「Halleとの共同研究」

Halleとの糸の共同研究レポート

ドイツの芸術大学
Halleとの共同研究(2)

Burg Giebichenstein University
of Art and Design Halle

Haruka Takenouchi

ドイツの芸術大学
Halleとの共同研究
空間デザインコース 3年
竹之内 春花

糸の共同研究レポート(2)

2019年5月ドイツにある芸術大学Burg Giebichenstein University of Art and Design Halle(ハレ)の学生が京都にやって来ました。

京都造形芸術大学の空間演出デザイン学科2回生・3回生の授業にて、共同で「糸」について研究するためです。

ハレからは13人の学生とHans Stofer(ハンス)先生、Melanie Isverding(メラニン)先生、Iris Dankemeyer(イリス)先生という3人の先生。そして通訳さんに加えてロンドンの芸術大学 Royal College of Art(RCA)からスペシャルゲスト、

センター長の酒井先生の友人でもあるDavid Roux-Fouillet(デイビッド)先生が来日しました。

 

(2)_ 職人訪問

Day3
リサーチ初日はハレの学生たちと数名の日本の学生で西陣織の職人さんの元を訪問しました。
株式会社 細尾」さんです。京都造形芸術大学の京都学という授業で講師として来ていただいたこともある職人さんです。
そのままの形を継承していくことだけが「守る」ことではないと私は細尾さんから教えていただき
「伝統を守り続ける」とは何かを見据えておられる職人さん方だと私は感じています。

まず私たちは立派な中庭のある広い部屋に通していただき、社員さんから細尾さんの歴史や西陣織について流暢な英語で説明がありました。
西陣織といった京都の工芸の多くは分業制で行われているという仕組みもとても新鮮だったようで、ハレの学生は終始興味深く話を聞いていました。

糸の共同研究レポート

Halleとの糸の共同研究レポート

箔糸(金糸とも呼ばれる。和紙に金箔を貼って細かく裁断した糸)という西陣織に織り込まれている糸の素材や製造方法など、ハレの学生からいくつか質問があった後、織機のある工房へと案内してくださいました。
西陣織は通常着物の帯に使われます。
なので織機の幅も普通は30cmほどしかありませんが、この細尾さんでは150cmもの幅の西陣織を織ることができる織機があります。
壁紙として使うことのできるような西陣織を制作し、
「Christian Dior」や「CHANEL」などのブランドの内装用に提供されています。(詳しくは授業アーカイブの京都学レポート5をご覧ください)

工房にはとても大きな織機がいくつも稼働していました。
あまり広い部屋ではありませんでしたが、たくさんの織機とそれを目視で正しく織れているかチェックしている職人さんが1台につき1人ついておられました。
また、細尾さんの工房は展示場も設けられています。
2階は西陣織で作られたソファなどの家具や作品がディスプレイされ、
金網辻さんのランプシェードや開化堂さんの茶筒など他の職人さんの作品も飾られていました。

細尾さんの西陣のデザインには伝統の中にモダンさも感じます。
オシャレなハレの学生たちも、たくさんの西陣織を自分の作品のために購入していました。

Halleとの糸の共同研究レポート

Halleとの糸の共同研究レポート

Halleとの糸の共同研究レポート

2軒目に訪問したのは「田端絞り」さんです。
絞り染めの職人さんで、板締め雪花絞りという長らく誰もその技法を伝える職人さんがいなくなっていたのを復刻させた職人さんです。
京都の伝統的な技法である鹿の子絞りや桶に挟んで桶から出ている部分を染める桶絞りなども映像を交えて教えてくださいました。

Halleとの糸の共同研究レポート

板締め雪花絞りについては実践も見せてくださり、一瞬のうちに染まっていく布に学生たちは釘付けでした。
田端さんが使われている染料は化学染料ですが、「その染料は自然のものですか?」といった質問も出ました。
ハレの学生はとてもナチュラル志向です。1人の学生が私にくれた飴も「Bio」と書いてありました。

また田端さんの面白いところは、いわゆる工房ではなく一見すると普通の住宅の中に工房が隠れていることです。
出迎えてくださったのは奥様やお子さんでした。
また本大学である京都造形芸術大学の染織を学ぶ学生もいて、ここで週に何度か田端さんに付いてその技を学ばせていただいているようでした。

Halleとの糸の共同研究レポート

Halleとの糸の共同研究レポート

3軒目は帆布の老舗「一澤信三郎帆布」さんです。
工房のすぐ近くにある店舗を見せていただき、その後制作している工房へ案内していただきました。

工房に入るとたくさんの職人さんが丸太の上で作業されていました。
丸太のサイドに必要な道具を吊り下げて、基本的には1人が1つの種類の帆布カバンを制作していくそうです。
いくつかの持ち手を作ったら、次のパーツをいくつか作る。というようにパーツごとに制作時間を分けているそうです。他の職人さんのように分業制という体制ではないことが新鮮でした。

また、オフィスのような空間なのに、丸太の上で黙々と何人もの職人さんが作業されている不思議な空間でした。
職人さんたちに何でも質問していいよと案内してくださった方はおっしゃってくださいましたが、ハレの学生たちは職人さんへのリスペクトがすごいので、邪魔になってはいけないと気を遣っているようでした。
(信三郎さんの工房内は企業秘密のため写真なし)

職人訪問が終わり、時間も夕方になっていました。
とても暑い日で体調が悪くなる学生もいましたが、職人さんや伝統工芸にみんな興味津々でとても楽しそうにしていました。
その後は解散し、グループでのミーティングへと向かって行きました。
私もペアのSunhi(スニ)さんはコーヒーが好きだと言っていたのでバスに乗り込み、私の好きなイノダコーヒへ向かいました。
そこで初めて、お互いのことや「糸」について話すことができました。

Halleとの糸の共同研究レポート

まず、お互いの日頃の制作について話をしました。ハレの学生の中には、ジュエリーを作っている学生が多くいました。
スニさんも元々ジュエリーを作っていて、韓国とドイツのハーフです。ですが現在は新しいジャンルの制作にもチャレンジしていて、紙を作っていると教えてくれました。
紙幣の光を透かすと人が浮かび上がる仕組みと同じ方法で、糸が浮かび上がる紙を作っていると言っていました。

ですがまだ納得のいく仕上がりではないらしく、未熟のプロジェクトなので「写真はまだ見せたくない~!」と笑っていました。とてもキュートな人です。

お互いが思う「糸」の話もしました。
私は「糸は何かと何かを繋ぐものだと思う。」と話すと、スニさんは「ジュエリーだと思う。宝石を繋いだり、宝石と私たちの体を繋いだりする。
それは物理的な繋ぐだけでなくて、私たちの内面と宝石(ジュエリー)をつないでいると思う。」

世界で初めて発見されたジュエリーは貝殻とそれを繋ぐ糸でした。
それは着飾るだけでなくて、お守りとして生まれています。
大切な心臓を守るために人々は胸元にジュエリーをつけました。
頭に飾りを乗せたり、首回りを花で飾ったりする民族のスタイルなども「お守り」という概念から生まれています。
「お守りとして私たちはジュエリーを身につける。それは私たちの内面とジュエリーが繋がっているということだと思う。」とスニさん。

私はそれを聞いて、「守る」という概念は「他」が存在し、それを意識しているからだなと感じました。
「守る」とは跳ね返す事だけではないと思います。
その人なりの「他」の受け入れ方だろうなと思います。

だから糸とは、宝石を体につなぎとめるジュエリーでもあり、またその時そこには「自身」と「他」を繋ぐ見えない糸も生まれているんだ。
ということに私たちは気づきました。

つづく

 

2019.07.01更新