家族が職人

#4 組紐職人の家族 (後編)

組紐職人 増尾富士太さん、奥さまの優子さん、
昇苑くみひもで企画担当をされている中村新さんに
お話を伺いました。

職人といえば、頑固で、無口でと、どこか固い印象を持たれることが多いですが、いつもそばにいる「家族」から見てみるとどうなのでしょう?

「家族が職人」では、職人さんとそのご家族の方に伝統工芸や手仕事の魅力についてお聞きしつつ、「職人は家に帰ったら何をしているの?」「職人の奥さんって大変なのかな?」など、工房や作業場からは見ることのできない職人を覗かせていただきます。

今回は、1948年創業の組紐和雑貨専門店「昇苑くみひも」で組紐職人をされている増尾富士太さんとその奥さんの増尾優子さん、お店で企画担当を務められている中村 新さんの3人にお話を伺いました。

「奥さんからみた職人のイメージとは?」
「組紐や手仕事の魅力とは?」

お店近くの「食堂山小屋」さんにご協力をいただいて、楽しく取材をさせていただきました。

手仕事の魅力と京都という町

組紐の魅力、手仕事の魅力について教えてほしいです。

職人 富士太さん
組紐の魅力は出来ることがシンプルで、紐で出来たものであれば組紐ですぐ作ることができるという点です。
手仕事の魅力については、大量生産で作られている工業製品とは違うところにあると思っています。便利なものや全く同じものばかりが多く作られても、手仕事のものが失われてしまうと寂しく面白みに欠けてしまいます。
そういった面があるので、組紐をはじめとした多くの手仕事は無くならないと思います。

中村さん
手仕事の魅力は温かみだと思います。
無機質なものもカッコいいし良いんですけど、温度が低く冷たい印象も受けるので、寂しさがあって安らぎが無い。
だけど、そこに少しでも手仕事が加わると温度が上がると思う。
だから、私も全ての手仕事が無くなるということはないと考えています。
一方で、組紐がずっと残り続けるかというと、私には無くなってしまう恐れもあると思っていて。技術が進化すると人間は楽をしてしまおうとする生き物だから、「結ぶ」行為を面倒くさいと感じる人が出てきて、紐は磁石など別のものに代えられてしまうのではないかと考えています。だから、紐でないと表現できないものを多く作っていくことや、増やしていくことに力を入れています。

優子さん
彼(富士太さん)が「昇苑くみひも」に勤めるまでは、組紐は紐だというイメージでしか分かっていなかったし、何に使われているものか訊かれても帯締めくらいしか思いつきませんでした。
ですが、実際に仕事場を見せていただいたり、作っていく工程を見させてもらうことで色々なことが分かっていきました。最初は糸なのに糸同士が組まれることで紐になり、紐自体も太さを変えたり帯状にすることができる。
その上、生地のように作ることも可能だそうです。
糸のような数ミリのものが、こんなにも変化していくんだっていう、無限の可能性を秘めているのが組紐の魅力だと思っています。

手仕事が多く受け継がれている京都という街についてどうお考えでしょうか。

中村さん
京都という街は、一つの会社みたいなものだと考えています。
例えば、総合商社のような大きな会社に何かを頼むと、部署があるのでひとつの会社が全てやってくれる。いわば任せられる街です。
他の街ではできないことも、横のつながりが強い京都では皆で分業しながら完成まで持っていくことが出来る。
昔から仕事をひとつひとつ高い技術で取り組んできた街だから、京都ブランドと呼ばれるように安心感や保証もある。
ただ、そういったものが最近減ってきているようにも感じられます。
全部は出来なくなってきているところがあるので、それが残念に思います。

職人 富士太さん
京都のお店や工房など、看板が何もなかったり、そういったものが隠れているところが多いので、外からは何を作っているのか分からないのが京都の特徴としてあると思います。
東京のようなところでは看板が至るところに出されているので、それが何をしている場所かが分かりやすい。

優子さん
私が働いているアトリエも、まさに外からは分かりにくいところでした。
初めて行った時も、三回素通りしてしまって(笑)
だけど、目的のお店を発見したときの感じや、知る人ぞ知る優越感なようなものを感じられたりだとか、分からないことを面白いと捉える人もいるように思います。

また、京都は「新しい」と「古い」が気持ち良い加減に合わさっている街だとも思います。
歴史ある文化や技術を受け継いだり守っていくことが出来る一方で、人が多く集まるから、新しいことにも挑戦できる。
だから、古いものを持ったまま新しいことに挑戦できることを得意とする街のように思います。
目新しいものばかりに飛びつくのではなくて、古いものを踏まえて新しいものを大事に取り入れていけたら、今以上により良い街になると思います。

最後に富士太さんと奥さんが、お互いについて抱いている印象や思っているところがあれば教えていただけますか。

優子さん
日本で作られたモノは、仕事がとても細かく丁寧に作られていると感じますね。
もちろん向こうの物も優れていると感じるところはたくさんあるのだけれど、海外のモノを見る前に、まずは自分の国のことを知ってから見たら良かったな感じました。
だから昔は海外旅行にすごく行きたくて、フランスに行って確かに素晴らしいとは思ったのだけれど、それよりも日本の行ってない所も多すぎて、今はもっぱら日本の場所に行っていますね。
死ぬまでに47都道府県行きたいなって思ってます(笑)。
今はその気持ちの方が強いですね。

奥さんからみた「職人」のイメージはどういったものでしょうか?

優子さん
普段は結構腰が重くてのんびりしている人なんですけど、自分のビジョンが見えたときや自分が「コレ!」って思いたったときに人一倍行動力を発揮するんです。
そんなときにこんな行動力ある人やったんやって驚くことがあります。

職人 富士太さん
自分は僕の考えを上手く伝えてくれるところかな。

優子さん
翻訳機?(笑)

職人 富士太さん
自分のこと分かってくれてないと、できひんと思うから(笑)

 

おわり

2020.9.1更新

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「家族が職人」#4
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文:
谷口 雄基(基礎美術コース 2年)
下尾 藍子(基礎美術コース 2年)