京都文化
あ、うん通信

#02 “漢詩・篆刻”とは?

京都芸術大学 基礎美術コースでは、さまざまな分野の先生方から実践的な授業を受けます。

それは、授業というより “稽古” といった方がふさわしいかもしれません。そんな稽古さながらの授業の内容をお伝えするのが、この「京都文化あ、うん通信」です!

基礎美術3期生のふたりが息を合わせて学びを深めていくという意味を込めて「京都文化あ、うん(阿吽)通信」を始めました。

私たちと一緒に、先生方から日本文化を学びましょう!

*今回は、基礎美術コースの椿昇先生にもコメントをいただきました。

漢詩という名の宇宙

篆刻の授業が終わり、続いて漢詩の制作に入ります。
中学校や高校でも古典の授業がありましたが、よくよく考えると漢詩を自分で「作る」ことはありませんでした。もしかしたら、漢詩を読むだけでなく自分で考えて作ることで得られるものもあるように思います。
佐藤先生によると、少し昔の時代では普通に暮らしていた一般人も漢詩や篆刻を作ること
が当たり前にできたそうです。当時は漢詩を作るための“マニュアル本”みたいなものが存在していて、それがあったから皆作れたのだとお聞きました。ですので、今回学ぶ漢詩や前回までに学んだ篆刻は、日本人の教養として必要なもののように感じます。
私達は日本文化をより深く学ぶべく、また日本人としての教養を身に付けるべく今回も基
礎美術のオンライン授業に取り組んでいきます。

椿先生:
なぜ漢詩なのと思ったでしょう。答えは簡単で基礎美術コースが基本と考える室町時代の文化を学ぶ時に、当時の多くの文献が漢文である事、また画讃と呼ばれる水墨画に書かれた文も漢文。おまけにその時代に使われていた漢字を今も僕たちは使っている。という事で漢字クイズとかでお茶を濁すのではなく、本格的に漢字の美しさを体験してもらうための授業になっています。高校の漢文が苦手だった人も佐藤先生のマジックで魔から鱗ですね。

まず、佐藤先生から漢詩の基本的な概要と基本的なルールを教わりました。
先生が私達のために作ってくださった“マニュアル本”が届いていたので、それを手に持って講義を受けます。
そもそも日本でいう「漢詩」とは、中国の詩と日本の漢文で作られた詩を包括したものを指すのですが、中国では漢の時代に作られた詩を漢詩と呼ぶそうです。今の漢詩は色々な経緯を経て、唐の中頃(8 世紀)に五言詩や七言詩として完成しました。私達が学ぶのは初心者が一番作りやすいとされる五言絶句と七言絶句になります。

椿先生:
おさらい:絶句は四行で律詩は8行ですよ。

ここに漢詩のルールを全て書くことは出来ないので、簡単にいくつか抜粋して紹介すると
「一句目と二句目、三句目の最後の文字は韻を踏む」「1 つの詩の中に同じ文字や同じ意味を表す文字(夜、暮、夕など)を使ってはいけない」など厳格に決められています。
私達が想像していた以上に漢詩は難しく、先生の教えやマニュアル本が無ければ到底作る
ことができないものだと思いました。実際に簡単な句を作りながらルールを覚えたり、最後にそれぞれが提出する漢詩の構想を練っていきました。

椿先生:
ゲームのルールはみんなすぐ覚えるでしょ。同じ事で慣れてないから今はびっくりするだけです。案ずるより産むが易し!今の中国語ではこう書きます「车到山前必有路」。

谷口
佐藤先生が授業中に孔子の言葉を紹介してくれることがありました。
孔子をはじめとした諸子百家の教えを学ぶたびに「人の本質は今も昔も変わらない」ことを思い知らされます。
「自分を分かってくれないことを嘆くよりも、まず自分が人の良いところを見つけなさい」や「十分な知識もないまま自説を創作するのではなく、よく話を聞いて、よく書物を読みなさい」などの現代にも通じる本質を射た教えが、古典には宝石のように詰まっていると感じます。多くの優れた詩から学びを得ながら、言葉を選んで紡いでいきたいと思いました。

椿先生:
世の中には「変わること」と「変わらないこと」があります。新しい技術など変わることを追いかけるのは大学の授業だけでは無理で、会社に入っても一生学び続けなければなりませんね。でも変わらないこと「古典」こそ大学の時に学ばねば一生学ぶ機会は失われてしまいます。基礎美術の基礎の意味は「古典に親しむ」事が含まれています。これを欧米風に言えば聞いた人もいるかもしれませんが「リベラル・アーツ」(ローマ時代に語源があります)と言います。

下尾
良い作品というのは、捻りがあって難しい、人を考えさせるようなものだと思っていまし
た。しかし、漢詩とは、いかに難しくとも肝心な詩の内容伝わらなければ意味がありません。詩に描きたい景色、人物、季節、感情、五感…、その要素を決められたルールの中で表現することはとても高度です。自分自身が良いと思う表現ではなく、読む人がその情景をいかに想像できるかが重要なのだと学びました。
七言絶句という二十八字の中には、広大な宇宙が広がっていました。

椿先生:
そうなんだよね、大きな空間性が大陸で育った漢詩の特徴です。だから時々日本人には恥ずかしいくらいの大きな数字が出てきたり(無量とか大数とか恒河沙とか)まさに宇宙ですね。

谷口
私は上の「夏日海村」という詩を作りました。普段何気ない日常を過ごしていて感じる無常の種を、夏の青い情景とともに綴った詩となっています。佐藤先生とZoom でやり取りを重ねながら、まだまだ稚拙ではありますが、こうして1 つの漢詩を作り終えることができました。
実際に下手でも一度制作してみたことで漢詩の基本的なルールを知ることが出来た上に、
昔の人がどのような想いで詩を作ったのか歴史的な背景を調べながら考えてみるキッカケ
にもなりました。「ただ難しく分からないモノ」であった漢詩と当時の人たちが、自分の中で近く親しみを持てるようになったのが今回の授業での大きな収穫となりました。

椿先生:
谷口君がタイムマシンで50年くらい未来に行って詠んだ詩のような印象
(^^)でも美しい詩です。課題が終わったら等身大で今のコロナで遠いとこ行けない悔しいぞ!みたいな詩も作って欲しいですね。

下尾
私は「客中偶作」という漢詩を作りました。人生の中で、今いる場所から逃げ出したい、誰も知らない地に行きたいと思ったことはないでしょうか。この詩では、独り過去を思い歩き続ける、そんな旅人の様子を描きました。
自分が表現したい内容と、それに見合った言葉がルールによって上手く噛み合わずかなり苦戦しました。何度も何度も推敲を重ね、先生に添削をしていただきながら制作を進めていきました。最終的には言葉を先生に選んでいただき、無事一つの漢詩を作り上げることができました。
制作以前は、形式に沿って言葉をはめ込み文章を作ることは「シンプル」だと思っていたのですが、字数や声調、韻など様々なルールの上で漢詩が成り立っており漢詩の奥深さを痛感しました。そして、シンプルのようで複雑、というのはどの日本文化でも当てはまることだなと感じました。

椿先生:
これもなかなか大人びた詩ですね~。雁をトンボにして菊を一面のひまわり畑にして、並んで歩くボーイフレンドの髪を洗った石鹸の香りにキュンとなる、あー夏サイコウ!というような詩も作ってみて欲しいな~

学びで一番大切なことは、
1:先生の指導で作品が出来たあと
2:間髪を入れずに、立て続けに、その日のうちに
3:いくつかバリエーションを作る(復習)
4:その習慣がつくかつかないかです
5:出来た気になって満足が一番アブナイ(^^)

※次の課題レポートもがんばってくださいね〜

今回はここまで!
次回の「あ、うん通信」では、漆芸の制作をレポートします。

 

つづく

2020.1.1更新