きょうのお祭り手帖
#06


時代祭2|京都を支える強い意志を音楽にのせて

京都の三大祭のひとつ「時代祭」は、毎年10月22日に行われる京都の秋の風物詩です。
時代祭の見どころは各時代の衣装に身を包んだ総勢2000人の京都市民が、約2kmの都大路を練り歩くところ。さまざまな時代の衣装を身に着けた壮麗な行列は、まさに動く京都の歴史絵巻です。見ているうちに、まるでその時代へタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
時代祭で、行列の先頭を行くのは「維新勤王隊列(いしんきんのうたいれつ)」。幕末の戊辰戦争の際、官軍(朝廷の軍)として参戦した山国村(現在の右京区京北エリア)の「山国隊」を模した列です。
今回は、この維新勤王隊列を担当する「朱雀地域」を支える「平安講社 第八社」の太田さんにお話を伺いました。

時代祭には、20の時代列として20の団体が参加します。

そして平安講社という市民団体がこの時代祭を支えています。平安講社は京都市内の旧学区を単位に構成されており、11の社に分かれています。今回、取材させていただいたのは「第八社」さん。中京区の朱雀地域というエリアです。

太田さん自身は、平安講社職員として行列の御供や安全管理などを担当されています。平成11年から24年間もの間、ご奉仕されているそうです。

朱雀地域は大正10年(1921年)から、時代祭に維新勤王隊列として参加しています。

時代祭がはじまった当初(1895年)は山国村の有志による奉仕でしたが、遠方のため参加が難しくなり、それ以来この朱雀地域が受け継ぎ、担当することになったのだそう。

山国村と朱雀地域は、京都御所を建造する際に木材を運搬するなど古くからつながりがあり、そのような縁から継承が決まったそうです。

時代祭の行列は持ち回りで毎年異なる学区が担当することが多く、社によっては数十年に一度しか担当しないということもあるそうですが、維新勤王隊列は毎年同じ学区(朱雀学区)が担当している行列です。なかには親・子・孫の3代にわたって行列に参加したというご家庭もあります。そのため、高い意識をもって練習に励む人が多いのだとか。なんと、時代祭のために海外赴任先から駆けつける方もおられるそうです。

道具に対しての愛着も深く、自分たちで衣装の虫干し作業なども行います。

練習はお祭り開催の約1か月前にあたる9月20日の「入隊式」で練習場所の体育館に神棚を設置し、神事を行ってからはじまります。また、毎回練習の始めと終わりには必ず二礼・二拍手・一礼の拝礼を行います。これは、時代祭での演奏は神事のひとつという意識で取り組んでもらえるよう、練習自体も神事として認識して行っているためだといいます。

「入隊式」を終えると1か月後の時代祭本番に向けて、毎晩1時間ずつ練習を行います。今年(令和5年)の行列参加者は中学生20人、高校生20人、その他大学生・社会人の合計68人。学生さんなどは、塾や習い事などもあり、近年は参加人数が少なくなってきているのだそうです。

舞台上に設置された神棚に向かって拝礼を行う様子。それまで談笑したりふざけあっていた学生さんたちも一瞬で静かになり、横で見学させていただいた私もなんだか自然と背筋を伸ばしてしまうような神聖な雰囲気でした。

さらにおすすめの見どころを教えていただきました。

維新勤王隊列の見どころは、なんといっても行進曲の演奏です。時代祭では「戊辰行進曲」と「朱雀行進曲」という2種類の曲が演奏されます。「戊辰行進曲」は行列中に行進しながら演奏される曲です。列の中でも4班構成で交代しながら、京都御所から平安神宮までの道のり約2kmにわたって演奏を続けます。

また「朱雀行進曲」は、京都御所での行列の最初と平安神宮での行列の最後だけに演奏されます。これを演奏することができるのは特に上手な精鋭のメンバーだけなのだそう。この特別な曲の演奏はぜひ聞いてみてほしいです。

延暦13年(794年)10月22日、桓武天皇によって京都に都が置かれました。時代祭はこの日に合わせて毎年行われています。そのため、10月22日は「京都のお誕生日」と言っても過言ではありません。

京都という都が誕生してから1200年以上、京都では先人たちがさまざまな歴史を紡いできました。太田さんは時代祭を「そんな先人たちの想いと行動に感謝する行事にしていきたい、そのうえで京都に対して何ができるかを考える日にしていきたい」とおっしゃっていました。

そのためには宗教行事ではなく、文化としてお祭りを残していく必要性があるとおっしゃられていたのが印象に残っています。

時代祭は単なる仮装行列ではなく、京都の歴史を顧みて感謝するお祭り。お話を聞いていて、観客としての意識も考えさせられました。

今年の10月22日は、京都に住み、京都で学ばせていただいている者として、京都に感謝を伝えたいと思います。


〈時代祭〉

毎年10月22日(雨天順延)に行われる、平安遷都1100年を記念して明治28(1895)年に始まった平安神宮のお祭り。明治維新時代から平安京の造営された延暦時代まで、約2000人の市民が、時代ごとのスタイルに扮して京都のまちを練り歩く、時代風俗行列がみどころです。

〈維新勤王隊列〉

行列の先頭を歩くのがこの列です。戊辰戦争の際、官軍として参戦した山国村(現在の右京区京北エリア)の「山国隊」を模しています。笛や太鼓を持ち、「♪ピーヒャラ、ラッタッタ」と軽快なリズムを奏でる軍楽隊に、錦の御旗がひらめきます。


きょうのお祭り手帖

#06 時代祭-2
平安講社第八社
太田興

文:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)

撮影:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)


きょうのお祭り手帖
#06


時代祭2|京都を支える強い意志を音楽にのせて

京都の三大祭のひとつ「時代祭」は、毎年10月22日に行われる京都の秋の風物詩です。
時代祭の見どころは各時代の衣装に身を包んだ総勢2000人の京都市民が、約2kmの都大路を練り歩くところ。さまざまな時代の衣装を身に着けた壮麗な行列は、まさに動く京都の歴史絵巻です。見ているうちに、まるでその時代へタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
時代祭で、行列の先頭を行くのは「維新勤王隊列(いしんきんのうたいれつ)」。幕末の戊辰戦争の際、官軍(朝廷の軍)として参戦した山国村(現在の右京区京北エリア)の「山国隊」を模した列です。
今回は、この維新勤王隊列を担当する「朱雀地域」を支える「平安講社 第八社」の太田さんにお話を伺いました。