京都のハンモック

京都を身につける

京都を身につける5

空間演出デザイン学科ファッションデザインコース2回生の授業で「京都を身につけるアイテムを作る」という課題が出されました。

15回の授業内で京都に足を向け、インタビュー・リサーチをし、京都を素材としたファッションアイテムを制作するというものです。

自分の力でもっと深く京都のことを知り、足を踏み出すことにより、新しい魅力に気づき、その発見(新しい京都の魅力)をアイテム化するという課題。
気付いていないし知ろうとしていない京都がどのような形でリサーチされ、アイテムになっていくのでしょうか。

 

京都のハンモック

今回の授業では、前回「靴下をモチーフにして制作する」という靴下を素材としたファッションアイテムをリサーチして制作する授業を受けたのですが、それに引き続きハンモックを制作しようと考えていました。
幼い時から田舎で育ってきた私にとって、ハンモックは夢です。
ツリーハウスやブランコなどは、自分の手でつくれるリラックスできて楽しめるものであり、憧れがありました。
靴下の授業の時は白い靴下そのものを縫って1本の縄をつくり、それを編んでハンモックにするという作品を制作したのでした。

しかし前回、それでは靴下の良さを生かしきれていないことを先生に教えていただきました。
私は京都の伝統文化に魅力を感じ、大学生活の4年間をここで暮らしてみたいと思い、京都の大学を選びました。
京都は四季の行事が多く、旅行だけでなく住んでみた方がより京都の文化や雰囲気を感じられるかなと考えたのです。
京都に来てから大原(京都市左京区大原)や行きたかった寺に行ったり、神社に行ったり。
私自身が東北出身なこともあって、関西の文化に触れるとたくさんの違いがあって面白いです。

今回はテーマが「京都」ということで、京都×ハンモックと考えたとき、しめ縄を取り入れるという案を思いつきました。
とにかく、まずは神社に行ってリサーチをしてこようと探したのですが、各神社の社務所(神社の事務を行うところ)で聞いたのは「神社から業者を通して問屋(卸売業者)とつながっているから、詳しいことは話せない。」ということでした。
社務所では、境内のしめ縄の種類は一般的なねじって作られているタイプのものを使用しているということだけ教えていただけました。

それで行き詰まった私は、京都のしめ縄の職人を調べました。すると山川さんという問屋さんが出てきました。
山川さんにアポを取って実際にお話をお聞きすることができました。とても丁寧で熱心な方でした。
120年創業している山川さん。
元々麻を扱っていたお店なので藁ではなく、なんと麻でしめ縄を作っておられます!

 

しめ繩職人山川さん

しめ縄をつくるにあたり藁と麻の違いとしては、
藁は元々米を作る段階で余ったものを使用して作るもの。パサパサしたしめ縄になり、傷つきやすいです。
麻で作ったものは、艶があり、麻は天然の素材として1番強いとも言われています。
神聖なもの、結界として使えるなどとも言われていおり、神社などで使われることが多いそうです。
また、マコモという竹科の植物でもしめ縄を作ったりもするそうです。
マコモは中華料理でよく食べられるもので、お歯黒にも使われていたそうです。
麻だけでいってもたくさん種類があるそうで、「ヘンプ」という日本語で麻薬の茎を使用したものもあります。
麻薬といっても毒がない品種なので燃やしても大丈夫です。2~3メートルくらいある植物です。

企業秘密なのであまり教えられないということでしたが、山川さんがざっくりした作り方を教えていただきました。
まずお湯につけて菌をとる。
そして発酵させてふやかしてからつるつるにする。
この状態をおがらと言うそうです。
おがらを三本束ねて持って繊維を割くと、一つの束になります。
とても手間がかかる作業だそうです。
おがらはお盆の迎え火で燃やすのにも使われています。

神社でいう一般的なしめ縄は「細しめ縄」と言いますが、他にも色々な呼び方があるそうです。
「大根じめ」というしめ方は両先が細く、真ん中が太いものです。
片方だけが細いものは「ごぼうじめ」と呼ばれます。
様々なしめ縄を教えていただいた中で、お参りするときにガランガランと鳴らす、神社の「鈴緒(すずのお)のしめ縄」に付けられた、しめ縄を保護するための七宝編(七宝模様を作るように編み上げたもの)の切れ端を見せていただきました。それを見たとき、その編み目の美しさにとても感動しました。
そこで、この七宝編の技術を使ってハンモックを制作することにしました。

実際に制作する時、麻を使うことも検討しましたがとても買える値段ではありませんでした。
写真ではなく実際にみていただくとよくわかるのですが、麻は本当に美しい色をしていてずっと見ていられるんです!
しかし今回はハンモックを作りたいという私にとっての絶対があったので、七宝編の装飾の技術にのみ着目し、制作することにしました。

七宝編みを編むことはもちろん初めてで、山川さんの所にもう一度行き、コツを教えていただきました。
1本6メートルある白い綿の糸を蛙股結び(一般的な1本の縄で結ぶ結び方)でくくり、半分にして編んでいきます。
靴下の時もそうでしたが、編んでいるときは淡々と編むのが楽しくてあっという間でした。
実際に山川さんにお話を聞けたことがこの課題での強みだと思っています。
山川さんと色々とお話したのですが、観光客や地元の人でもわからないコアな職人さんの話なども教えていただきました。
神社やお寺では見たことがあるかも知れないけど、それを実際誰がどうやって作っているのか。
私たちが知らない世界がまだまだあると考えたら伝統工芸の世界はとても深くて、面白いと思いました。
これからの作品作りに、また京都の伝統的な美しさを学べたら良いなとこの授業を通して感じました。

京都を身につける

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京都を身につける

京都を身につける

 

  • 酒井先生のコメント

“ハンモック”に七宝編みを取り入れる という、ただそれだけのことです。
とてもシンプルなアイデア。
だからこそ、とても強い。
これまでに、事例がないのであれば、ヒット作になると思います。
「京都のハンモック」という名前にするのはどうでしょう?

“ハンモック”という、ガーリーというか、若いアイテム、パステルな感じのアイテムに
“京都・七宝”という古がかけ合わさったために、一気に面白くなりました。
最近はお寺でキャンプなどのイベントもやっているようですから、そういう団体と組んで広げていくのもいいし、ハンモックだけでなく、カバンや衣服に七宝編みを取り入れたものを試作してみてもいい。
あと、短期間で、これを編みきって完成させたのも、偉いです。

 

2020.02.01更新