京都文化
トリハダ通信

京都文化トリハダ通信 4

「花をすることは生きることそのもの」
学生による いけ花授業レポート(5)
〈茶室空間プロデュース編〉

Kyoto Art class
Report 4
“Ikebana”
Text by by Suzuki Hinae

学生による いけ花授業レポート
基礎美術コース 3 年
鈴木 日奈惠

(5)_変わらない理由

さて、
準備ができたら、自分たちで花をいけていきます。

まず、花をいけ始める前に、軽く一礼し、心を整えます。

たて花は、
「真」、「そえ草」、「した草」又は「真」、「した草」で構成します。
真の高さは、花瓶の1丈か1丈半(現代は2丈、2丈半)。

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  • 椿昇先生のコメント

    せっかく書習っているし和本も作れるんだから、
    家では画帳に墨にしてみれば?

 

真は必ず込藁の中心。
今回は、とってきたススキをしんにすることにしました。

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お花をたてる時は、中心から外側へ広がるように、
出来るだけ手早くいけます。

私はまだまだ全然手早くできません。すぐに迷ってしまいます。
なんでもそうですが、足していくのは簡単で、引いていくのは難しいです。
私はついつい欲張ってたくさん花を持ってきて、たくさん生けようとしてしまいがちになります。

  • 椿昇先生のコメント

    ただ引くだけでは貧しくなるだけだからね〜そこが難しい。
    ニューヨーク研修のDia Beaconで見たロバート・ライマンを思い出すべし。

 

そんな時は、勇気を出して引くということも考えます。

見どころである水際に小さいお花を挿してみたり、
花が下を向いていたら、上に向けてあげてみたり。

こうして色々考えて、花をいけることができたら、先生に手直しをしていただきます。
手直しをしていただいたら、最後の仕上げ。

花瓶の水中に花屑が浮いていないか、花台の中心に花瓶があるか、
花瓶の正面が動いていないかを再度確認します。

そして、花水差しで花瓶に水を注ぎたし、真上から露打ちという道具で軽く露を打ちます。
この「露」を打つことで、その花が生き生きと、キラキラと輝きます。
この露うちは、その花への敬意の表れでもあるのです。

  • 椿昇先生のコメント

    カキツバタを見に行ったときの里芋の葉に光っていた露を思い出していましたか?

 

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最後に一礼して、納めます。

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花をたて終わった人から、珠寳先生に手直しをしてもらい、
手直しをしてもらった人から、各自花を上げていきます。

 

最後まで美しく

〈花を上げる〉

花を片付けることを「上げ花」といいます。
これも、適当に片付けるのではなく、きちんとしたルールがあります。

まず、花瓶から水を抜きます。

チューブとばけつを用意して、花瓶よりバケツが下になるようにします。
チューブの先を水に入れて、もう片方を口でくわえます。
少し吸ったら、口からチューブを取り出しバケツに移します。
そうすると、上から下に水が流れて、自然と花瓶から水を抜くことができるのです。

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  • 椿昇先生のコメント

    素朴な疑問・・・室町時代はどうしてたんだろ??
    実は伝統は常に細かな手直しがあって
    こそ現代まで生き延びたのであって、
    そのままではとっくに滅んでしまっています。
    チューブを見ながら生き残るって何だろうと思っていました。

 

水を吸わないようにしても、大体口の中に水が入ってしまうのですが
「汚い」や「気持ち悪い」とは感じません。

それは、使っている水は神社の境内にある水で
花留めに使っているものも、自然のものだから。

改めて、花をすることは体に良いことなのだと感じさせられました。

 

  • 椿昇先生のコメント

    喉に水が入るというのは希なので、
    これをもって身体に良いわけではないよ(^^)

 

水がある程度抜けたら、花を上げていきます。
花を生けたときと逆の順番で逆再生をするように上げます。

なので、手前下草からひとつひとつ上げて、
最後に真を上げます。

生けたお花は、弱らないように工夫して持ち帰り、お家でも飾ってあげます。
お花のある生活は、私たちの心を癒し、優しく、豊かにしてくれます。
そんなところも、私がお花を好きな理由です。

  • 椿昇先生のコメント

    きみたちの下宿の空き瓶に毎日欠かさず山野草が立てられていると、
    この稽古が良い結果を生んでいるという事になります。
    禅もそうですが毎日の暮らしを替えられなければ
    役目を果たしているとは言い難い。
    お稽古の場だけがちゃんとできて
    下宿は散らかりっぱなしという事は無いよね??

 

〈道具の手入れ〉

使った道具たちも、手入れをしっかりとします。
良いものを作る人は、必ず道具の手入れは怠りません。

使ったコミ藁は、よく水洗いして小束の状態に戻し、天日干し。
そうすると何回も使えます。

濡れたまま放置するとカビが生えるので注意。

花瓶は内と外をよくふいて水気を取り除きます。

刃物は、椿油などの油を薄くひいてしまいます。
花アク(花を切っていると刃物につく黒い汚れ)が付いているときは、と草や藁でこすってアクをとります。

この時も、化学薬品や身体に害のあるものは、一切使用していません。
全て自然のものでできてしまうのが、このいけ花の凄いところ。

花はいけて終わりではなく、
その後も生き続けるものです。
花も生きていることを、私たちは忘れてはいけないと思いました。

さらに私たちは、お花の稽古と並行して、
竹花入の製作、茶室空間の構想も引き続きしていきます。

 

Sクラス

~番外編~

授業外でも、珠寳先生のお稽古を受けることができるクラスがあります。
先生は、「青蓮舎(せいれんしゃ)」という団体を持っておられて、
そこの生徒さんたちのお稽古に私たちも混ぜていただいています。

その名も「Sクラス」。

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この稽古は月に1回、基礎美術コースは志望した人のみ参加しています。

  • 椿昇先生のコメント

    受け身から自主的に動けるようになれば稽古はどんどん進みます。
    Sクラスに入れていただけるのはほんとうにありがたいことです。

 

10月のお稽古は、白菊を使ったお稽古。
それも、真から下草まで、全て菊です。
さらにいける順番も決まっているものでした。

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この白菊の花は、格の高いお花です。
現在はお供えとしてのイメージが強いと思いますが、
昔はお祝いの花としても使われていたそうです。

まず、真に使う菊は、まっすぐ締まって力のあるもの。
曲線があるものは脇におきます。

次に、右の方に2本、左の方に2本いけ、全部で5本の菊になります。

この時、前後に花を開いて、風通しを良くしてあげると
動きが出てきます。
そして注意しなくてはいけないのが、花瓶の口の内側に収めること。
なので口が大きい花瓶を使うとダイナミックになります。

横から見て、花の頂点が弧を描くようになります。

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終わったら、先生に手直しをしていただき、最後に床の間に飾ります。
それは、いけ花はその花だけではなく、空間を含めたものだからです。

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花をいける時は、目の前だけでなくあちこちに目をつけ、
空間全体を想像しながらしなくてはいけません。

これも稽古の積み重ねで、知らず知らずのうちにできてくると言います。
広い視野が手に入るのは、いつになるのか。
私たちは積み重ねて積み重ねて、自分の世界が変わる日を待ち続けます。

  • 椿昇先生のコメント

    実に力強い!みなぎる生気が空間を揺らしていますね。

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変わらない理由

そのほかにも、いけ花には色々なルールがありますが、
それは、400年前頃から変わっていません。
なぜ変わっていないのか?

さらに日本は中国から技術を取り入れて、日本独自の文化に発展させてきました。
かな文字、陶磁器、装飾など。
日本が持つ規則性は、なぜあるのか?

私たちは常に自問自答の繰り返しを行わざるを得なくなります。
珠寳先生は、お稽古中は質問がない限りあまり私たちのすることに口は出しません。
終わってから、ここはこうした方が面白い、ここはこうしてはダメ、などの
ご指導をしてくださいます。

そのほうが、私たちにとってもより力が身につきます。
言葉で説明してから体を動かすより、
体を動かして、疑問が生まれて、失敗して、先生に直してもらって、また体を動かして、
の繰り返しが少しずつ私たちの中に溜まっていきます。

  • 椿昇先生のコメント

    与えられすぎると向学心は怠惰になってしまいます。
    いままで与えられる事に慣れすぎた脳を身体から揺さぶっていきましょう。

 

日本に生まれたからには、日本人として恥ずかしくない生き方をしたいと思うのです。
でも、良く考えてみると、自分ってどれほど日本を知っているのだろう?
外国の方とお話していると、自分の国のことを話せないのが悔しくなるばかりです。
だから、私は基礎美術コースに入りました。

基礎美術コースの基礎は、日本美術の基礎です。

  • 椿昇先生のコメント

    日本文化基礎コースというのが内容に忠実ですね。
    NYに行ったのも世界から日本を見るという経験がどうしても必要だったからです。
    日本の良さは世界に出て初めて実感します。
    サッカーの中田ヒデさんが、いま日本の工芸やお酒の魅力を世界に伝える活動をしています。いつか来てもらいたいですね。

つづく

 

2019.06.15更新