森本さんが参加された「徳川城使上洛列」は京都市内の学区による持ち回りで、およそ20年に1度順番が回って来るそう。実は時代祭の行列に参加したのは今回で2回目。前回は役がついていなかったため馬にも乗らず、裃を着てお供する役割だったそうです。今回は「城使」役、簡単に言えばその列の一番偉い人「お殿様」の役でした。


時代祭の朝は早く、行列は早朝5時頃から着付けなどの準備がはじまります。支度が終わると「お迎え巡行」といって、部下役たちの行列が森本さんの家の前まで馬で迎えにやって来ます。午前中はそのまま馬に乗って町内を巡行し、お昼頃から京都御苑に移動。昼食などを終えた後、午後2時頃から行列がはじまります。そこから約2時間半ほど、京都御苑から平安神宮までの道のりを進んでいくのです。
1日の流れを聞いてみると、普段とは違う衣装で着付けもあるとはいえ、思っていたよりハードなスケジュールで驚きました。
御池通や三条通などの道路のど真ん中を馬で歩くことはめったに経験できないこと。そのなかを観客に見守られながら歩くのは「めちゃくちゃ気持ちええ」のだそう。緊張することもなくリラックスして、むしろ人一倍楽しまれたようで、スマホのカメラロールを見せてくださる森本さんがニコニコの笑顔で話される様子がとても印象的でした。
時代祭のおすすめの鑑賞スポットについてもお聞きしました。
いち推しはゴール寸前の神宮道、平安神宮の大鳥居の前。行列をかなり間近で見ることができ、森本さん自身が行列を歩いていたときも、知り合いの方にたくさん声をかけてもらえて元気づけられたとおっしゃっていました。大鳥居を背景に見ることもでき、良い写真が撮れそうな場所です。

平安神宮で撮影された記念写真。写真に写る人全員が伝統的な衣装を身にまとった様子は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。令和の時代に撮られた写真とは思えません。
取材させていただいた際、ちょうどある神社のお祭りで使うお神輿の修復中だったので見学させていただきました。

実際にお祭りで使うお神輿など、昔からのものを日頃から見ていて、昔の職人さんの技術はすごいと感じることも多いそうです。
最初の頃は触るのも怖かったとおっしゃっていました。特に、火であぶってメッキを施すという工程では「もし自分がやった作業で大切な文化財が溶けてしまったらどうしよう」と悩まれたこともあったそう。しかし、恐る恐るやっていては仕事になりません。
「それでは仕事が進まんから、あるとき思い切って“もうやってまえ!”と腹をくくってやったらできるようになった」と、最後は勢いだったと笑って話してくださいました。修復の現場では緊張感が漂っていますが、ときにはこのような大胆さも必要なのかもしれません。先輩職人たちのすごい技術を目の当たりにしながら、歴史の重みというプレッシャーを背負い作業される職人さんは、本当にすごいなと思います。


錺金具職人として、祭りを支える職人としてのお話も伺いました。
「お祭りで一番大事なのは 『ものを大切にする』という気持ちです。昔から使ってる道具を今も大切にしているところだったり、そういうことを若い人にも伝えていけたらいいね」
お祭りにはたくさんの道具が使われています。旗や幟、お神輿や鉾、衣装……。これらはお祭りのために毎年修復しながら大切に使われています。お祭りに参加することで道具について知り、伝統工芸に興味を持ってくださる方が少しでも増えると良いなと思います。そのために、私もこの「お祭り手帳帖」を通してさまざまなことを学んでいきたいです。

「もうひとつ、お祭りで大切なのは『年代を超えていろんな世代の人が一緒になって集まること』。上下関係や人間関係とかも勉強できるし、いろんな学びがあるな。核家族になってもお祭りとなったらやっぱり集まるやん。そんなふうに、人の集まる場としてお祭りはすごい意味があるなって思います。職人としてお神輿の修復などでお祭りに関わるなかで、そんなことをよく考えながら仕事をしてますね」
お祭りには「神様をまつる」という本来の意味のほかにも、人と人をつなぐ場所という役割もあるのかもしれません。お祭りには、それを支える職人さん、神職さん、地域の方々など、さまざまな世代や立場の方が関わっています。普段は交わらないような人たちとも、間接的にでも交流することができるのもお祭りの魅力のひとつではないでしょうか。この記事を通して、これからもお祭りの魅力を伝えていけるように頑張っていきたいです。
〈時代祭〉
毎年10月22日(雨天順延)に行われる、平安遷都1100年を記念して明治28(1895)年に始まった平安神宮のお祭り。明治維新時代から平安京の造営された延暦時代まで、約2000人の市民が、時代ごとのスタイルに扮して京都のまちを練り歩く、時代風俗行列がみどころです。
〈徳川城使上洛列〉

朝廷の大礼や年始などの際、徳川幕府が皇室への礼を示すために、親藩や譜代の大名が城使として上洛したところを再現した行列。今回インタビューさせていただいた森本さんがご担当された「城使」をはじめ、目附頭以上の位の役に扮する方々は馬に乗って行列に参加されます。また、行列先頭の槍持・傘持・挾箱持の掛け声や動作は見どころで、当時の行列の様子を偲ばせてくれます。

森本錺金具さん 職人interview過去記事リンク
錺金具|01|神様、仏様が24時間、常に見てはる|職人interview|KYOTOT T5 (kyotot5.jp)
錺金具|02|不器用な方がいい|職人interview|KYOTOT T5 (kyotot5.jp)
きょうのお祭り手帖
#07 時代祭-3
森本錺金具製作所
森本安之助
文:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)
撮影:
西岡菫(文化財保存修復・歴史文化コース)
〈徳川城使上洛列〉写真提供:
平安神宮様 https://www.heianjingu.or.jp/
森本錺金具さんHP:
https://morimotokazari.co.jp/ja/

時代祭の見どころは各時代の衣装に身を包んだ総勢2000人の京都市民が、約2kmの都大路を練り歩くところ。さまざまな時代の衣装を身に着けた壮麗な行列は、まさに動く京都の歴史絵巻です。見ているうちに、まるでその時代へタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
錺金具の職人である森本さんは、お祭りに使う道具(お神輿の金具の部分など)に関わっていらっしゃいます。また、令和元年の時代祭には「徳川城使上洛列(とくがわじょうしじょうらくれつ)」の「城使」役として行列に参加されたそうです。今回はお祭りに関わる職人として、そして時代祭の行列に実際に参加された方としての目線でお話を伺っていきたいと思います。