HANAO SHOES JAPAN
#10


石川|加賀友禅|金丸染工

伝統的な手仕事は「日本の美」として世界に誇れる、なくしてはならないものと私たちは日々感じています。HANAO SHOES JAPANは織物・染物の伝統が多くの人の目に触れ、見る人それぞれがゆかりある地場の手仕事に興味を持つ機会となるプロジェクトです。
ここでは47都道府県全ての工房にインタビューをお願いし、ここでしか聞けないお話を聞いています。

今回は金丸染工3代目金丸修一さんの娘、金丸絵美さんにお話を伺いました。

100年続く金丸染工

──「金丸染工」の創業年数、何代目かについて教えていただきたいです。

創業年数は103年、父の代で3代目になります。

──103年と聞くと歴史を感じます。

そうですね。

──金丸染工には7名の作家さんがいらっしゃると思うのですが、分業されているのか、それとも一人一人で作業されているのですか。

7人は独立し作家としての仕事をしています。

私たちの工房は悉皆業(しっかいぎょう)というプロデューサーの仕事もしているので、7人の作家の悉皆もしております。加賀友禅には沢山の工程があり多くの職人さんによる分業制になっております。

──落款と言うのは自分でデザインして作っているのですか。

はい。各々のおもいでデザインされています。
画家の方のサインと同様に加賀友禅には落款という仕組みがあって。 修行を経て落款登録されます。

──皆さん修行をされているんですかね。

はい、そうです。


プロデューサーである悉皆業

──ウェブサイトで加賀友禅作家兼悉皆業っていう肩書を拝見したのですが、この悉皆業について教えていただけますか。

悉皆業は問屋さんからの生地を一つの作品にして納める仕事です。作家の方々や職人さんを通していかにいい着物を作り上げるかを考えます。

──なるほど。それもやりながら作家さんとしてこだわって二つ一緒にやっていると言う感じなのですね。プロデューサーと聞くとかっこいい感じがします。

表現が難しいんです。

──工房さん自体にも染め織物にも歴史があると思うんですけど、そういった歴史についてお話していただけますか。

加賀友禅の歴史は室町時代にさかのぼるんですけど、最初は梅染と言う無地染と、加賀お国染と言うのがこの加賀の地にありました。
その後江戸時代中期の1700年頃、宮崎友禅斎という方が京都で京友禅を確立されたのですが、その友禅斎は晩年を金沢で過ごされたんです。その時に、元から染色技法が発達していたこの加賀の地に友禅の技法を組み込んで作られたのが加賀友禅の始まりと言われています。

──加賀友禅ならではの強みなどはありますか。

やっぱり京都は華やかですごく豪華絢爛な印象が強いですが、武家文化で発達した加賀友禅は、多色使いなのに淡彩で写実的で、そういったところが加賀友禅らしいのかなと思います。

──確かに写真を見ると二つの産地で全く違いますね。


細かな工程を経て完成する加賀友禅

──どういった作業工程で加賀友禅ができるのか、基本的なことも含め教えていただきたいです。

まず始めに図案作成というのがあります。白生地にデザイン画を写していく下絵、下絵の上に糊を置いていくのが糸目糊置き。これが防波堤の役割をして、彩色という柄を塗っていく作業になります。それが終わると柄の部分をマスキングして、柄のところに色が入らないようにします。一度柄部分の色を蒸して定着させてから、地の色を染め、地色を定着させる蒸しという作業がもう一度行われます。

最後に今までの糊を水で洗い流して、生地を真っ直ぐにするため湯のしという工程を経て生地を成形し、仕立てて完成となります。

──凄い、工程が12個もあるんですね。

細かく言うともっと工程は多くて、名前にならない工程も沢山あります。

──昔は糊を川で洗い流していたのですか?

はい、そうです。浅野川の川沿いに工房があって、昔は川で流していました。

──今はそれを工場内で行われているということですか?

そうです。人工の川に変わりました。


一人では作れない。それが魅力。

──職人さんは分業という事を伺ったのですが、自分の仕事が終わって次の方に渡すときはやはり職人さん同士のコミュニケーションをとって作り上げるという事なのですか。

そうですね。そういうやり取りはしていると思います。    

──職人さんのコミュニケーションあって一つのものができているのですね。

そうです。もう一つ言うなら職人さんと職人さんの間に入ってコミュニケーションをとる役割が、悉皆業だと感じています。      

例えば糸目糊の職人さんから彩色の職人さんに生地が移る時、それを持っていって「こんなんだったよ」とか「もっとこうして」とか、そういった感じで間に入っていく人が悉皆業なのです。

──それがさっきのプロデューサー

そうですそうです。

──なるほど、今一つにつながりました。悉皆業の人がああしてこうしてっていうのがあって、職人さんもいて。本当に一人では作れないですね。

そうですね。それは本当に感じています。

──やっぱそれが加賀友禅の魅力な気がします。

私もそうだと思います。

──金丸染工さんのところで地域とのつながりなどはありますか。

工房の歴史でいうと、元々は加賀友禅ではなくて染物屋でした。それが2代目の時に加賀友禅も扱う染物屋として変わりました。
伝統工芸はその土地の個性や魅力だと思っているので、これからも石川という土地の個性や魅力を発揮できる仕事をすることがこの地域とのつながりになるのではと考えています。

──加賀友禅の素材に何かこだわりがあったりはしますか。

そうですね。基本的には正絹(しょうけん)の凹凸のある生地を染めています。
理由としてはやはり絹の美しい光沢とか染色のきれいな発色とか着た時の肌触りの良さなどからこの生地が選ばれているのかなと思います。

──絹もそうだと思うのですが、色の原料は何なのか教えていただきたいです。

一番最初は草木染だったと思うんですけど、今はいろんな色を調合させたり多色使いをするとかでほとんどが化学染料です。でもその流れもいろんな形を経て、今また草木染を取り入れている工房もいらっしゃいますし、原材料はいろいろ変化してきていると思います。


良き仲間でありライバルでもある京友禅

京友禅なども含めて京都と繋がりなどはあったりするのですか。

やっぱり着物は京都のほうが市場が大きいので、たまに京都で開催されている大きい展覧会に出展させてもらったりということがあると思います。
あとは作家展などの展示でコンペをして1位になった方が京都で表彰されたり、ということとか色々と関わりはあるような気がします。

案外関わりはあるのですね。仲が悪くなくて良かった、と素直に思いました。

多分良い仲間でありライバルでもあるような関係なのかなと思います。

他の産地のインタビューでも、他の染め織物があるから自分のところも負けてられない、というお話を聞きます。

やっぱり刺激になります。

それこそ47都道府県でお互い切磋琢磨みたいな…そうしたらすでにいいものがさらにいいものになりそうですね。

インタビューも見させて頂いて、刺激頂けますね。

ありがとうございます。北海道のアットウシは全部一人でやってらっしゃるので、加賀友禅とは反対ですね。

本当にすごいなと思います。それはそれで全部自己責任なのでやっぱり凄いと思います。


梅染からの大きな成長

染め織物の歴史として調べていたら梅染というのが出てきたのですが、それがどういうものなのか教えてください。

本当に無地で染めるだけなんですけど、梅を使って何重にもつけて染める方法だったかと思います。液につける回数で色の濃度を変える染色技法だったかな。

本当に梅そのもので染めている感じなのですね。

そうだと思います。実じゃなくて木とか葉っぱとか。

そういった染めから今の加賀友禅が生まれていったっていうことですよね。

はい。そういう染色技法ができる場所だったから、こうして加賀友禅が大きく成長したのかなと思います。

元々宮崎友禅斎が来る前から石川は染色が有名だったのですか?

はっきりしたことはわかりませんが、地域の風土や文化がうまく合わさって染色文化が育まれていったように思います。

染める工程の前にデザインする工程があると思うのですがどういう風に決められているのですか?

着物は基本的に問屋さんとお話しして、どんな着物をつくるか     相談しながら決めていくと思い     ます。作家さんそれぞれに作風があるのでそれに合わせて決まっていくことが多いと感じます。

確かにホームページを見ていて作家さんそれぞれ作風が全然違う感じがします。自分の中でこだわりがあってそういったものが出てくるのでしょうか?

そうだと思います。そこが面白いと思うしすごく素敵だと思うところです。


伝統を守りつつ、変化も遂げる。

今回なぜHANAO SHOES JAPANの企画に賛同していただけたのですか?

私たちは伝統は守らなければならないと考えているのですが、同時に時代に合わせて変化していかなければいけないと感じています。
HANAO SHOESの、伝統もすごく大事にしながら鼻緒をシューズに乗せるというところに、守りながらも変化もさせていくという所に自分たちの想いに近いものを感じてこの企画に参加させて頂きました。

思いを直接聞かせていただけて嬉しいです。

見せ方や伝え方が素晴らしいなと。提案自体も素晴らしいですがそこの部分もすごい素敵だなと思って見させていただきました。

今、私たちは職人さんがワクワクすることってなんだろうと考えているのですが、こういうことしてくれたらなという、希望のようなものはありますか?

私は加賀友禅の工程を全部入れたお皿を作っているのですが、下絵も糊置きも彩色も捨て糊も全部入れたデザイン、あえて染色工程をお皿にはめ込んだデザインにしているんです。それが47都道府県あったら良いなって思います。

地元の製品が47都道府県分あるというのはすごく魅力的で、職人さん同士でもすごく刺激になりそうですね。最後に、HANAO SHOES JAPANを通して加賀友禅に出会う方に向けてメッセージをお願いします。

今回Whole Love Kyotoさんの企画に参加させて頂いて、石川にある加賀友禅という工芸を多くの方に知っていただいて興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。

どの職人さんも知っていただいて実際に来てもらうのが一番嬉しいと仰っていました。

本当に仰る通りだと思います。

これから職人さんがわくわくすることを考えたり、日本の伝統産業は大切なことなのだと色々な人に届けたいと今回のインタビューを通して思いました。


HANAO SHOES JAPAN
#10
金丸染工
金丸絵美さん

文:
HANAO SHOES JAPAN実行委員会

撮影:
金丸染工

HANAO SHOES HP:
https://wholelovekyoto.jp/category/item/shoes/

金丸染工

場所:〒920-0921 石川県金沢市材木町29-4
TEL:076-221-2262
HP:https://kaga724yuzen.wixsite.com/kanamaru-senkou

HANAO SHOES JAPAN
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石川|加賀友禅|金丸染工

伝統的な手仕事は「日本の美」として世界に誇れる、なくしてはならないものと私たちは日々感じています。HANAO SHOES JAPANは織物・染物の伝統が多くの人の目に触れ、見る人それぞれがゆかりある地場の手仕事に興味を持つ機会となるプロジェクトです。
ここでは47都道府県全ての工房にインタビューをお願いし、ここでしか聞けないお話を聞いています。

今回は金丸染工3代目金丸修一さんの娘、金丸絵美さんにお話を伺いました。