つくるひと、つかうひと
#15「桶」

京都芸術大学 副学長
小山 薫堂さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。

そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。

時代の流れに合わせてあり続ける伝統工芸。それに関わる人たちは、どのようなことを思いながら伝統をつないでいっているのでしょう?

このコンテンツでは、ひとつの工芸品について「つくるひと」と「つかうひと」それぞれのインタビューから見てみたいと思います。

今回ご紹介するのは、京都芸術大学の副学長を務める小山 薫堂さんです。日々、丁寧な暮らしを心がける小山 薫堂さんの工芸品のある暮らしを伺いました。

 

小山 薫堂さん

熊本県天草市出身。1964年生まれ。放送作家、脚本家。
京都芸術大学副学長。京都市「京都館」館長。
大学在学中に番組制作アルバイトを経験し、放送作家として活動開始。
映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。他、下鴨茶寮主人、2025年大阪万博では、テーマプロデューサーを務める。「くまモン」の生みの親でもある。

「桶」について使用前のイメージやご存じの知識などはどんなものがありましたか?

そもそも、木桶は僕、普段から日々使ってます。お風呂で。
なので、どんな桶がくるのかなと思って、楽しみにしてたんですけど、もっと分厚い桶がくるのかなと思っていました。江戸の桶っていうのはね、もっと分厚いんですよ。
厚かったりとか、もっとこう男っぽいっていうか。
とか思ってたら、すごく繊細で。「たる源」さんの桶に似ているなってものがきたんで、
あぁ、こんなに繊細なものだったんだって思いましたね。シュッとしてて。
でも、華奢なんだけど決して脆くはない。しっかりとしてるんだろうなって見て思いました。

軽いんですか?

軽いですね!思ったより全然軽いし。あとやっぱり香がとてもいいですね。
僕がもともと使っていた桶も薄いんですけど。桶屋近藤さんの師匠である“中川さん”の息子さんが作られたものを使っていました。

桶を生活にどのように取り入れましたか?

桶は、日頃から当然、お風呂の中で使う「湯桶」としてはもちろん、そのために作られているのですけれども。あのね、あれくらい繊細で美しかったら、やっぱりね、飾っときたくなるんですよね。鑑賞するとしても非常に価値があるというか。普通、鑑賞するものは「絵」もそうですし、「彫刻」もそうですし、見るだけじゃないですか?
それ自体に、実用性はあまりないじゃないですか。もしあるとしたら、ブロンズ像みたいなもので頭殴るみたいなね笑 ねぇ、殺人事件になるとかそういうのはあるかもしれないけど、それ以外はなかなか無い。でも桶は「実用性を持った美術鑑賞品」であると思うんですよ。だから、僕はまずこの桶を飾ったんです。
どういう風に飾ったかというと、こんなふうに飾りました。

これ、知ってますか?アマビエっていうんですよ。
熊本の疫病を鎮めたと言われる妖怪。お寺ん中で見つかった、熊本で描かれたといわれる妖怪で、すごく全国的にも流行ってたんですけど。
それを陶芸家の村田 真さんが作って、売ってたんですよ。それを買って、置いてたんですけど、ただ一個アマビエがあるよりも、この桶がひとつのフレームとして存在したら、アマビエのお家みたいにも見えるし。神社的空間にもなってる感じがして。
いい気が流れてる感じがするじゃないですか。桶の中に。
そういう意味があって立てて飾るっていうのをやってみました。

アマビエを隠してみてもいいかもしれませんね。

あぁ、おもしろい!
本来、そういうものって神社とかでも隠されてるものですもんね。

いいですね。フレームとして使うっていう。
他にもありますか?

あとは、すごい実用的な方法です。
これは、まあ誰もが一番使いやすいやり方かと思うんですけど。僕は、このとっくり。
フラスコなんですけど笑
とっくりだと中が見えない。熱燗にはとっくりって向いてる気がするんですけど。
冷やす時には、これくらい薄いガラスのほうがよく冷えるし。ガラスのとっくりもあるんですけど、このフラスコがすごい安定してて、安い。これ、800円だったかな。

小山さんにとって、安いことが大事なのは驚きましたね笑
でも、間違った使い方をするのを面白がってますよね。

いやいや、間違ってない笑 これほんとに使いやすくて、何ミリリットルがあんなに正確に示されてるわけだから。で、ちょうどこのフラスコにあう大きさのものがなかなか無いんですけど、この桶がぴったりだったわけですよ。

フラスコを入れて冷やすっていうのは、どういった理由で思いついたんですか?

これは、ベネチアのホテルチプリアーニのプールサイドで白ワインを頼んだら、こういう感じに出てきたんですよ。それは、もちろん木桶でもないし、フラスコでもないんだけど。こう、デキャンタっていうかカナフェに氷をはって、おっきなボールがあって、それに白ワインが注がれて、割って入れて飲むっていう。
それがとても心地よかったわけですよ。それで、真似してみたっていうのが理由です。

最後に独自の視点でこの工芸品に星をつけてください。

そうですね、、「華麗な所作になる」で★★★★★です。
これはね、祇園の芸妓さんに聞いたんですけど、ものを扱う時に、そのものに想いをはせて、そのものが壊れたりしないように大切に扱う。そういう所作をすると自然にとても華麗に見えると教わったんですよ。
だから、なんでもいいけど、普段使ってる携帯とかでも、ものすごく壊れやすいものを扱うように扱うと、全然違うでしょ。だから、この桶もなにかそういう「触れる人に丁寧に触れさせるオーラ」がある。細かったり、それによって、この桶でお湯をかぶる時も、バーンってかぶらないと思うんです。ゆっくりになりますよね、動作が。
そういう魅力があると思います。

 

 

おわり

 

2021.11.1更新

 

 

京都の大徳寺近くに工房を構える「桶屋近藤」。
この桶には、一目ではわからない気遣いという美しさがあります。
そのひと手間かける気遣いが使いやすさとなり長く愛される品となっていきます。

【桶屋近藤】吉野杉湯桶
使いやすさは、素材の肌触りや軽さだけではなく、計算されたサイズからも感じます。
例えば本や小物を入れたり、果物を入れるバスケットの代わりにもなります。シンプルだからこそ用途や場所を選ばない使い方ができるのも魅力です。