広め手に会いにゆく

#2 竹中大輔さん

生活スタイルや価値観が変わってしまった現代において、その本質や価値が伝わりづらくなっている日本の伝統文化。
高度な技や深い知識を持つ「作り手」ではなく、その価値を多くの人に知ってもらおうと努力する「広め手」にスポットライトを当て、京都の文化をどう次世代へつないでいけばいいのかを考える。

 

#2 竹中大輔氏(takenaka kinsai

金彩をご存知ですか?
「金彩は、着物に様々な金属箔や粉を接着加工る技術の総称です。押箔、摺箔、盛り上げ、泥金描など様々な技法が複雑に絡み合い、一つの表現となります。」(takenaka-kinsai.jpより)

竹中大輔さんは、竹中金彩の2代目。

父、秀美氏は着物を作る全工程を扱う工房の職人でしたが、金彩業を選び独立されました。
「着物を作る過程では、金彩は仕上げ工程で、いつも展示会などに納入するぎりぎりに
回ってくるので徹夜作業もしょっちゅうで大変でした・・・」
金彩を施す華やかな着物の需要も少なくなり、ご子息の大輔さんには
家業を継がせる、というつもりもなかったそうです。
もともと手先が器用でモノ作りが好きだった大輔さんは、デザインを学ぶため大学に進学。
卒業後、紙器メーカーでデザイナーとして勤務後、独立して紙雑貨の企画デザイン販売を
手掛けていました。

金彩の文化・技術を無くしたくない

そんなある日、お母さまが新聞でテーブルウエア製品で競う「京ものユースコンペティション」の募集を見つけました。
大輔さんは、締め切りまで1週間足らずで、家業の金彩を施した余り布を使ってグラスマーカーを
作って応募… みごと準グランプリ入賞し2014年9月商品化。

「glassmarker彩」の赤い糸を漉き込んである箱の
パッケージデザインは大輔さんによるものです。
一枚一枚赤い糸の配置が異なる紙を用いた一点もので、思わず手にとってみたくなります。

「友禅の伝統的な文様を使った商品によって金彩の良いところを伝えられたら」と大輔さんは語ります。

ワークショップ、百貨店の展示販売に積極的に参加し、多くの方の目に留まるよう努力され、
宝酒造の情報サイト『酒噺(さかばなし)』に取り上げられたり、
化粧品ブランドSUQQU(2018年春「金彩」テーマ)展示什器の装飾に
携わることにもつながりました。

革のキーケース、パスケース、コースターやリフレクター(反射板)など
グラスマーカーに加え商品を増やしていきました。

 

【広めるヒント】

“金彩の技術を身近なアイテムに”
金彩の長所である華やかさをグラスマーカーやコースターなどのテーブルウエアの製造に
上手に活かしている。 このように身近なアイテムに金彩を取り入れたことは、
金彩の技術をなんとか未来につなげたいという思いの表れ。

“ブランドとのコラボレーション”
リバティーやPASStheBATON、スヌーピーやウルトラマンまで、さまざまな
ブランドやキャラクターとのコラボをなすことにより各ブランドの愛好者を通じて、
新たな顧客を獲得した。

“SNSで顧客のニーズに答える”
・Facebook、Twitter、インスタなどで、京都の伝統工芸である金彩を
「現代生活に華をそえる美しくきらびやかな小物」と新たな価値提案をしている。
・ネット注文で顧客からの個々の直接の注文、要望の相談にのる。
・企業向けOEM、卸での注文にも対応。記念品やイベントのロゴ入り土産品
などもこなす。
・売り手と生産者が一致しているので迅速に対応できるという強みを活かして、顧客
のニーズに答えている。

“使い慣れたものの中からの工夫”
・もともと持っている金彩の技術、伊勢型紙などの道具、金彩を施したはぎれ等を利用
することで設備投資などの新たなコストをかけずに未来に継承される「これからの金彩」に
チャレンジしている。
・父、秀美氏の金彩職人の技と大輔氏のデザイン力による製品開発の二人三脚は、
京都の伝統を現在につなぐ二人三脚といえよう。

 

おわり

訪問日:2020年1月12日
文:杉浦康子

2020.06.01更新

「広め手」に会いにゆく #2


オトナT5チーム
杉浦康子(通信・和の伝統文化コース)
足立有加(通信・空間演出デザインコース)
小島仁美(通信・空間演出デザインコース)
升田陽子(通信・和の伝統文化コース)