家族が職人

#2 京友禅の家族

京友禅伝統工芸士 細井智之さんと、
娘の細井咲恵さんにお話を伺いました。

職人といえば、頑固で、無口でと、どこか固い印象を持たれることが多いですが、いつもそばにいる「家族」から見てみるとどうなのでしょう?

「家族が職人」では、職人さんとそのご家族の方に伝統工芸や手仕事の魅力についてお聞きしつつ、「職人は家に帰ったら何をしているの?」「職人の奥さんって大変なのかな?」など、工房や作業場からは見ることのできない職人を覗かせていただきます。

今回は、亀岡にお住まいの京友禅伝統工芸士 細井智之さんご家族にお話を伺いました。

京友禅の道

父が友禅の職人さんだったことでほかの人と違うと感じる部分はありますか。

(咲恵さん)
親が会社勤めをされているお家では、仕事で家に帰ることが難しい方もおられると思いますが、私の家の場合お父さんが家にいて仕事をしているので、小さい頃はとても安心感を覚えていました。
あとは、友達や仕事先のパートの方と話をしているときに「お父さん何してはるの」と訊かれたときには、とても話が膨らむ話題になります。

実際に友禅をされたことはありますか。

(咲恵さん)
小学生の頃、お父さんが「みやこめっせ」で友禅の体験をしているときに、
私がそこに行って教えてもらったことはありました。
布に描くのと紙に描くのとでは全然違ったことを思い出します。
実際に友禅を経験することは少なかったですが、小学校の夏休みの自由研究で友禅の工程を書いて提出したことや、祖父も着物関係の仕事をしていたため、祖父に対してインタビューをしたことはあります。

友禅の道に進もうと思われたことはありましたか。

(咲恵さん)
友禅は父への憧れという意味で、小学校の頃までは「継ぎたい」と言っていたけど、ある程度大きくなってからは言わなくなりましたね。
今思うと大変な仕事なんだろうなと思います。今は飲食業界で働いています。

身近に友禅があることで気付くことはありますか。

(咲恵さん)
父のように、職人さんが手仕事で作っている着物とインクジェットプリントで作られた着物とでは、具体的に言葉で説明することは私には難しいけれど、どこか違うということは分かります。

お父さんほど目が良いわけではないから、単体で見たら分からない時もあるけれど、
皆で着ている集団を見たら一目で手描友禅は分かりますね。インクジェットプリントで作られた着物が悪いという事は決してないのだけれど、手描友禅と比べてみると「派手だなぁ」とか「情報量が多いなぁ」と感じます。

(智之さん)
手描友禅には日本画と同じように、いかに無駄なものを省いて美しく見せるかという美意識があります。
受け手が想像するスペースを残す「余白の美」です。それが身に纏ったときの美しさにも繋がっていると思います。

今は染色方法も色々あってそれぞれの良さがあるけど、手描友禅の魅力は素材、工程、道具など工芸の技術から生まれる美しさと、ファッションであるということですね。

京都という町についてどうお考えでしょうか。

(咲恵さん)
京都というよりも関西の特徴になるかもしれないけれど、テレビや新聞の影響を強く受けているイメージがあります。
自分が働いている飲食店がテレビで紹介されたことがあったのですが、突然その瞬間からお客さんが殺到しました。
逆に関東はSNSが影響力を持っているイメージがあります。

それこそ関西でもSNSを有効に活用できたらいいんじゃないのかなって思います。
お父さんが作っているような手描友禅の着物とはまた違うけれど、夏に女の子が着物を着て皆で写真を撮ってインスタグラムに載せているような、そういう流れに乗ることができたら、若い人たちにも知ってもらえる気がします。

(智之さん)
着物も「映える」という意味ではインスタグラムとの親和性が高いと感じています。
それが若者には「かわいい」みたいで。
私が関わっているものは誰かの生活を直接的に救うものではないけれど、少し気持ちを豊かにしたり、心を支える一部になるんじゃないかと思います。
自分自身も救われたように。

そういう想いを共有するためにも、つくり手と使い手が直接つながれるSNSというのは、とても良いコミュニケーションツールです。
また、京都で着物に触れて、その楽しさに気づいてもらったり、制作体験などで奥深さを知ってもらうことでも、手描友禅の魅力を伝えていきたいですね。

最後にお父さんの尊敬されているところなど教えていただきたいです。

(咲恵さん)
皆と違う、誰でもできる訳ではない技術を持っているというところですね。
私が成人式のときに着た着物はお父さんに作ってもらったりもしたのですが、そういったところはやっぱりこの家に生まれてきた特権だなと思います。

 

おわり

2020.7.1更新

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「家族が職人」#2
京友禅
細井智之さん
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文:
谷口 雄基(基礎美術コース 2年)