銭湯とタイル

京都を身につける

To wear Kyoto
Hirai Mizuki

京都を身につける
ファッションデザインコース 2回生 平井瑞季

空間演出デザイン学科ファッションデザインコース2回生の授業で「京都を身につけるアイテムを作る」という課題が出されました。

15回の授業内で京都に足を向け、インタビュー・リサーチをし、京都を素材としたファッションアイテムを制作するというものです。

自分の力でもっと深く京都のことを知り、足を踏み出すことにより、新しい魅力に気づき、その発見(新しい京都の魅力)をアイテム化するという課題。
気付いていないし知ろうとしていない京都がどのような形でリサーチされ、アイテムになっていくのでしょうか。

 

京都に魅力を感じない

京都を素材としたファッションアイテムをつくるということを初回授業、先生から説明され、
「京都に魅力感じないしやりたくないな、でも課題だし仕方がないな。」というのが本音でした。
しかし、そう思っていても仕方がなく、
「京都に魅力を感じないと思うこと」きっと、そこに問題があるのだと思いました。

京都は世界的にみても他県からみてもかなり魅力の深い場所であり、実際私も京都に来る前まではどこか京都に魅力を感じていました。

そんな京都にいま私は住んでいて、そのことに慣れすぎて魅力を感じなくなってしまっています。しかし、「自分の力でもっと深く京都のことを知りに足を踏み出すこと」により、新しい魅力に気づき、「その発見(新しい京都の魅力)をアイテム化する」という課題をクリアできるのではないか。
まだ気づいていないし知ろうとしていないだけの京都を知ろう、そのために積極的に足を運び、京都を目でみて魅力に気づけ、ということがこの授業の趣旨だと私は解釈しました。

1年以上京都に住んではいるものの、私は京都らしい場所や京都の伝統、歴史が渦巻く場所にほとんど足を運んだことがなく、今回条件として出された京都にリサーチにいき、2人以上から話を聞いてくるという課題に対し、少し不安を感じたりもしました。

どこにリサーチに行くべきか、京都の昔ながらのカフェをまわろうかどうしようかと考えているときに、自分自身が銭湯に魅力を感じていたことを思い出しました。
そして、京都の銭湯は昔から続くかなり歴史のあるもので、それは日本の文化でもあり、すごくすてきな素材になると思いました。

銭湯といえばタイルが結びついていた私は、各銭湯のタイルについてリサーチしようと決めました。

京都を身につける

 

銭湯のタイル

タイルの柄でなにかファッションアイテムを作るとして、たくさんのタイルの写真があれば、それだけでいろいろなデザインが作り出せるなと考えていたのですが、授業内で先生と相談する上で、「タイルのサイズも計った方がいいよ」とアドバイスをいただきました。

そこから、タイルを柄として使うだけではなく、現物サイズのタイルを身にまとえたらかなり素敵だと思いました。そこで、浴槽から壁、床、天井、とにかくタイルの写真を撮り、それぞれのサイズをきっちりと測ってくることに決めました。

また、その際に営業時間前の日中に写真を撮るのか、営業時間後の夜に撮るのかでは照明や陽の加減からタイルの見え方、写り方が違ってくることも教えていただき、リサーチでは営業時間前の銭湯と、営業時間後の銭湯の両方を試してみることにしました。

そうと決まればやることは銭湯にアポイントを取ることで、緊張感を持ちつつ、授業内で5か所の銭湯に許可を取り、撮影に伺いました。

リサーチをはじめるまでは、銭湯の浴槽や床に貼られたタイルに可愛さを感じ、そこにばかり着目していたのですが、いちばんはじめに訪れた銭湯の番頭さんへのインタビューで、各銭湯のタイルに対するこだわりを知り、私の銭湯への意識が変わりました。

「タイルといえばタイル絵だ。」と銭湯の番頭さんはおっしゃられていて、私の中でははじめ「あぁ、タイル絵かぁ。」程度にしか思っていなかったのですが、お話を聞くと、それはすごく魅力的なものだとわかりました。

京都を身につける

京都を身につける

銭湯文化は京都だけではなく東京にもあります。その数は京都よりもはるかに多く、東京の銭湯にも京都のタイル絵と同じく、壁に風景画が描かれているのが特徴です。

しかし、東京の銭湯ではペンキ絵がほとんどの割合を占めており、また、風景画として富士山の絵が描かれているのもとても印象的です。
東京の銭湯で用いられているペンキ絵は2、3年ほどで塗装がはがれてきてしまい塗り替えの時期が来るそうなのですが、京都のタイル絵はよっぽどのことがない限り割れたり欠けたりしないため、20年以上はそのままであり続けるようです。

このお話を聞いてから、タイル絵に対するそれぞれの銭湯のこだわりをもっと聞きたいと思うようになり、その後訪れる銭湯でもタイル絵についてのお話を聞くようになりました。

タイル絵だけでなく、はじめに魅力を感じていた床や壁、浴槽内のタイルもそれぞれの銭湯で形はもちろん、色味や使われ方が違っていて面白かったです。京都を身につける

銭湯によっては暖簾にこだわりがある銭湯もあり、リサーチしたことにより、知らずにいた銭湯のこだわりをたくさん見ることができました。

それぞれの銭湯で使われているタイルはその銭湯に足を運ばないとみることができず、たった1つのタイルでもその銭湯の象徴となり、そんなタイルを身にまとえたらとても素敵だなと思いました。

タイルひとつひとつのサイズを測ったこともあり、私は身にまとえるタイルをコンセプトに、ファッションアイテムを制作することにしました。

京都を身につける

スカーフをタイル色に染めたものに、浴槽内のタイルと同じサイズで作ったデザインをシルクスクリーン。

京都を身につける

デザインに使用したタイルの浴槽に浮かべるとこのような感じになりました。本物のタイルと同じサイズのデザインなので、浴槽と布が繋がっているように見えます。

今回制作したものはスカーフと風呂敷なのですが、もっと幅広く、手ぬぐいやTシャツ、大きめの布にもデザインしていきたいなと思いました。

この授業を通して、一歩足を踏み出せずにいた銭湯という文化に触れることができました。

そして、京都について魅力を感じない、リサーチしたくないという考えはこの課題を通じてなくなりました。それ以上に、今では銭湯のタイルをリサーチする上で番頭さんから聞けるお話や、銭湯という空間、新しい柄のタイルを知れることにとてもとてもわくわくしています。
まだまだ知らないだけで京都の魅力はたくさんあって、大学生でいれるうちに、足を運べるうちに、もっと京都をみる・リサーチをするべきだと思いました。

また、課題での制作やその他なにかを考え企画する際にも、リサーチは欠かせない大切な過程だと感じました。

これからも京都について興味を持ち、積極的に足を踏み出していきたいと思います。

  • 酒井先生のコメント

このレポートにはかかれていませんでしたが(残念)、彼女は銭湯の方々に大変お世話になったようです。元々かなりのビビリ&人見知りで初めて会う人とうまく話せるタイプではない
のに、銭湯訪問から帰って来たら、とても嬉しそうに話をしてくれました。
「皆んなめっちゃいい人で~あーだこーだ」

公衆浴場をテーマにしたプロジェクトでしたが、現在は利用者の減少とそれに伴う担い手の減少から廃業する浴場も多く、数は減っています。
各家庭に風呂があるのが当たり前になって久しく、「身体を洗う」という意味ではもう人々は公衆浴場を求めていません。

ところでフィンランドの公衆サウナも同じように減少していましたが、ここ数年で新しい公衆サウナが増えてきました。若者たちがその機能を見直したのです。バーやカフェ、レストランが併設されていたり、バルコニーでのんびり海を眺められたりと、値段は少々高めですが、サウナを中心としたそれ以外の物事を楽しみに人が集まっているようです。

彼女の今回のプロジェクトは「銭湯=衛生」みたいに捉えていないのが特徴です。
「銭湯=お洒落」と捉えています。タイルがかわいいと、現在の銭湯利用者のほとんどは思っていません。
ここに彼女の活路があると共に、銭湯の活路もあるように感じます。
<
長くなってきましたので省略します(そんなに長く書きたくない)>
各銭湯に、その銭湯らしいグッズを作ってあげることは、悪くない提案だと思います。

 

2019.10.1更新