広め手に会いにゆく

#1 圓尾伸三さん

生活スタイルや価値観が変わってしまった現代において、その本質や価値が伝わりづらくなっている日本の伝統文化。
高度な技や深い知識を持つ「作り手」ではなく、その価値を多くの人に知ってもらおうと努力する「広め手」にスポットライトを当て、京都の文化をどう次世代へつないでいけばいいのかを考える。

 

#1 圓尾伸三さん(京都コンシェルジュサロン/京都武家屋敷

圓尾さんは、京都生まれ。旅行会社に就職し、世界各国を旅した経験を持つ。
その後IT会社を経営、売却したのち、マレーシアに移住。
そこで「日本」文化の素晴らしさを再認識し、それを世界に広げたいと、帰国。
2017年9月から知り合いに「町家」を借りる形で、「京都コンシェルジュサロン」をオープンした。

 

日本文化の素晴らしさを、世界へ。

「京都コンシェルジュサロン」のオープン当初は、マルチリンガルのコンシェルジュとガイドが常駐し、インバウンド訪日客向けに観光案内や手配をするコンシェルジュサービスがメインだった。
はじめは「場」を提供する形で、さまざまな体験プログラムやワークショップを実施していたが、事業を続けるうちに、ターゲット客には築300年の武家屋敷である建物自体に関心が高いこと、伝統工芸品といったモノではなく、「茶道」や「着物」の体験プログラムに人気があることがわかり、茶室など施設の内部を整備し、「京都武家屋敷/SAMURAI HOUSE」と名付け、現在の文化体験サロンの形に。
着物に着替えての「茶道」や「利き酒」、「日本舞踊」などの体験プログラムを実施している。
また、建物の補修やリノベーションは圓尾さん自らが行っている。将来は、海外にもこういった拠点をつくっていきたいと考えている。

 

【広めるヒント】

“広告費はかけない。その分プログラムを充実させる。”
圓尾さんのアプローチは、常に実験的である。
はじめは講師に教室として「場」を貸すビジネスや、持ち込みの単発イベントも実施していたが、今ではほとんどがオリジナルのプログラムになっている。
お客様を紹介してくれる旅行会社やツアーガイドとの信頼関係をベースに、試行錯誤を重ねながら、顧客のニーズに合わせてサービスを改良し、進化させている。

“体験を「思い出」にしてあげたい。だから写真を撮って構わない。”
茶道などの伝統文化体験では、お点前などは撮影禁止の場合も多い。
しかし、このサロンでは「体験を持ち帰ってほしい」という気持ちから、撮影OKにしている。
自国に帰って、多くの人に日本文化の素晴らしさを伝えてもらいたい、という気持ちの表れだ。
お茶を点ててみたいと思った人は、茶筅を買って帰るらしい。
情報をオープンにし、タンジブル(有形)することで、広がるスピートは向上する。

“ゆったりと体験してほしい。ベルトコンベヤー式にはしない。”
圓尾さんは「無理な集客をするつもりはない。」と話していた。
たくさんの客を集めることはしない、というのは大々的に広告をしないということにもつながる。また、予約受付とプログラム実施の場は完全に分け、施設内で電話が鳴らないようにしている。
文化を伝えたいという気持ちに、「商売」が見え隠れしたら、感動は生まれない。

       

 

おわり

訪問日:2020年1月12日
文:升田陽子

2020.05.01更新

「広め手」に会いにゆく #1


オトナT5チーム
杉浦康子(通信・和の伝統文化コース)
足立有加(通信・空間演出デザインコース)
小島仁美(通信・空間演出デザインコース)
升田陽子(通信・和の伝統文化コース)