About Whole Love Kyoto
#02

About “KUROMONTSUKI”

KYOTO T5とWhole Love Kyotoは、
京都を拠点としているからこそできること、
観光で訪れるだけでは、出会うことが難しい
京都の体温に触れてきました。
伝統文化を知り、職人の思いや技術を知り、
一歩踏み込んで、京都の本質をのぞいてきました。

Old is New.
古いものは新しい。

様々な手法のリサーチを通して生まれる、
Whole Love Kyotoの製品です。

このコンテンツでは、
Whole Love Kyotoの製品について
アイテムの背景や活動を振り返りながらご紹介します。

 

今回は、黒紋付 藤崎染工株式会社さんのリサーチから生まれた「HANAO SHOES Craftsman」シリーズより「KUROMONTSUKI」 をご紹介します。
HANAO SHOES は、草履や下駄にすげられた「鼻緒」をスニーカーに取り付けたアイテム。
ひとつひとつ手仕事でつくられた鼻緒が、現代のライフスタイルに寄り添いながら彩を与えてくれます。

そして、この「HANAO SHOES Craftsman」シリーズは、京都の伝統工芸の職人さんによる技術とコラボレーションしてつくられた「新しい鼻緒」を付けたもの。ひとつの鼻緒ができるまで、さまざまな職人さんの技術が詰まったアイテムです。

今回ご紹介する「KUROMONTSUKI」は、落語立川流の定紋「丸に左三蓋松( ひだりさんがいまつ)」があしらわれたオリジナルの鼻緒。今回は開発に携わったスタッフと、黒紋付の職人 藤崎染工さんから、アイテムが誕生するまでのお話を伺っていきます。

 

About “KUROMONTSUKI”

はじめに、Whole Love KYOTOのスタッフから、KUROMONTSUKIが誕生したきっかけを聞かせていただきました。

Q.HANAO SHOES Craftsmanとは、どういった企画でしょうか?

「鼻緒職人さんと他の伝統工芸の職人さんの技術を合わせて、これまでに存在していなかったような鼻緒を生み出し、それを使ったHANAO SHOESを制作、販売する」企画です。
今まで鼻緒の形に仕立ててもらったことがなかったり、鼻緒にしたことがない素材だったりもするので、この企画では職人さんにいつも新しい挑戦としてご協力していただいています。
HANAO SHOESが職人さん同士を、また、購入してくださるお客さんたちをつないでいく。そういったコンセプトがあります。

Q.このHANAO SHOES Craftsmanには、落語立川流の定紋が入っていますが?

そうですね。「KUROMONTSUKI」を制作するきっかけになったのは、落語家の立川志の輔さんが京都芸術大学の春秋座で10周年目の講演をされる時でした。志の輔さんは、舞台に立たれる時に紋付を着られていて、紋を背負って舞台に立っている姿が、すごくかっこいいんです。
HANAO SHOES Craftsmanで黒紋付を取り上げて、紋に志の輔さんの紋を入れることはすごく意味を持つんじゃないか、って思いました。

志の輔さんが春秋座に来られた時に直接お手紙を書いて、依頼をしました。
快く「ぜひ、つくってください」と言っていただけて、お手紙もお返事を下さって。
志の輔さんの優しさに、すっかりファンになりました。

その時、ちょうど呉服業界、着物業界の方とお話しする機会があったんです。
工芸の世界って困窮しているって言われているけど、特に呉服業界の困窮している様を目の当たりにして、実感したんです。

「ほんまもん」じゃない着物がたくさん出回っていたり、実質手で刷っているものよりインクジェットの方が利益が出るような仕組みになっていたり。
着物、浴衣は高いものという認識があるけど、実際職人さんへの利益はとても少なくて。
「単価が高いし儲かっている」と思われがちですが、実は現状がそうではないんです。

Q.企画から実際に販売するまで、どれくらいの期間かかりましたか?

急ピッチで進めました。志の輔さんが独演会されると聞いて、このタイミングで、私自身が考えてた呉服業界への思いを形にする機会だ!と思って。独演会の2ヶ月前にすぐに動いて、職人さんにもたくさんご相談しました。

実際に志の輔さんにお会いしてお願いした時は、黒地の鼻緒に紙で紋のイメージを貼ったものをお見せしました。快くご承諾をいただいて、いざ形にしていけるとなったんですが、その時の藤崎染工さんの工房は、都合上週に一回くらいしか工房が開かなかったんです。それでもすごく親身になって動いていただいて…。
HANAO SHOES Craftsmanに関しては、染めていただいたものを鼻緒職人さんのところにお渡しして仕立ててもらわないといけないので、その期間も含めても、半年もかからないくらいですね。翌年の講演会では完成形を発売させていただきました。

そのスピード感で発表できたのも、まさに「信頼関係」があったからです。
職人さんとのつながりであったり…。本当に、職人さんが優しかったです。
工房に相談にしにいっても「まだできるか分からないんです」というような状態だったのに、「言ってくれればいつでも動けるようにしておきます!」と言っていただけて。万全の体制で待ってくださっていました。

若者が突然やってきて、「着物だったものを履き物にしたいです!」って、ちょっと意味不明なことを言ったにもかかわらず、すごく前のめりに話を聞いてくださって。
私たちのような若者に対しても、親身に話を聞いてくださる職人さんがいるって、本当に素敵なことですよね。

誕生までの出会い

ここからは、実際に「KUROMONTSUKI」を手掛けていただいた藤崎染工 藤崎照治さんからお話を聞かせていただきました。

Q.HANAO SHOESを作りたいと依頼をされた時、どう思われましたか?

「まさかそこに?」っていう、驚きが大きかったです。
僕らの中の鼻緒のイメージって「無地なもの」だったので、固定概念を覆されました。
ものづくりって、ざっくりですけど、アイデアを出す人、ものを作る人…みたいな仕事分担があるじゃないですか。
僕たちはものを作る人なので、アイデアや発想を出すことってなかなかないんです。
「こういうのを染められますよ」っていうことは提案できるんですけど、これを新しく加えるという発想は思いつかないんです。

Q.これまで決まった部分に紋を入れることが主だったと思うのですが、紋が足元に来ることで、新しい発見などはありましたか?

紋付は、普段は「和装」をメインでやっていて、アパレル系のお話をして仕事に携わった時に、考え方の違いを感じましたね。
「色むらがあったとしても、それが味だから」という風におっしゃられる場面が増えました。
その時々の楽しみ方としての認識ですよね。僕らにはない思考でした。元々僕らは「きれいにムラなく染める」ことが根本的なスタンスだったので、それが全く真逆のことを言ってくださるんですよね。
デニムなどにもある「色落ちを楽しむ」という楽しみ方を、黒紋付にも見出しているんだな、と。

今回のお話をいただいたときも、色が落ちる可能性があることを説明したんです。
これまでの紋付って、太陽の下で長時間身につけることはなかなかないんですよね。
展示で飾ると照明なんかで焼けて、色が変わっちゃうんですよ。そういう色の変化が起こることを説明させていただきました。
シューズなので長時間履くし、長く使われるものなので僕らは心配だったんですけど。
洋装の方とお仕事をさせてもらえるっていうのは、考え方の違いをすごく感じますね。

Q.和装と洋装、考えてみると、ギャップが大きいですよね。

180度ガラリと違うというか…。正反対場所にありますよね。
例えば呉服しかり、そのほかの色を扱う仕事だと、「見本の色に近づける」ことが当たり前にあるんですよ。僕らの場合は黒色なので、いろんな色を混ぜて黒にするんです。
今回はやっている工程は同じであっても、使われる状況下が違うので。足元に家紋って、なかなかないデザインじゃないですか。
最近だとデニムにワンポイントとして紋を入れているものだったり、ハンカチやスマホケースに入ってるものは見たことありますけど、今まで家紋って言われると、「胸紋二つと背紋」がごく当たり前。
まさか靴に紋が来るなんて、今まで見たことなかったですよね。驚きと「そういう考え方があるんだな」って思いました。
ハンカチなんかはなんとなく、形が想像できるというか…。
HANAO SHOESは想像ができなかったです。それも含めて面白かったですね。

Q.Whole Love Kyotoの取り組みについて、どう思われますか?

「伝える」ことって、大事だと思うんです。伝えないと、メッセージっていうものがなくなってしまう。業界の中だけで言っていても、広まらないじゃないですか。これをおこたってしまったら、もう文化が途絶えてしまいますから。

あと30年後を考えると、もう終わっているかもしれない。継承されていかないと、減っていくことも事実。そう言った面で、伝える方の存在は必要不可欠なんですよね。伝えていかないと、未来にはこの文化が消えかかってしまうので。

Made in Kyotoにこだわって、京都の伝統に携わる職人さんの技術をファッションに落とし込むブランドということを聞いたときは「なんていい取り組みなんだろう」と思いましたね。
なかなかそういう部分にフォーカスを当ててくださることってないですよ。

 

つづく

2020.12.01更新

About Whole Love Kyoto -interview 02-
HANAO SHOES craftsman
“KUROMONTSUKI”
FUJISAKI SENKOU
Fujisaki Teruharu

Text by: Kawaguchi Minamo
Photo by: Nakata Kenta


About Whole Love Kyoto -interview 02-
HANAO SHOES craftsman
“KUROMONTSUKI”
藤崎染工 藤崎照治

文:
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)

写真:
中田拳太