京都文化 サブイボ通信 #10

02「絹本の骨格」

前回は今回の講義を担当される、山本太郎先生のご紹介をしましたが、今回は1年生の頃に学んだ古典絵画表現のことをふりかえっていきたいと思います。

1年生では、絹地に絵を描く“絹本(けんぽん)”を学びます。
枠に絹を貼り、ドーサを引く、描く前の下準備から挑戦します。
製作とお稽古は違うものだと考える方もいるかもしれません。
しかし、私はこの準備作業の中で、ただ描くだけではなく、しっかりと準備を仕込んでいくところが今までの数々のお稽古の中でも行っていた、掃除や身支度などの行為に通じるものがあるような気がして、基礎美術コースの基礎としてとても大切なことだと思いました。

 

骨格という名の基礎

下準備を終えたら、すぐにモチーフを描き始めるわけではありません。
骨描き(こつがき)という墨でモチーフの輪郭線を引いていく作業に入ります。
この輪郭線は絵の骨格です。
そう、この骨描きという工程は、作品本体の基礎になるのです。
そして難しい…!
単純に私たちが墨と筆で描くこと、線を引くことに慣れていないというのも理由の一つかもしれませんが、手が震えそうで、集中力もバチバチに入れて、肩にも力が入ってしまったり…
最近はデジタルのイラストを誰でも描くことができるような時代になってきたと思います。
commandキー+Zキー
たった二つのキーを押すだけで殆どのソフトやアプリがやり直しをできてしまいますよね。
アナログでも鉛筆なら消しゴムで消すことができます。
最近は消えるボールペンも売っています。
しかし、骨描きの墨は水で薄まるかもしれませんが、一発で即消える、やり直しができる!
なんて甘いことは許されません。
それがとても怖くて、頭の中にある自分の描きたいものの骨格をスルスルと描いていく、その段階までいくのは大変な努力と練習を日々積み重ねていかなければならないと身をもって感じました。

しかし、この墨だけの線が引き終わると彩色段階前ですが、とても凛々しく、墨の美しさが際立って、これで完成にしてしまいたいと思うぐらい、単色の良さが感じられました。

そして今回、彩色で使うのは水干絵具です。
天然の土や、胡粉などに染料をつけた日本画絵具です。
マットな質感が特徴で、塊になっているのを細かくすり潰しながら、膠液と混ぜ合わせて使用します。
私たちの多くが、日本画絵具に触れることが初めてだったので、その色や粒子のサイズに興味津々でした。

絵を描いていくのは絹地なので普通に塗り重ねると透け感が出てとても綺麗です。
しかし私は厚みを出したかったので、表に水干絵具で塗る前に、裏から胡粉で真っ白なベースを作ることにしました。

△裏面

そうすることで、透け感が殆どないマットな質感の絵を描くことができました。

△表面

胡粉という素材にも今回初めて触れましたが、胡粉は主に牡蠣などの貝殻から作られています。
胡粉も膠液と混ぜることで定着します。
真っ白。というわけではなく、よく見るとほんのりと色付いていて柔らかいのです。
胡粉は乾いた後にひび割れなどになりやすいため、膠と馴染ませるための作業がとても大変で、重要になっていきます。
次回は“胡粉”についてご紹介していこうと思います。
ナカガワ胡粉さんへの見学レポートもお楽しみに。

つづく

2020.06.01更新