職人
interview
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漆の精製職人
堤卓也さんに お話を伺いました。

店は創業明治42年、歴史ある京都の町で漆の精製・販売をされているお店です。今回インタビューを受けてくださったのは、4代目の堤卓也さん。

「漆って、無限の可能性を秘めているんです。」そうおっしゃる堤さんから漆の魅力についてお話を伺いました。

 

漆屋の仕事

このお仕事を始められたきっかけを教えてください。

元々北海道の農学部がある大学を卒業して学んでいたのですが父から戻ってきてほしいと頼まれたんです。
父からそんなふうに言われたのは初めてでしたね。

 

堤淺吉漆店の仕事内容について教えてください。

漆は漆の木に傷を付けることで採取される樹液で、10年から15年の成木からわずか牛乳瓶1本分しか取れない貴重な自然の恵みです。
私たちは日本や中国の産地からこの採取された漆液を仕入れ、大型冷蔵庫で恒温保管し、品質管理を徹底しています。
私たちはまず、この仕入れた漆液に混ざっている木くずなどの不純物を漉して取り除く作業をします。
その後「ナヤシ」と言われる攪拌作業で漆の粒子を均一化させ、さらに熱を当て「クロメ」と呼ばれる水分調整作業で余分な水分を取り除き精製していきます。

黒漆の場合は、精製過程で鉄粉と反応させ漆黒を作り出します。
色漆は、精製された漆に顔料を練り合わせて作っていきます。
出来た漆は、そのまま出荷するわけではなくて、粘度や乾きなど、異なる色んな漆を調合してはテストを繰り返し、データを取って、漆の使い手である職人さんや作家さんのご希望になるべく応えられるようにしています。

 

堤淺吉漆店さんならではのつよみとは。

まず漆原材料の仕入れから精製、販売までを全て自社で行っているところです。
また、独自製法で精製する、「光琳漆」というものがあり、日光東照宮や姫路城をはじめとした様々な国宝・重要文化財建造物や、京都迎賓館調度品などにも採用されています。

 

うるしのいっぽ

漆

「うるしのいっぽ」を始められた理由は何でしょうか。

「うるしのいっぽ」は、日本の漆の現状に危機感を感じて、何か自分たちにできることはないかと考え漆の原材料屋として漆の魅力を伝えようと始めた取り組みです。
実は日本で使われている漆のほとんどが中国産で、その中国産漆の需要も激減しているんです。
数年前には国産漆の生産量が1トンを切るということもありました。
このままでは漆の文化が消えてしまうのではと本気で考えました。
私たちだけの活動で漆の現状が変わることはないかもしれない。
でもだからといって何もしないわけにもいかない。
そう自分の中で1歩踏み出したことが理由で
「うるしのいっぽ」という名前を付けました。
漆の持つ魅力や可能性を伝えていきたいんです。

 

「うるしのいっぽ」で伝えたかったことは何ですか。

安価大量生産の時代の中、日常生活からかけ離れている漆の魅力を広く伝えようと始めたのが「うるしのいっぽ」です。
私たちは漆の原材料屋という立場だからこそ、漆の素材としての魅力を伝えようと、冊子やWEBサイトを作り、発信してきました。

その中で、漆器を給食食器として採用し、「物を大切にする気持ち」や「感謝する心」を養う教育を実践されている京都市内のこども園の取り組みや、漆を育て採取する現場などを紹介しています。
漆を採取するところから、一つの漆器が作られるまでのストーリーをイラストや動画で発信することで、漆の目に見えない魅力も伝えられたらと考えています。
「うるしのいっぽ」という名前を付けました。
漆の持つ魅力や可能性を伝えていきたいんです。

<参考>https://www.urushinoippo.com

漆

 

循環可能な漆の新しい価値観を

漆は色々なものに塗ることができるんですね。

そうなんです。
私は、自分の好きな自転車やスケートボードにも漆を塗って実際に使っています。
傷つかないの?と良く聞かれますが、特にスケートボードなんて傷だらけ。
でもその傷が味となりデザインとなってカッコイイんです。
ジーンズとか革製品と同じような感覚で、使うことで生まれる風合いが、漆にもあるんです。
自転車も使っているうちに漆の透明感が増してきてそれが好評で。
他には、木製サーフボードにも塗ったりもしてますね。
サーフボードは本来ポリウレタンを樹脂で固めたもので、自然には還らないものなんです。
だから、天然木に漆を塗って100%天然由来で環境負荷の無いサーフボードを作りたかったんです。
人や地球に優しい漆という天然素材を通して、循環可能な暮らしを考えるきっかけになればと考えています。
<参考>https://www.rethink-urushi.com/

 

漆

 

「無限の可能性」を秘めている

漆

漆の可能性について教えてください。

やっぱり何にでも塗れることを知ってほしいですね。
漆と聞くと、多くの方が「値段の高いもの」であったり、漆器や伝統工芸品をはじめ、
「普段は使わない特別なもの」といったイメージを持たれていると思います。
もちろん高級品としての漆のイメージも大切ですが、漆をより身近にかんじてもらえるようにこれからも色々なものに塗っていきたいですね。
それと、漆を軸に他の工芸分野や天然素材、教育や地域など
たくさんの仲間と連携して、もう少し大きな枠組みで漆の魅力を伝えていきたいですね。漆って、無限の可能性を秘めているんです。

 

京都ってどんな街?

京都は京都として成り立っていて、伝統と文化が根付く誇れる街だと思います。だからこそ、今以上に他の地域とも連携をうまくできたらいいのにとも思いますね。
日本全国で、世界で漆の現状を変えていくことが京都から発信できたらいいな、と思っています。

おわり

 

2020.04.01更新

Traditional Craftsman
interview 24
URUSHI CRAFTSMAN
TSUTSUMIASAKICHI URUSHITEN
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堤卓也

基礎美術コース 1年
谷口 雄基