イノダコーヒへ、ようこそ。

#01
座れない「イノダ本店、5番テーブル」

創業1940年、今年80周年を迎えている京都のコーヒーの代名詞、イノダコーヒ。
京都の街の真ん中に4店舗、駅に2店舗を構え、
京都の朝の文化、京都のコーヒー文化をつくっています。

創業者の猪田七郎さんは、なんと、アーティスト(絵描き)。
コーヒー缶や赤ポットのロゴマークなど、今も変わらず七郎さんのデザインのまま。
80年経っても古くならず、むしろ新鮮でかわいいブランドのシンボルです。

このインタビューは、80年経っても揺るがない「京都のイノダ」、
その「イノダらしさ」「他のコーヒー屋との違い」を聞き出すために
本店、四条支店、三条支店の3店舗の店長に閉店後集まっていただき開催されました。(2020年 9月24日 18:30より 本店メモリアル館にて)

京都の中心地の徒歩圏内にある3店舗ごとの特徴から、それ以外のお店の話まで、
そしてイノダコーヒがイノダコーヒである秘訣へーーー。
笑い話の中に、京都の伝統文化のヒントがあります。

イノダコーヒへ、ようこそ。

 

座れない「イノダ本店、5番テーブル」

酒井:まずは植坂さんにお聞きします。
イノダコーヒ 本店には、「5番テーブル」?があって、そこはたとえば僕が行っても座れないということを聞きました。それは事実でしょうか?

植坂さん:はい、朝は事実です。座れません。
開店から10時ぐらいまでは座れません。

酒井:では、11時に行けば座れますか?

植坂さん:いつもいらっしゃる団体さまがお帰りになられて、次はお昼からのグループがあるのですが、その間はワンクッションいけます。10時までの間に何回転かするんです、グループが。
朝一番の開店前から、私たちが出勤する以前に座っていらっしゃるんです。

オーディエンス:(笑)(笑)

植坂さん:昔から、開店前から入ってきてくださって、新聞もホッチキスで止めて並べてくださってるんですよ、その常連様が。

酒井:お客さんが?

植坂さん:はい。そういう状態が昔からで(笑)
今も同じようにお客様が朝、私たちよりも早くいらっしゃって、いつも同じテーブルに座って、7時のオープンを待っていらっしゃるんですよ、新聞読んだりして。
そのテーブルは5番がメインなんです。いつもの朝いつも同じ方が座られます。
で、帰られたらまた次の方がいらっしゃるっていう、そういうテーブルです。
ですので、そこは開店の7時から10時ぐらいまではその常連様で回転するのでお入りいただけないです。1人でもいらっしゃったらお入りいただけないです。

酒井:は~~~~~。

オーディエンス:は~~~ すごい。

酒井:…ちょっと常識的には考えにくいことだと思うのですが、そのようなことが始まったのはなぜでしょう?

植坂さん:そうなんですけど、正直申し上げまして、このお店ってやっぱりお客様が昔から作ってきてくださっているんです。
営業しているのは、私たちですが、お客様がこの雰囲気を作ったり、京都のイノダコーヒの朝の雰囲気を作ったりをずーっとして来られたので、その雰囲気を崩してはいけないんですね。
私たちはそれを守っているんです。
だから、その雰囲気を他のお客様には感じ取っていただきながら、“ちょっとお入りいただけない”っていう雰囲気を出しています。
あと、うーんなんだろう、観光のお客様もそういう旦那衆がいらっしゃるのを見たら「あ、京都ってこんなんなんだ」っていう、普段の京都を感じとってもらえると思うんです。

酒井:なるほど。 植坂さんは…

植坂さん:なんで私ばっかり(笑)

一同:(笑)(笑)

酒井:いえ、まだ5番テーブルのことが掴みきれていなくて…。
植坂さんは入社されてどのぐらいなんですか?

植坂さん:入社して25年目?24年目?

河本さん:26じゃないですか??

植坂さん:25年目じゃないですか?24年経った、5年目。

河本さん:え、あ、そう?

植坂さん:25年目!

河本さん:ほんとですか?(笑)

酒井:どっちでもいいんですけど、決めてほしいです(笑)

植坂さん:なんでそんな…(笑)

一同:(笑)(笑)

植坂さん:25年目です!!

 

お客様が教育してくるお店

酒井:25年前にも、すでに5番テーブルは存在していたのでしょうか?

植坂さん:はい、その頃は5番じゃなかったんですけど。
今は手前にあるんですが、その頃は奥にあったんです。

酒井:はい。

植坂さん:怖い。怖かった~。常連さんは怖かったです。
その常連様に、鍛えられるんですよ私たちは。

オーディエンス:へ~!

植坂さん:だから弊社は新入社員教育とかじゃなく、お客様が教育してくださるんですよ。

酒井:あの、どんなふうに教育されるのか、具体的に教えてほしいです。

植坂さん:どんなふうに?どんなふうに…

酒井:他のみなさんも教育されましたか?佐藤さんとか?

佐藤さん:教育…

植坂さん:佐藤はされてますよね。

佐藤さん:最初ちょっと本店にいまして、その時に色々。まず社会常識からです。作法であったり。

植坂さん:“イノダとは”をこう、植えつけていかはるんですよ。私たちに、お客様が。
先輩、上司が教えてくださるんじゃなくって、お客様がイノダとはこんなんなんや、イノダの本店はこんなんなんやっていうのを植えつけていかはるんですね。

酒井:とても面白いですね。

河本さん:こわいんですよ…それが。怖かったよね?

植坂さん:ねぇ、こわいです。そらもう鞭でも持ってるようなおじいちゃんとかいて、

酒井:鞭持ってる…??

植坂さん:持ってないですけどね(笑)持ってても杖ぐらいですけどね(笑)

オーディエンス:笑笑

植坂さん:本当に怖かった、でもそうして「イノダってこんなんなんや」を教えられて、崩せへんとこ、こだわりを守っていくのは今私だよなって。
5番テーブルもそう。守っていかなあかんなって思っています。
あのテーブルなんやろって思うでしょ?

酒井:はい。

植坂さん:観光のお客様にも、そう感じてほしいんです。そういうテーブルです。

 

本店の営業部長、インコ

酒井:分かりました、分かったか分からないけどわかりました。
では、本店の名物は5番テーブル、とインコでしょうか?

植坂さん:インコですね。

オーディエンス:(笑)(笑)

植坂さん:毎日仕事しているんです。

酒井:インコが??

植坂さん:はい、うちの営業部長です。

酒井:どういう仕事するか教えてください(笑)

植坂さん:もう愛想がすごくいいんです。
私たちには「はぁ?」とか言ってくるんですけど、お客様には頭出して「撫でて撫でて」みたいなね(笑)

酒井:ほんとですか(笑)

植坂さん:あれご存じないですか?

酒井:存じません、すみません!(笑)

植坂さん:あら、いっつもパッと食べてパッと帰らはるから。

酒井:はい、そうです(笑)その節は(笑)

植坂さん:愛想いいです、インコは名物です。代変わりはしてますけど。
昔はね、大っきいオウムだったんです。

オーディエンス:へ~

植坂さん:喋ってはりましたね。

酒井:そもそもなぜインコやオウムがいるんでしょう?

植坂さん:これも先代がずーっとここにオウムを飼ってはって、その名残ですね。
「ここにはなにか居ないといけない」っていう。
お客さんもそう覚えてはりますからね、席入るよりも先に立ち寄られます。
「先、あいさつしてくるわ」って。

酒井:インコに?

植坂さん:インコに会いに来はる。そういうお客さんもいはります。

酒井:「イノダのインコグッズ」いるかもしれないですね。

植坂さん:あ~、それはまあ…。どちらでも…。

河本さん:このライン(写真参照)私は好きですけどね。

植坂さん:このライン私も好きです、はい。
ここ皆さん写真とらはります。
冬場はインコいないんですけど、寒さに弱いので。
その時はやっぱり寂しがられますね、お客様から。

酒井:というわけで、本店の名物は、「5番テーブルとインコ」っていうことでいいですか?

オーディエンス:笑笑

植坂さん:「本店の名物、5番とインコ」って、そういうかんじ?そういう括り?
括り方がちょっと違う気がするなぁ、本店の名物?

佐藤さん:コーヒー以外ってことですよね。

 

つづく

 

2021.1.1更新

Welcome to INODA COFFEE
#01

INODA COFFEE interview

interviewer:
Yosuke Sakai

interviewee:
Rieko Uesaka
Jyunko Kawamoto
Tsuyoshi Sato

Text:
Hanaka Suzuki


イノダコーヒへ、ようこそ。
INODA COFFEE interview
#01

聞き手:
酒井洋輔

話し手:
植坂理栄子さん
河本純子さん
佐藤 剛さん

文:鈴木はな佳(ファッションデザインコース)