)型鋳造法という製法で、
これは川砂に粘土を混ぜ700℃から800℃で素焼きしたものものを砕いて、
直接文様を描いた物を鋳型とし、その型に銅を流し込んで作る方法です。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

室町時代の頃には、手鏡としての和鏡(柄付きの和鏡)が作られるようになったそうです。
また、安土桃山時代には鏡背に鏡師の名前を入れたりと、
職人たちのよるオリジナルが生まれていきました。
江戸時代には鏡師は手鏡を作る職人として大変需要が高まり、
丸型の和鏡はご神鏡などといった特別なものにのみ使われるようになりました。

その一方で手鏡は婚礼道具として用いられるようになっていき、
これまでは自然物を描いていた鏡背の文様は、
長寿や子孫繁栄を願うものばかりになっていきました。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

「一家に一鏡」このようにすっかり産業と化した和鏡は
大量生産されるようになっていきましたが、
そんな最中ガラス鏡が伝来し、日用品として世間に普及していきました。
その影響により、だんだんと金属鏡師の仕事が減ってきたのが約150年前。
その時代に山本合金製作所はできたそうです。

「銅鏡は明治期に歴史を閉じた」と言われる中で、
日用品ではない、レベルの高い鏡を作り続けてきたことで山本合金製作所は残ってくることができたのだと山本さんはおっしゃっていました。
そこには伝統と創造の両立や、伝統的な形、
そして想いを大事にしてきた山本合金製作所の形があります。

現在では山本さんはアーティストの方々と和鏡・魔鏡を展示するインスタレーションや
ワークショップの開催なども活発に行っておられます。
今の人々にどのように伝統工芸を伝え、
知ってもらうかを常に模索されているのだと感じました。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

(実際に行われたインスタレーションの様子)  

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

(実際に行われたワークショップの様子)

また形や製法、想いなど守るべきことと、
そこにどのようにして3Dプリンターやクラウドファンディングなど
新しい仕組みを取り入れていくかという問題にも
真摯に向き合われているのだということがお話からも伝わってきました。

作家にはならない。
職人として開きすぎず、閉じすぎず関わっていくことを大切にしてこられたそうで
「職人はただモノを作る人ではない。ブームや時代に流されない。同じ物でも時代に合わせて見立てを変えていけば、新しく感じさせることができるのです。」
と教えてくださいました。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

(山本さんが和鏡・魔鏡の製作で使われている道具)

 

“信仰を支えた鏡”

また、和鏡には「魔鏡」と呼ばれる種類の鏡があります。
半世紀途絶えていた魔鏡を作る技術を復活させたのも
山本合金製作所の3代目です。
文様の彫られた3から4mmの厚みの鏡を、
その後上から1mmくらいの厚さになるまで約1ヶ月かけて削り続けます。
彫られた文様を極限まで薄く削られたその鏡は、
一見するとなめらかな普通の銅鏡にしか見えません。
ですがそこにわずかな凹凸が残り、
光を当て乱反射(光線が表面のなめらかでない物体に当たって様々な方向に反射すること)が起こると隠された文様が浮かび上がります。
これを「魔鏡現象」と呼ぶそうです。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

この魔鏡はかつて、隠れキリシタンによって使われていました。
織田信長、豊臣秀吉下でキリスト教が弾圧され、
禁教令が出されていた時代、
隠れキリシタンらはこの魔鏡をこっそりと所持していました。
これに太陽の光が注ぐ時間だけ、
鏡の反対側の壁や床などにマリア様が姿を現し、拝むことができたと言います。
誤魔化すために、鏡背には日本的な松や鶴が描かれた魔鏡が作られていたそうです。
彫った文様がどのように浮かび上がるかを想像しながら、
1ヶ月という長い時間をかけて削っていくというこの地道な工程から生まれる「魔鏡」が
人々の信仰心を支える役割を担ってきました。

そのような歴史の背景と、信仰心を守った人々。
そして魔鏡師がいて生みだされた特別な鏡を
山本さんは今でも守っておられます。

和鏡・魔鏡師 山本合金製作所 山本晃久さん

(実際の魔鏡の鏡背)

 

  • ちはなの感想

“魔鏡”
名前を聞くだけで、どのような鏡なのかとてもワクワクします。
実際に授業の中で、光で写し出される文様を見ることができ、
鳥肌が立ちました。

現在、美術館や展覧会、献上品としての需要が多い魔鏡だそうですが
隠れキリシタンとの深い関わりや、寺社仏閣の和鏡の修復など
日本独自の文化があったからこそ残った技術だということに驚きました。

金属を鋳造したものを極限まで薄く研ぐ作業工程のビデオを見て、
お話を聞く度に気が遠くなりそうです。

5代目である山本晃久さんは、
技術の習得だけでなく「伝統工芸のプレゼン」をどのようにするかを考え、
アーティストやデザイナーの方とのコラボなどで実践されていて
その姿勢にとても惹かれました。

昔に比べ、(注目されつつありますが)
伝統工芸が日常生活から少し遠のいている今、職人さんと消費者との距離があり、
私たちの知らない伝統工芸がいくつもあると思います。
まず見てもらい、知ってもらう。
そのためには職人さん自らが一歩外にでることが重要であるのかもしれないと
今回の授業を受けて思いました。

作る人と受け取る人が繋がる機会、場所を
これから作っていきたいです。

 

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

学生のアイデア

・魔鏡クッキー
柄が綺麗だと思った。
粘土の方が1つ1つ壊されてしまうのが寂しいので、クッキーにしてみた。
他のお菓子の型や、お皿として使っても面白そう。
鏡面は関係なくなってしまったが、また別の日用品に展開できないか考えた。
Idea:堀田千咲野

 

学生のアイデア

・魔鏡コスメ
コスメにお金をかける女性は世の中に結構いる。
実際に肌につけるもの(化粧水、ファンデーション、口紅など)はもちろん、
鏡や筆、パフなどにもこだわっている人はたくさんいる。
今は、実際に人から見た自分に一番近い色や見え方が
自分でできる鏡なんかもある。
和鏡もコスメ用に9cmくらいの小さな手鏡で、
裏面の模様を女性が好みそうな花や動物の模様にして
売り出してみてはどうかなと思った。
Idea:藤谷綾音

 

学生のアイデア

・スタンプラリー × 神社
各神社に奉納されている鏡をメインに、色々な場所を巡ってもらえる
スタンプラリーの企画。
地元の人以外にも京都を観光しに来た人、外国人の人にも親しんでもらいやすい。
Idea:石田花鈴

 

2019.06.01更新