つくるひと、つかうひと
#02


水引|荒川香織さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、京都の雑貨ブランドAIUEOのアートディレクター兼、デザイナーの荒川香織さん。京都でものづくりに携わる荒川さんの“工芸品のある暮らし”をお話いただきました。

荒川香織さん
石川県金沢市出身。デザイナー。大学生の頃から20年近く京都に在住。
お世話になった京都でものづくりをしようと、AIUEO Kyoto Projectを立ち上げ、「ハッピーをあなたから」をモットーに、かわいい雑貨づくりの研究をしています。
現在、AIUEOのアートディレクター・イラストレーター・デザイナーを兼任。
自然が好きで、よく山登りに行かれるそうで、サウナ好き。
植物中心の食生活で、猫と一緒に暮らしておられます。


──水引の髪留めへのイメージやご存知の知識などはどんなものがありましたか?

水引のイメージは、冠婚葬祭の金封に使われているものというイメージが、パッと思い浮かびました。今回、この記事に参加することになり、商品の写真を見せてもらった時に、もしかしたら、自分の成人式の時につけていた髪飾りは水引だったかもしれないと、懐かしく感じました。

石川県出身なので、「加賀水引」というものを見かけたことはありました。
ですが、何本かの紐を手で曲げて作る、淡路結びなど結び方に名前と意味がある…くらいの浅い知識しかなく、歴史上どういう使われかたをしてきたのかなど、水引に関する知識はそんなに持っていません。

小洒落た水引ピアスやヘアゴムなどが並んでいるのを見たことはあったのですが、悪い言い方をすると古臭さを感じる印象でした。
そんなTHE 水引! という今回の髪飾りを見たときは、どうやって生活に取り入れようかと悩みました。写真を見ただけだと、なんだか昭和の結婚式っぽいなと思いました。

──今回は、荒川さんの生活にどのように取り入れたり、使用しましたか? また、そのように取り入れた経緯なども教えてください。

髪飾りということだったので、素直に髪に着けてお出かけしました。
窓際にいろんなオブジェを吊っているので、保管する場所を窓際にして、使ってないときは部屋の飾りにしました。

髪飾りにする以外にも、ブローチにして服のワンポイントにしたり、自然物の隣に置いても繊細な手仕事が際立って素敵でした。ブローチにする際は、ピンなどに加工するともっと付けやすくなりそう。

私は普段、ほぼ毎日「山登りですか?」と聞かれそうなファッションをしているので、水引の髪飾りをいつものファッションに合わせたら、周りはどういう反応をするんだろうと思い、普段着に髪飾りを身につけてみました。

水引の繊細さ、どことなく品のあるイメージは、どちらかというとパーティー向きなのではないか? と思ったのですが、普段の自分の印象がどれくらい変わるのか気になったので、普段着にしました。

──実際につけてみて、周囲の反応はどうでしたか?

職場では、「水引つけてる!」と声をかけてもらえたので、みんなパッと見ただけで、水引と分かるのはすごいなと感心しました。意外と古風なものだと思っていたし、冠婚葬祭のシーンでしか使わないもが、髪についていても認識されているのが、面白いなぁと感じました。

純粋に「かわいい!」という反応も多く、自分でも水引の髪飾りを着けていると、京都に馴染んでいる気がして気分が上がったので、これからもどんどんつけよう! と思えました。

──水引の髪飾りを着けてみて、気づいたことや感想を教えてください。

水引そのものに歴史や美しさが詰まっているので、年齢やシーンを選ばない気がするのが意外な発見です。若い人からお年寄りまで、水引という存在が認知されているというのは、おおきな強みであり、水引の歴史があってこそだと思います。

街で若い子が着けていても、「あ、あの子水引つけてる!」と目に止まりやすく、オシャレです。ジャンクなアクセサリーを買うくらいなら、水引の髪飾りを一生大事にする方が、素敵なのではないか? と思います。

鶴や松などの髪飾りも、挑戦する勇気が出なかったけど、おしゃれさんや外国の方にもカッコよく着けてもらいたいなと思いました。ファッションスナップをしたら楽しそう!

初めに感じた、古臭いんじゃないかという印象からは、使ってみるとかなり変わって、いいやん、これ! と思っています。また、近くの贈答品やさんにも、立派な水引の飾りがあることに気づきました。

今までは、素通りしていた水引に目がいくようになり、自分の生活に取り入れることで興味が湧き、水引のことがグッと好きになりました。

──この工芸品のもっとよくなる所や、使用する上での注意点などはありますか?

強いてあげるとするなら、今私たちが冠婚葬祭で使う水引は一度使うと捨ててしまうので、もったいないなぁ、別の形でずっと使えたらいいのになぁと思いました。

髪飾りに関していうと、色の組み合わせかたを自分で選べたりしたら、もっと自分好みの愛着が湧くものになって、より大切にできそう。

この水引の髪飾りが何年も受け継がれていって、おばあちゃんの持ってたものを引き継ぐとか、将来ストーリーが生まれると素敵だなぁと思います。

──さいごに独自の視点で、この「水引の髪飾り」に星をつけてください!!

日本人として嬉しくなる度 ★★★★★
もっと水引の良さを見直したい度 ★★★★★


水引は、祝儀袋など様々な場面で使われる工芸品。
古くから伝わる日本の水引を使った伝統文化を大切にされています。

【平井水引工芸】水引の髪飾り

水引はを和紙を紙縒(こより)にして作られています。
糸にもワイヤーにも出せない、紙の持つ張りを活かした曲線の美しさが水引の魅力です。創業100年の平井水引工芸さんは、京都でも2人しかいない水引職人のお1人として制作されています。


つくるひと、つかうひと
#02
デザイナー 荒川香織

文:
則包玲音(油画コース)

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水引|荒川香織さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、京都の雑貨ブランドAIUEOのアートディレクター兼、デザイナーの荒川香織さん。京都でものづくりに携わる荒川さんの“工芸品のある暮らし”をお話いただきました。