Innovation Works
2

自分の価値観でものをみること、選ぶこと
「mingei+◯」について
お話を伺いました。(2)

Innovation Works
interview 2

mingei+◯
Kono Hikaru

河野ひかる

「イノベーション」とは、
新しいものを生産する、
あるいは既存のものを新しい方法で生産することであり、

生産とはものや力を結合することと定義される
(『経済発展の理論』Schumpeter)

本研究センターでは、
伝統文化におけるイノベーションの創造を目指すと共に、
イノベーションを起こしている
様々なクリエイター
/ 企画者を取材することにより、
発想やきっかけが生まれた物語を記録、発信していきます。

「民藝」を考えることで、
「自分の価値観でものを選ぶこと」へ向かっていく。
ワークショップを行うことを通して、
参加者と共にご自身も考え方を育んでおられます。
京都造形芸術大学 歴史遺産学科卒、また大学院の卒業生
河野ひかるさんにお話を聞きました。

 

「親は子供に体験を。若い人には接点を。」

ー「伝える人」として活動をされてこられたんですね。特にミレニアル世代に着目されているのはなぜですか。

そうですね。先ほどお話したように今の私たちの世代って、ばんばん良いものって買えないじゃないですか。お金もないし。

だけど歳をとって40代とか50代とかになった時に、ものを買う選択肢の1つにそれあがるか、あがらないかって、割と長い目で見た時に変わってくるんじゃないかなって思っていて。

消費者を育てるって言ったら上から目線で嫌なんですけど、消費者と一緒に考えるっていうか。そういうことがしたくて「民藝」と「ミレニアル世代」をテーマにしていました

ものに対して、長く使えるってことだったり愛着を持てるってすごい大切だけど、私はそれが伝統工芸だから良いっていうよりは、自分が持つもの1つ1つに本当は意味を持ったりとか、ちゃんと良いって思って選んで、買ったものに囲まれて生活してる方が良いと思うから。

大学院生になると、周りはほぼ就職してるんですよね。で、ものを作ってた子、絵を描いてた子たちがいろんな理由から作れなくなっちゃったりして。

私、あの大学に6年間通って、2人だけ「この子は絶対に作る星の元に生まれた子や」って思った子がいて。才能があるとかそういうのを超えた作る子だなと思った子がいたんです。

でもそのうちの1人の子は就職して。就職するとやっぱり自分の生活を作ることがまず第一になってくるから、ものを作ることがなかなかできなくなったりとか。

もう1人の子は院生だったけど、その子も卒業してすぐアーティストになるとかっていうのは難しかったりして。

でもその子は絶対何年か後に独立して作り続けて欲しいなってすごい思ってます。

大学を出たり、大学院を出たりしてもなかなか作家として生きていけないのがめちゃめちゃ悔しくて。そういうこと言うと「それは仕方ないこと」って言われたこともあって。

日本ってアートとかにもあんまり興味がないし、博物館とか美術館に行く層って割と一定の人たちだなと思うんです。

大学院の1回生の冬ぐらいにロンドンに行って美術館とか博物館とかを巡ってたんですけど、ずっとその場でスケッチしている人もいたし、子供たちがワイワイ言いながら来たりとかもしてて。

日本だと静かに見なさい、写真は撮っちゃダメ、絵も描いちゃダメ。これはこのケースの中で大切に守られている美術品です、みたいな展示のされ方をしてて。

そういう感じだからアートとかデザイン、工芸とかがちょっと遠い世界のものやなって思われているのかもしれないなって思いました。

小学校とかからの美術教育がそもそもあんまりないじゃないですか。図工の時間とかはあるけど、どんどん美術の時間とか減らされてきてるし、美術の先生も少ないし。

そんな状況だと、そりゃあ工芸品とかに興味ないし、アートとかデザインとかよくわかんないし。ああそういうのいいです、みたいな人の方が多くなるよなって気づく時があって。

そうなると、より作り手が減るしかないじゃないですか。市場がなかったりするから。それがすごい悔しくて。

良いものを作ったり、良い表現をしても気づかれないっていうのが悔しくて。

結局大学院の修了制作ではできなかったんですけど、本当は子供達に向けてそういう美術教育とか、工芸に対する教育的なことができれば1番いいなって思っています。

まだちょっと自分のネットワークだけでは小学校に行って何かをするとか、幼稚園に行って何かをするとかってとこまではできなくって。

だけど、じゃあ同じくらいの世代の人に向けて、教育っていう言い方はしたくないけど、接点を増やすことから興味を持ってもらえたらいいなと、民藝品や工芸品が遠いものだと思われている中で、実際に使ってみるということをキーワードにイベントを開催したりしました。

それと、私たちミレニアル世代ってインスタグラムとかツイッターとか、SNSを見て物を買ったり、誰かのレビューを気にして物を買ったりしてるなって思うことがあって、民藝運動が工業化の進む時代の社会に対するアンチテーゼだとすると、今の私たちにとって必要な価値観なんじゃないかなって「ミレニアル世代」っていうのを1つのキーワードにしていました

これは先ほど話した福井県の「RENEW」で屋台を出店した時の話なんですけど、漆の器ってツルツルしてて、触った時にすごいいいし、形によって重さも使い勝手も違うけど、実際に試せる機会ってない。

だから実際に漆器を使って食を楽しめるような機会があるといいな、って思って「たべる福井」と題して屋台を出店しました。

味噌汁とおにぎり、へしこ(青魚の塩漬け)と山うに。福井の食べ物を漆器を使って味わっていただくケータリングをしました。

使ってみないとわからない漆器の良さを体験してもらえたと思います。

河野ひかるさん

河野ひかるさん

ご家庭によると思いますけど、うちはプラスチックの器をよく使ってて。

プラスチックの器って、安かったら100円ショップとかで買えるし、そうじゃないお店でも1000円くらいで買えたりするのにいきなり7000円、10000円、作家さんとかだと何万円ってするけど、やっぱり触らないと技術のすごさや手触りとかってわからないし、

実際に使わないとわからないなと思ってそういうことをやったりしていました。

きっと子どもの頃から使ってたら、使う選択肢に増えるんじゃないかなとも思っていて。

とはいえ色々やっていきながら思ったのは、やっぱり子ども達に選択の権限ってなくて。だから親に向けてブランディングというか、こういうものを子どもに使わせたいって思わせる方が大事なのもかもしれないって思った

もちろん子どもと一緒に何かもしたいし、私たちぐらいのもっと若い世代に知って欲しいって思うし、それと同時に子どもっていうか親子としてできるような取り組みとかワークショップができたらいいなって思います。

この屋台に来てくれた方の話で、多分50代くらいの方なんですけど、京都の大学に娘さんが通われてて。一人暮らしをする時に、娘さんが子供の頃から使ってた漆の器を持っていきたいって言って、もうボロボロだったし、新しい別のやつでもいいんじゃないって言ってもどうしてもこれがいいって娘さんが言うから、漆の塗り直しをして、持っていかせたって言ってて。

そうやって小さい時に親が子どもにプレゼントみたいな気持ちでそれをあげて、ずっと使ってるからこそ、ものに愛着が持ててそれがいいって思うんやろうな。とその時に思いました。

そういうのってやっぱり各家庭によって違うと思うんですけど、そういう繋がり方っていいなって思った。

若い人には接点、知ってもらうきっかけを作る。

親の人に対しては子どもに使わせたいって思うようなことをしたいなあって思いつつ

就職したから今は全然、民藝の方の活動が何もできてなくて。

だけど民藝のことをどう思いますか?みたいに話してたそのイベントはすごい楽しかったから、続けたいなって思います。

なんであんなに民藝が楽しかったのかなって思うと、私も多分「民藝」ってわかってないんです。

そのよくわからない余白があるからだなと思ってて。

みんなそれぞれ民藝に対して解釈ができるし、それをきっかけにものとか生活とかに対して考えるきっかけになるなって。そこが民藝のおもしろい部分かなって思います。

だからまた民藝をゆるく話せる会みたいなのができればいいな。

 

「自分の価値観でものを選ぶ」

ー今はライフスタイル誌がファッション誌よりも増えてきている。と聞いたことがありますが「自分の価値観でものを選んでいく」という方向へ使い手は向かいつつあるのでしょうか?

そうですね。職人さんとか作ってる人にとってはめちゃくちゃ追い風やなって思いつつ、でも一方で本当にそうなのかなって思う節もあって。

こうやって今芸大にいて、きっと同じような考えが強い人の方が多分周りには多くて。ものを作ってるからこそ、その物の価値に気づきやすかったりするのかなって思っています。

でもそうじゃなくて、レビューとかいいねの数気にして買っちゃうとかもやっぱりあるわけで。そっちに向いてる感じもありつつ、「丁寧な暮らし」って言葉ももうブームとして過ぎ去ってるとも思うんです。

そういう一時性のものじゃないようにするにはどうしたらいいんだろうなっていうのが個人的な、めっちゃおっきいけど課題やなって思ってます。自分の価値観でものを選んでいく人が増えつつ、それがブームとかで終わらない。難しいですね。

私がこういう活動をしてきたスタンスというか理由みたいなものは、知られないのがもったいないなっていう気持ちがあって

職人さん自身もこんなにいい漆器なのに、漆器っていうもの自体が見向きもされなかったり、使われなかったりするのがもったいないから。

それに、このままいったら失くなっちゃうのももったいなくて、「RENEW」の酒井さんが最後の木地師って言われながら頑張ってたりするように。

工芸とか産地が抱える問題ってすごい大きいけど、どうにかこの先も続けば嬉しいなという気持ちではありつつ。

河野ひかるさん

でもやっぱり私は何回も言ってますけど「作る人」ではない。それは作ってる人の技術を見たからこそ、作る人ではないなと思ってる。

こんなにすごい技術を持って作ってる人がいて、その技術もあるし歴史もあるし。だからこそ、これがもっとよく伝わるといいなとか。

そういうのをどういう風に伝えて言ったらより伝わりやすいかなって思ってる時に民藝運動のことを知って、やりたかったのって伝えていくことだったかもしれないなと思って。

柳さん自身も「作り手」ではなくて思想家で。柳さんの周りにいた人たちは作り手だったけど。民藝って「もの」なのかなってずっと思ってたけど、そうじゃない。考え方みたいなところから民藝を見ています。

民藝って何回もブームって言われているけど、それって時代が変わっても民藝のものが持つ力とか、ものができるまでの背景に共感というか、惹かれる人がずっといるからであって。やっぱり、民藝っていろんな見方・考え方ができるものだと思うから、自分の消費に対する考え方を見つめ直すきっかけにもなるんじゃないかなって思っています。「mingei+」の活動がまたできるようになったら、そのときもやっぱりそういうきっかけが作れたらいいな。

河野ひかるさん

(「mingei+」での活動の様子)

おわり

2019.09.15更新