京都学
レポート
9

唐紙師 唐長
千田堅吉さんによる京都学

Kyotostudy Report #9
Chinese paper craftsman
Senda Kenkichi

by Takenouchi Haruka
  Mizobe Chihana
  Suzuki Hinae
 
唐紙師
千田堅吉

空間デザインコース3年 竹之内春花
空間デザインコース3年 溝部千花
基礎美術コース3年 鈴木日奈惠

京都学レポート9

ゲスト 唐紙師 唐長 千田堅吉さん

担当は文筆家・工芸ジャーナリストの米原有二先生と、
空間演出デザイン学科准教授・デザイナーの酒井洋輔先生です。

この授業では、毎回異なる職人さんがゲストとしてお越しくださり、
京都が育んだ手仕事とその粋、
京都のことや日本のことなどを教えていただきます。

京都の工芸には、日本の工芸と違って
ものづくりが他の文化と連動し、
繋がっているという特異点があります。

京都に住む70人に1人が伝統産業に携わりながら
生活しているこの京都という地で、
私たちはそんな京都の伝統について学んでいます。

そして、学生がそれぞれ授業を受けて考えた新しいアイデア(イノベーション)を
レポートとして提出してもらっています。

 

今日の職人さんは、唐紙師 唐長11代目の千田堅吉さんです。
機械ではなく、手で作ることで生まれる、ゆらぎ。人だからこそ、作れるもの。
唐紙という暮らしに寄り添うものだからこそ、移ろいゆくものの美しさが詰まっていました。

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

“「唐」はイノベーティブという意味”

唐紙とは、唐(中国)から伝来し、版木に掘られた文様を染めた紙に手で摺って作られる紙です。
その版木の文様は400年前に掘られたもので、ずっと変わらずに守り続けておられるそうです。

また、その文様は日本独自のものです。
唐から日本に様々なものが入って来た中で、唐紙も伝わりました。
「唐はその当時の最先端だった。やから唐という字にはイノベーティブなもの、という意味がある。」
唐紙自体には千年の歴史があると言います。
日本に伝わってからは、日本独自の文化として育くまれてきました。

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

“文様には力が潜んでいる”

古代から自然界のシンボルが文様に込められていました。
全部で650種類もの文様が存在するそうです。

日本では、四季の植物や雲、風、日差しなどの自然物が文様にされて来ました。
そこから作られた唐紙が、襖やついたてなど「暮らし」に息づき、愛されて来たのだと千田さんは話してくださいました。
また、暮らしの中でそこに差し込む光の移ろいで唐紙の文様は輝きます。

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

400年前から、唐紙の技法は変わっていません。
千田さんは唐紙を作る際に、絵の具を作る・紙を染める・摺るという全ての工程を手作業で行っておられます。

絵の具にはまず牡蠣の粉を細かく砕いて、白(地色)を作ります。
文様のための下地、化粧をするような感覚です。
これは「きら(雲母)」といいます。

この「きら」と赤・黄・青の3色で全ての色を作ります。
光と陰の美しさはこの「きら」が叶えているのです。

版木には「ふるい」という道具で色をのせます。
ガーゼを貼っただけのとてもシンプルな道具ですが、これは100年くらいは傷まない、とおっしゃっていました。

室町時代からこの道具で絵の具が版木にのせられています。
余分な絵の具がつかない最適な道具・方法なのだそうです。

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

また、版木の大きさは変えられません。
なので版木よりも大きいものに摺る場合は、版木の文様を合わせてついでいきます。
不思議なことは、それで文様が全てつながっていくようになっていることです。そのようなことも考えて版木は作られています。

また、摺る時に色が均等になるようにしなければいけません。
唐紙には絵の具に糊も混ぜているので色が剥がれにくいという良さがある反面、摺る時に水分が少なくてかすれやすいという問題があります。
その日の湿度や温度によっても変わってしまう条件がたくさんあります。

ですが、そのようなことは機械で行えばとても簡単にできてしまいます。
それでも千田さんは、ほとんど直感に近い職人の勘で水を混ぜ、色をのせていきます。ここに技が必要なのです。その感覚をつかむためにも、心の積み重ねが必要なのです。
「機械は簡単に、綺麗に仕上げることができるけど感じることはできない。」

 

“京都の色は、唐長の色”

千田さんご夫婦は、いつも季節を感じるためお二人でお散歩に行かれるそうです。
「自然がお手本。自然から色のヒントを得ています。」

桜を摺る時でも、白と赤だけでなく青や黄をのせたりするそうです。
これらは立体感を出すためと、お二人が肌で感じている「季節や自然の揺らぎ」からです。感じているからこそ作ることのできる奥深さがあります。
ピンクでもなく、白でもない。これが京都の色なのです。

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

唐紙の文様には、紅葉や天平大雲、夏の輝き、秋の日差し、晩秋の光、光琳大波などがあります。

唐紙の本当の美しさは、光が当たることで見えてきます。
「唐紙には季節の日差しが潜んでいる。」

唐紙師 唐長11代目千田堅吉さん

 

  • はるかの感想

人が手で作ることと、機械で作ることの違いを私自身はっきりとわかっているわけではありませんでした。もちろん機械で作ることも必要で、人が手で作ってきた背景があって機械が生まれていて。
機械化したことで守られた工芸もあったと思います。

ですがこの唐紙においては、手で作られていることの大切さや尊さを深く感じました。それは千田さんご夫婦の唐紙作りにおける想いや、姿勢を感じたからだと思います。

自然を手本に移ろいゆく美しさなど、人だからこそ感じられるものを大切にして作っておられるのだということが何より感動しました。
そしてそれを大切にしてこそ、人が手で作っている尊さがあるのだと教えていただきました。
感じられること自体にも素晴らしく価値があって、またそれを表現することができる技術にも価値がある。

千田さんのおっしゃる通り、技も大切だけど、そもそも心を重ねていくことがまず大切なのだと理解しました。
職人さんの方々のお話を聞いて思うことは、日常、日々から、心のあり方から作っておられるということです。
そのような、職人さんとしてというか人としての精神性も、私が職人さんをすごく尊敬していてかっこいいと思うところです。
私もそのように心を重ねていきたいです。

 

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

・唐長文様ベルト
400年間守り続けられている文様を、ファッションに落とし込む。
雲母が光によってキラキラ輝くというお話があったので、
外でも身につけられるもので考えた。
太陽の光でキラキラ輝くことで、ベルトがさりげなく主張するファッションに。
Idea:鈴木日奈惠

 

・今回の授業を受けて、学生が考えたアイデアを少しだけご紹介

・季節から色を採るワークショップ
春の木漏れ日、夏のきらめき、秋の色あざやかな景色、冬の静かな朝日。
そんな日常から切り取った、季節の色が唐長の色になっていると
おっしゃっていたのが、とても素敵だと思った。
なので、まず近所を散歩して、自然の中から好きな色を見つけ出し、
その色を作って好きなところに刷るワークショップをしたら楽しそう。
Idea:岸直輝

 

2019.08.01更新