職人
interview
30

おりんの職人
南條 和哉さんにお話を伺いました。

澄んだ音色で、心地の良いおりんの音。
その音を作り出すために、様々な工夫と研究がされていました。
今回お話を伺った南條工房さんは、まさに「おりんを作るために構成された工房」。
おじいさまから代々受け継がれてきた技術が、ギュッと詰まっています。
「良い音が作れたらそれが1 番なんです。」 そうおっしゃる南條和哉さんに、おりんの魅力についてお話を伺いました。

 

「捨てる」ものがない

土の水分量とかによっても左右されるんでしょうか。

これはもう職人さんの大体の加減ですね。
型作りって、やっぱり制作過程の中で重要な部分なんです。
手が変わると、人によって癖が出ちゃったりとかもするので。
一言に土と言っても、私たちが使っている土はお米の籾殻が入っているんです。
秋になると農家さんのところに行って、籾殻をもらって貯めておくんです。
籾殻が入っていないとなかなかいいものができないんですよ。
これは昔からのやり方ですね。

土に関しても、籾殻や水、すごくナチュラルなもので作られているんですね。

だからこそ、私たちはあまり「捨てる」ものがないんですよ。
今の工房も建ててから50年ぐらいになると思うんですけど、よく考えられていて。
天井から雨水が溜まるようになってたりとか。
土をこねる時って水が必要なんですけど、水道で水を足す事はほぼないですね。
おじいさんが作った工房なんです。よく考えられてるなあって。
型を固めた土たちは鋳造の後、型からおりんを取り出すために砕くので
1回全部まとめて、ローラーでつぶして、ふるいにかけます。
ほんまに硬くて潰せないものは産業廃棄物として捨てるんですけど、
後のやつはもう一回リサイクルしてコーティングの下地材に使ったり、
型の周りを固める土として使ったり、ずっと繰り返し使えます。
繰り返し使う方が良いものができやすいんです。

これが終わると鋳造作業に進みます。
社長以外に僕と、あと3人職人さんがいて、1人の職人さんはもう80歳以上の方なんです。次の人に受け継がせていくために、監督をしてもらっています。
簡単にいうと、型を250個位並べて巻で火をつけて焼く作業。
このやり方は私たちの特徴の1つですね。
形を焼いてから鋳造する、焼き型って言われる鋳造法の1つです。
私たちみたいなおりんで焼き型をやっている工房は、日本で数件しかないと思います。
とくに薪を焚いてやっているのはうちぐらいですかね。大体2〜3時間位かけて焼いていきます。
ゆっくり焼くって言うよりは、どんどん焼いていくって言うイメージで。
薪も、広葉樹ではなくて、松や杉みたいな針葉樹を使っています。
針葉樹はばーっと燃えて、火力がすぐ上がるんです。

 

職人の勘と経験

温度はどのぐらいになるんですか。

僕らもあんまり測ったことないんですよ。職人の勘とか経験で判断していますね。
色や形を見ながら、「もうちょっと火を出したほうがいいな」って、
そういった感じでやっていくので。
500度よりは上なので、700度から800度くらいですかね。
焼けてなくてもだめだし、焼きすぎると形が割れちゃうので。
そのちょうどいい具合を見ながら、考えながら、ですね。
手順を決めても、その日の温度とか湿度とかによって、
どうしても加減が変わっちゃうんですよ。
薪は木の湿り具合とか、水分量によっても変わってくるので、
あんまりマニュアルみたいなものを作っても意味がなくて…。
こればっかりは、経験がものをいいます。だから教えてもらう部分と数をこなして経験を積んでいくことで、「伝承されていく」っていう感じですね。

うまく焼けるようになるまでどれくらいかかりますか。

5年とか、結構長い間かかります。人にもよりますね。
体調が良いことが大前提です。温度の感じ方とか、全部狂ってしまうので。
万全な状態で挑まないと、なかなか良い状態には持っていけないです。
型においても、積み方によって空気の流れも変わってくるので、
やっぱりその時その時によって、形も変わってくるんです。
それをリカバリーできるかどうか、っていうのが職人の経験になりますよね。
一応、火をつけて器を入れたら燃えることは燃えるので。
ちゃんときれいに焼けるところもあれば、
あんまりうまく焼けてないところもあるって言うのが最初。
そこからいかに全体をきれいに焼くか、
っていうのが職人さんの腕になってくるんですね。

 

つづく

 

2020.09.01更新

Traditional Craftsman
interview 30

ORIN CRAFTSMAN
NANJO KOBO

Text by Kawaguchi minamo
Photo by Nakata Kenta

「職人interview」#30
南條工房 おりん
冨田睦海

文:
川口 水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース 3年)

撮影:
中田 拳太