家族が職人

#3 組紐職人の家族 (前編)

組紐職人 増尾富士太さん、奥さまの優子さん、
昇苑くみひもで企画担当をされている中村新さんに
お話しを伺いました。

職人といえば、頑固で、無口でと、どこか固い印象を持たれることが多いですが、いつもそばにいる「家族」から見てみるとどうなのでしょう?

「家族が職人」では、職人さんとそのご家族の方に伝統工芸や手仕事の魅力についてお聞きしつつ、「職人は家に帰ったら何をしているの?」「職人の奥さんって大変なのかな?」など、工房や作業場からは見ることのできない職人を覗かせていただきます。

今回は、1948年創業の組紐和雑貨専門店「昇苑くみひも」で組紐職人をされている増尾富士太さんとその奥さんの増尾優子さん、お店で企画担当を務められている中村 新さんの3人にお話を伺いました。

「奥さんからみた職人のイメージとは?」
「組紐や手仕事の魅力とは?」

お店近くの「食堂山小屋」さんにご協力をいただいて、楽しく取材をさせていただきました。

組紐の仕事

普段どういったお仕事をされているのか詳しく教えてほしいです。

職人 富士太さん
紐が出来上がる前の、機械に糸をセッティングをする仕事をしています。
紐は機械が作ってくれるんですが、セッティングや様子を見ておくことは必要ですので。
機械に糸を付けるための作業で、下ごしらえみたいなものです。
僕の他に6人担当者がいるんですけど、他の人は染めをやっていたり、房を作っていたりなど、その人その人に得意の分野があって自分が向いているものをしています。

組紐の職人になられたキッカケを教えてください。

職人 富士太さん
この「昇苑くみひも」という会社に面接させてもらうことになるまでは組紐のことを知らなかったんですけど、工場を見せてもらって自分が働いているビジョンが見えたというのか。
その場に自分が居そうだなと感じました。その時は他の仕事は全く考えてなかったです。
大学時代は美術大学の油画をしていたので、以前は絵を描く仕事も考えていたのですがメインでやっていく難しさもあって。
ただ、作る仕事は昔からしたかったから今も楽しくやっています。

職人になって大変なことや苦労されていることはありますか?

職人 富士太さん
用意した糸を高速のボビンに巻き付けなければいけないんですけど、手が切れるぐらい早くて、それに慣れるのに時間がかかりました。
ボビンの速さも、足のペダルで調整するんですけど、それもなかなか難しいです。

逆にやりがいや楽しさを感じることはありますか?

職人 富士太さん
自分に向いていると感じられる仕事で毎日楽しく過ごしています。
でも毎日頑張り過ぎてしまうと飽きてしまうから、たまに自分で「今日はちょっと違うやつをやろう」と息抜きも入れるようにしています。
上の方に指示されない自由な社風なので、自分で決めることができるんですよ。

職人になる前と、なってからでは職人のイメージは変わりましたか?

職人 富士太さん
昔から職人になりたかったので、自分の思った通りでしたね。
皆さん没頭して自分の仕事を全うされてる、といった。
職人さんのイメージに対しては、変化は無いですし、悪いイメージも無いです。

奥さんに質問です。職人の夫を持たれて変わったことがあれば教えてください。

優子さん
自分の中で愛でるものが変わったように思います。
自分自身がアンティークショップで働いてたこともあり、ヴィンテージやアンティークな物が好きで、身の回りの物もそういった物で揃えていたりしていました。
でも、組紐などの伝統工芸品に触れたり見る機会が確実に増えていったこともあって、モノに対する作り手さんの顔がもっと見える方が面白いなとか、日本製の物もステキだなとか、職人さんが守ってきたモノの重みのようなものを少し感じるようになりました。
自分が持つものもそういうのが良いなと思って、お金をかけるところが変わったりしましたね。

アンティークショップで働いていた経験や、ヴィンテージが好きな方の目線で日本の手仕事の魅力は何かありますか?

優子さん
日本で作られたモノは、仕事がとても細かく丁寧に作られていると感じますね。
もちろん向こうの物も優れていると感じるところはたくさんあるのだけれど、海外のモノを見る前に、まずは自分の国のことを知ってから見たら良かったな感じました。
だから昔は海外旅行にすごく行きたくて、フランスに行って確かに素晴らしいとは思ったのだけれど、それよりも日本の行ってない所も多すぎて、今はもっぱら日本の場所に行っていますね。
死ぬまでに47都道府県行きたいなって思ってます(笑)。
今はその気持ちの方が強いですね。

奥さんからみた「職人」のイメージはどういったものでしょうか?

優子さん
職人さんにも様々な方がおられると思います。
その中には彼(富士太さん)のように自ら選んで職人になれる人だけではないと思う。
生まれ育った家を継がなくてはいけない人や、必要に迫られて職人になった人もいると思います。
そういった状況や向き不向き、才能が必要な場面もある中で、試行錯誤を繰り返して積み重ねた結果できるものだから、
仮に天才のような人がいても努力は必ず必要だと思うんです。
だから、ものづくりに対して真摯に向き合える人、向き合い続けることができる人が、
職人さんって呼ばれて良い人なのかなと考えています。

職人 富士太さん
すごいな自分……。

一同:
(笑)

中村さん
まあ、あんまりこんな話を家ではしないですよね。

職人 富士太さん
しないですね。

中村さん
面白いね。

 

つづく

2020.8.1更新

Craftsman family
interview #3
KUMIHIMO CRAFTSMAN
Fujita Masio
Yuko Masio
Shin Nakamura

「家族が職人」#3
組紐職人
増尾富士太さん
増尾優子さん
中村新さん

文:
谷口 雄基(基礎美術コース 2年)
下尾 藍子(基礎美術コース 2年)