自然に見えるように
──とても細かい絵柄ですが、下絵は描くのでしょうか。
⼯芸の物は左右対称だったり、きっちりとしなければいけないので、少しだけ付けたりするのですが、仏様の場合は傷つけられないので、下絵は描かないんです。下絵よりも細い線で柄を作ることもあって、見えてしまうんです。ですから、ほとんど一発で截⾦をします。逆にそうして経験していかないと、いざという時にどう対処したらいいかだったり、柄の活かし⽅や魅せ⽅が分からないままだと思うんです。
例えば、仏様に真っ直ぐ線な線を描くとしたら、数値的に真っ直ぐにしていくと、目で見るとおかしく見えてしまうんです。膨らんでいるところ、シワの部分の広がりに沿って、ずっと繋がって見えるように、⽬で⾒ながら調節していくんです。服の膨らみを強調する線の描き⽅をしていかないと、彫刻の膨らみと柔らかみを壊してしまうので、少しずつずらしながら描いて、「自然に見えるように」。やっぱり滑らかさ、膨らみが感じられるまで⻑くかかりますね。
──図案の線がとても細くて驚きました。
ひとつの仏様でも、肩周りや腰回りでは線の太さを変えています。
お寺さんからの注⽂で線を荒くしたり、滑らかにしたり…お施主様のご依頼によって柄の大きさ、魅せ方を変えたりしています。⼤きい仏様だと、本当に細かいですよ。
⾦の魅⼒、截金の魅力
──截⾦を付けれない素材はあるのでしょうか。
付けれることには付けれるんです、意外と使うのは⾦箔と糊だけなので、見るだけだったり飾ったりするだけでしたら結構残ります。しかし動かしたりすれたりすると剥がれたりしてしまうんです。基本的に⽊⾯の上ですることが多いですね。
──大塚さんの思う、截金の魅力とは。
截⾦は様々な事ができます。⾦⾊はどんな⾊にも合って喧嘩をしない、これが⾦の魅⼒、截金の魅力だなと思います。
──京都ってどんな街?
仕事がしやすい街ですね。一人で仕事を始めたので、わからないことばっかりで。竹のことも、木のこともわからないことばかりでした。竹のことは竹工芸の方だったり、木については指物の方、漆の作家さん…。それぞれの専門分野の方が、京都には「身近」にいらっしゃるんです。だからこそたくさんの方に助けていただいて。そういう横のつながりは京都だからこそだなと思います。
職人interview
#36
截金作家
大塚華仙
文:
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
大塚華仙HP:
https://kasenotsuka1.thebase.in
そんな截⾦の技術を独学で身につけた大塚華仙さん。「京都という土地だから、たくさんの方に助けていただきました。」京都だからできる、ものづくりのありかた、そして、截⾦の魅力についてお話ししてくださいました。