きょうのお祭り手帖
#05


時代祭1|時代祭=京都の技術の集大成⁉

京都の三大祭のひとつ「時代祭」は、毎年10月22日に行われる京都の秋の風物詩です。時代祭の見どころは各時代の衣装に身を包んだ総勢2000人の京都市民が、約2kmの都大路を練り歩くところ。さまざまな時代の衣装を身に着けた壮麗な行列は、まさに動く京都の歴史絵巻です。見ているうちに、まるでその時代へタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
今回は、この装束行列で1番大切な要素である「装束」を担当されている六選会(伝統服飾工芸協同組合の略称。京都の古い装束屋さんが加盟されています)の1社、「松下装束店」の竹崎さんにお話を伺いました。

松下装束店は江戸時代中期頃創業といわれる老舗の装束店です。時代祭では「維新勤王隊列」「豊公参朝列」「中世婦人列」「神幸列」の装束や、道具の新調・補修を担当されています。

装束は古いものでは3・40年使っているものもあるそうですが、基本的には数年に1回のペースで作り直します。時代祭では「その当時あったものをそのまま作る」ということが重視されるため、衣装に使われる素材は天然素材だけ。文献等を参考に、当時の技術で当時の有職故実(ゆうそくこじつ)を元に再現されています。そのため研究が進み実際には違っていたと分かると、作り変えたりすることもあるそうです。

まずは装束屋としての普段のお仕事についてお聞きしました。

装束屋の主なお仕事は、神社における調度品や装束に関するものを「調達する」こと。

神社に普段置いてあるものだったり、特にお祭りで使う道具を取り扱っています。

たとえばお神輿の注文を受けた場合、お神輿を構成する木部や金工、紐などの部品に対し、お客様の予算や希望に合ったそれぞれの職人さんにお仕事を依頼します。

「私たちは衣装の修復などを請け負うことはあるのですが、道具類の修復に関しては、どれをどの職人さんにお願いするかといったコーディネーター業が、私たちの仕事の中心になっています。私たちがやっているのは、お客さんと職人さんとをつなぐ仕事なんです。だから、いろんな職人さんのことを知っていないといけない。技術の集大成がここなんです」

私は「装束屋さん」と聞くと、文字通り「衣装」という意味での装束だけだと思っていたので、思い浮かべていた仕事内容との違いに驚きました。神社やお祭りにはさまざまな道具が使われています。お神輿一つとっても、素材の違うさまざまな部品が組み込まれていて、それぞれの部品や素材のことを知り、そのうえで顧客の要望に合う適切な職人さんを選ぶためには、工芸に対する膨大な知識が必要です。まさにインタビュー中によくおっしゃっていた「なんでも屋さん」という表現が正しいのかもしれないなと思いました。

前日準備(当日の着付けのために、着付けをする場所に一人分ずつの装束を並べた様子)

時代祭では、前日までに装束を着る地域の方々に装束を届けに行ったり、装束の最終チェックを行います。人数も多いお祭りなので、その分準備することも多くて大変です。

お祭り当日は衣装の用意や着付けを行い、本番には途中で着崩れた装束をお直しする付き添いとして「直垂(ひたたれ)」という装束を着て、実際に行列にも参加されるのだそうです。

お祭りが終わったら、翌日から次のお祭りの準備を始めます。前日使った装束を片づけながら、次年度に直す修復品や新調品の見定めを行います。

そうして修復が行われ、また次の年のお祭りが開催されていきます。

時代祭の準備は前回のお祭りの翌日からすでにはじまっていた、というのが驚きでした。「やっと祭りが終わった」と思えば今度は来年の準備だなんて。

でも毎年あれだけの装束を用意するのだと考えたら、それが妥当な時間なのかなとも思います。

ちなみに、衣装がよく見えるおすすめの観覧スポットなどはあるのかもお聞きしました。

竹崎さんのいち推しスポットは、三条通だそうです。道の幅が狭く、観覧客も比較的少ないため、間近で衣装を見ることができるのだとか。

しかし、三条まで行列がたどり着くには出発場所からかなり歩く必要があるため、行列を歩かれる方たちもかなり疲れているそう。そのため、出発場所である京都御所内から観覧することができれば、行列を歩く方々も元気な状態で、衣装も着崩れのない、きれいな状態で見ることができます。京都御苑内は出発場所ということもあり混み合いますが、行列の説明をしてくださるアナウンスも聞こえ、場所取りができればとても良い観覧スポットになりそうです。一方で、気軽に見たい方は三条通からがおすすめかもしれません。

                   

最後に、時代祭と京都の職人の関わりについて、興味深いお話をお聞きしました。

天皇が京都から東京に移られ、それに伴い人口も流出し京都が少しずつ衰退した時期がありました。その復興事業のひとつとして平安神宮が創建され、その創建をお祝いするのが時代祭の成り立ちだと言われています。

時代祭には、そういった「お祝い」という背景もありますが、もうひとつの目的として京都の伝統工芸品を扱う職人さんたちの仕事を増やすため、という目的もあったそうです。

そのため今現在も道具や装束に関しては、京都の職人さんで力を合わせて作っているものが多くなっています。

「文化財保護という観点だと『本物が歩いてる』っていうことをイメージしながら見るとかなりおもしろいと思います。当時の技術でできる範囲、今の技術でできる範囲でそのまま昔のものを作っているので。これほど本物にこだわっているのは、時代祭しかないんじゃないでしょうか」

時代祭とは、京都の職人さんによる技術の集大成のお披露目の場なのかもしれない。お話を伺うなかで、さまざまな京都の伝統工芸の職人さんが時代祭に関わっているのだということを実感しました。

私たち KYOTO T5 が日頃から関わらせていただいている職人さんたちも「実は時代祭のあの装束に関わっているのかもしれない」そう思いながら時代祭を観覧していると、私たちの活動の意義も見えてきたような気がします。


〈時代祭〉

毎年10月22日(雨天順延)に行われる、平安遷都1100年を記念して明治28(1895)年に始まった平安神宮のお祭り。明治維新時代から平安京の造営された延暦時代まで、約2000人の市民が、時代ごとのスタイルに扮して京都のまちを練り歩く、時代風俗行列がみどころです。

〈維新勤王隊列〉

行列の先頭を歩くのがこの列です。戊辰戦争の際、官軍として参戦した山国村(現在の右京区京北エリア)の「山国隊」を模しています。笛や太鼓を持ち、「♪ピーヒャラ、ラッタッタ」と軽快なリズムを奏でる軍楽隊に、錦の御旗がひらめきます。

〈豊公参朝列〉

戦国の世を統治し、天下統一を成し遂げた豊臣秀吉の朝廷参内の様子を再現した列。最上級の様式で作られた牛車などが目を引き、当時の豊臣家の面影を忍ばせます。

〈中世婦人列〉

平安時代後半から桃山時代に至る女性たちの様子を再現した列。淀君や静御前などの歴史上の人物だけでなく、大原女・桂女といった女性風俗も見ることができます。

〈神幸列〉

平安神宮の御祭神である桓武天皇と孝明天皇が市中を巡幸されます。天皇の乗輿(じょうよ)である御鳳輦(ごほうれん)に正装の神職らが供奉する様子は圧巻です。


きょうのお祭り手帖

#05 時代祭-1
株式会社松下装束店
竹崎百合

文:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)

撮影:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)


きょうのお祭り手帖
#05


時代祭1|時代祭=京都の技術の集大成⁉

京都の三大祭のひとつ「時代祭」は、毎年10月22日に行われる京都の秋の風物詩です。時代祭の見どころは各時代の衣装に身を包んだ総勢2000人の京都市民が、約2kmの都大路を練り歩くところ。さまざまな時代の衣装を身に着けた壮麗な行列は、まさに動く京都の歴史絵巻です。見ているうちに、まるでその時代へタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
今回は、この装束行列で1番大切な要素である「装束」を担当されている六選会(伝統服飾工芸協同組合の略称。京都の古い装束屋さんが加盟されています)の1社、「松下装束店」の竹崎さんにお話を伺いました。