職人interview
#26


草履|02|鼻緒の付け心地で履き心地は変わる

人やお店で賑わう祇園・花見小路にある、創業64年の「、や(ちょぼや)」様々な色、形の草履や下駄。
舞妓さんの「おこぼ」などが店先に並んでいます。
お店の戸を開くと、現当主の櫻井 功一さんが畳の上で作業されています。お話をしていると 近所の方が世間話をしに、外国人観光客が「これは何?」と尋ねてきたり、「鼻緒がゆるくて」と芸舞妓さんが修理にきたり、次々に来客が。櫻井さんは丁寧に、軽やかに対応されていました。祇園の舞妓さんたちに「お父さん」と慕われている櫻井さん。草履の美しさ、履き心地の秘密について教えていただきました。

鼻緒の付け心地で履き心地は変わる

──この仕事で一番難しかったこととうれしかったことは何ですか。

正直言ってこの仕事をやってて、難しいと思ったことは一度もない。ただ1足1足完璧に、同じように作ることが難しいことかな。うれしいことはお客さんが履いてくれて、「ああ、履き心地よかったよ。」って言っていただけることが一番。この仕事やっててよかったなって。いやなこともふっとぶよね。お客さんから、お手紙やお電話もらったりして「心地よかったよ。また買いに行くね。」って言ってくれる、 その一言が職人としてうれしいね。

──草履のベースを作っているのは別の職人で、鼻緒を作っているのも別の職人で、履き心地はいろんなところによるんじゃないですか?

ベースにもよるし、鼻緒にもよるし。最終的に比重的には8:2で、最終的にはここ(自分のパート)やと思うわ。ここが80%しめてると思う。

──履き心地の80%…

80%は絶対しめてると思うわ。鼻緒の付け心地で履き心地は変わる。あの、手前味噌かもしれんけどもしかしたら10:0かもしれんな。

──鼻緒をすげる職人さんは他にもいらっしゃいますが、「ちょぼやさんがいい!」という方がおられるってことですか?

ファンがな。いる、まあ今言ってくれたようにこんなんできる人はまだたくさんいるはずやけども、その人のお足に合ったように作れる職人はなかなかいいひんやろね。お客さまの気持ちになって作らなあかんのに、仕事の金儲けのために作っている人たちは、 履き心地のことじゃなくって、これを売ることしか考えてないと思うねん。だから、そこがよその草履屋と僕との違いかなと最近思うようになりました。


挑戦はもう毎回毎回、毎日毎日、毎時間毎時間やりたい

──WholeLoveKyotoが生み出したHANAO SHOES(スニーカーに鼻緒をすげたもの)のような、 新しい発想などどのように思っておられますか?

変わったもん見るとやっぱりこれは草履屋でも何か利用ができるのかなって、まあヒントの1つとして、俺は見たよ。ああ、これはすごいなって脅威を感じている人もいるだろうけど、僕はそれをヒントとして草履で同じようなものが作れるのかとか、ああいう風な形を草履で、 例えばここにカバーつけてみたりとか。可能性を感じた。

──履物屋としてのこれからを、どう考えていらっしゃいますか。

背が高いのが流行るんやったら、そういうやつで面白いものを考えるとか、挑戦はもう毎回毎回、 毎日毎日、毎時間毎時間やりたいぐらいなんで、僕はできるだけ、目を引くようなもの、ただ目を引くだけじゃなしに実用で履いていただけるものをいつも考えている。よそにないもんを作って、お客さんに来てもらわんとね。ここしかないものを作って、ここに来てもらう。だから催事行かへんし、うちの草履欲しかったら来て下さいって。ここ一人でやってるから、 もし催事行ったりしてここ閉めたら、このへんの方達困るんで(笑)だからよそへ行かず、ここで、 ここでずっと。このお店の広さもうちのおじいさんが考えた広さで、2、3人入って満員でいいと。周りから見たら、ようさんお客さんが入ってはるなって、繁盛してはるんやなって見えるし、それでいい。広いお店にしてお客さん沢山入ってきても、対応する人は1人やし。

──そうですね。この狭さだと必然的に密接になります。

そうやね。ここはね。ただ、入りにくいって言わはんねん。
入ってきたらええって言いよんのに。


職人interview
#26
、や(ちょぼや)
櫻井功一

文:
溝辺千花(空間デザインコース)
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)

職人interview
#26


草履|02|鼻緒の付け心地で履き心地は変わる

人やお店で賑わう祇園・花見小路にある、創業64年の「、や(ちょぼや)」様々な色、形の草履や下駄。
舞妓さんの「おこぼ」などが店先に並んでいます。
お店の戸を開くと、現当主の櫻井 功一さんが畳の上で作業されています。お話をしていると 近所の方が世間話をしに、外国人観光客が「これは何?」と尋ねてきたり、「鼻緒がゆるくて」と芸舞妓さんが修理にきたり、次々に来客が。櫻井さんは丁寧に、軽やかに対応されていました。祇園の舞妓さんたちに「お父さん」と慕われている櫻井さん。草履の美しさ、履き心地の秘密について教えていただきました。