
RCAとの合同プロジェクト進捗報告 Liuliuチーム(1)
京都の伝統とヨーロッパの感性から新商品を企画するヨーロッパのデザイン大学の学生との合同プロジェクト。
この取り組みは新商品を開発するため、前回に引き続き制作や研究が行われています。
前回ご紹介したロンドンのRoyal College of Art (RCA)との合同プロジェクトから、現在行われている制作や研究の進捗報告をご紹介していきます。
チームメンバー Liuliu 、鈴木日奈恵
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チームメンバー Bronte 、加藤はるか、竹之内春花
チームメンバー Adam、小島仁美、光岡怜伊子
(1)_“隠す”という文化
私がぺアになったのは、Liuliuという中国出身の学生。
普段はジュエリーの勉強をしているというLiuliu。 初めは緊張していましたが、Liuliuから可愛いパンダをもらい、自分たちの作品を見せ合ったりしているうちに、徐々に打ち解けていきました。
しばらく京都のお店をリサーチして職人さんの元へ。 1つ目に伺ったのは京うちわ阿以波さん。
その中で、特に印象的だったお話として日本で発展したうちわの歴史を教えてくださいました。
「昔は、高貴な人はむやみに人前に顔を出すことは恥ずかしいこととされていました。 そこで、高貴な人のお顔を隠すためにあったのが、うちわです。 また『悪いものを追い払う(打ち破)』という意味で、縁起物としてお世話になっている方に贈り物としても使われるようになりました」
私のぺアLiuliuは中国出身の学生。
「もともとの扇は中国が発祥なのに“隠す”という文化から、独自の形になったのがうちわなんだね」 と、とても関心を示していました。 また、Liuliuは大の『NARUTO』好き。その中でもうちはイタチというキャラクターが大好きで、 私がうちわという度に「うちは!?」と反応していました。
10 万円の京うちわ。
繊細な技術と美しさに、開いた口がふさがりませんでした。
次に伺ったのは寺社仏閣に餝金具を納めておられる森本餝金具製作所さん。普段ジュエリーを学んでいるLiuliuは金具についてもたくさん質問をしていました。
機械で作られた鈴と、手で作られた鈴の音色の違いを聞き、とても驚いた様子でした。
私は日本にこのような技術が残っていることの誇らしさと同時に、このことを知らなかった自分が日本人として恥ずかしくなりました。
3つ目に伺ったのは二条城や桂離宮の襖に使われている唐紙を作っておられる唐長さん。
江戸時代から守り続けているという貴重な版木や、たくさんの種類の唐紙を見せてくださいました。
これは「氷割れ(ひわれ)」という模様。
続いては西陣の帯などに使われる “糸” を作っていらっしゃる引箔職人の西山治作製作所さんの元へ。
“糸” といっても、和紙に金箔や銀箔を貼り、それを細く細く裁断したものです。
工房も見せていただき、これはたくさん可能性がありそうだね。と盛り上がりました。
次に、創業 200 年以上続く京提灯の老舗「小嶋商店」さんへ。
RCA の先生であるデイビットと、他のチームも一緒でした。
京提灯の作り方や、それに使われる型、素材などをお話していただきました。
他のチームであるブロンティは、竹と竹をつなぐ麻糸を髪飾りのようにしていました。 私たちとは違う発想を持ったRCAの学生たちに学ぶことは多いです。
しばらくリサーチをしてみて、私とLiuliuはそれぞれ共通する想いがありました。
それは、阿以波さんのところへ伺った時にみた京うちわ。 その独特の丸い形、光に当たった時の影の美しさ、そして京都の職人さんが表現する日本の四季の繊細さにとても感動していました。
ファッショナブルなアイテムを作るということを決めた私たちは、一つは京うちわの形はそのままに、いつでも京うちわを持ち運べる 「KYOUCHIWA クリアバッグ」
PVC は、透明であり、防水で使いやすいことからこの素材を採用。
もう一つは、 京うちわの影の美しさから着想を得て、うちわをツバの部分に取り付けた 「KYOUCHIWA キャップ」
光がツハバに当たると、道に映る影は、普通のキャップではできない美しい影ができるというもの。
プレゼンをして先生方からコメントをもらいました。
今回Liuliuと一緒に京都を歩き回って、たくさん得るものがありました。
京都に 3 年住んでいる私でもこんなに歩き回ったのは初めてでした。 今まで知らなかった京都のこと、もっともっと知りたくなりました。
制作や研究の進捗
私とLiuliuは、プレゼンでいただいた言葉を参考に反省点をあぶり出しました。
● (クリアバッグ)の問題点
・サスティナブルじゃない → クリアバッグに PVC 素材を使うことで劣化が早く、ゴミになったら環境汚染につながる
・誰でも思いつきそうなアイデア
・職人さんに怒られなさそう(怒られるくらいの新しさがない)
・イノベーティブではない → 京うちわの形をそのまま使用し、そのままクリアバッグの中身としている
・伝統工芸のポテンシャルを生かしきれていない
上記の点から、アイデアを再考することにしました。
そこで出た新しい案
アイデア1「京うちわのライトスツール」
京うちわの影の美しさに着目し、フロアランプや懐中電灯などのアイデア。
フロアランプは、京うちわが平面なので、立体にするために箱の組み立て式などもリサーチ。
アイデア2「京うちわ × 京和傘」
京うちわも、京和傘も、竹と和紙でつくられているという共通点があり「隠す」という文化もある。
京和傘は、傘の内側の構造もすごく美しく、そんな内側の美しさに気付いてもらいたい。
さらに普段は平面で「表」と「裏」しかない京うちわが 「外側」と「内側」になるのも面白い。
私とLiuliuは『季節を繊細に表現している』『隠すという日本の文化』 『光が当たった時、影によってできる景色の美しさ』 この3つのワードと、前回の発表で先生からアドバイスをもらった 『Making』『Using』『Repairing』 というキーワードを念頭に置いて、アイデアの再考することにしました。
私は京うちわと、京和傘のリサーチ。 Liuliuはランプのリサーチを引き続き進め、進捗を報告していきます。
つづく
2019.12.01更新
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