今までとは違う形のものづくり
荒川香織:
今までやっていた印刷方法の話でいうと、CMYK印刷が当たり前で、オフセットで、版データをイラストレーターでつくるのが当たり前で。
印刷にどういう歴史があって、とか、どの方法を選ぶかは、知らないままやってきたんです。
雑貨作りも同じで、もうすでに雑貨屋さんがあって、いろんなお店があってそこに売る。そういうことを主な目的としている。
大学生の頃はそうでもなかったんですけど会社に入るとボーンってそっちに行っちゃって。
竹中健司:
飯食わなあかんしね。
荒川香織:
そう。何の経験も積んでないままの、私たちの浅さっていうのが長年蓄積されて来た。
この溝をこういう新しい、私たちにとっては新しいけど古い木版と一緒にやるとそこが埋まった気持ちになりました。
それと、自分たちが持っている力が何で、得意なのが何でっていうのが良く分かった。
竹中健司:
なるほど。ブレイクスルー。
山崎伸吾:
いいことしかないじゃないですか。
荒川香織:
いいことしかない!
山崎伸吾:
これで売れたら最高ですね。
荒川香織:
そう。売れるかはわからないけど(笑)
竹中健司:
売れるかわからへん(笑)
荒川香織:
売れるかどうかはいつでもわからない(笑)企画デザインをするっていう力があるといっていいとするならある。
企画もやるし、デザインもやるしで、AIUEOのデザイナーはどちらも一貫してやっています。
人が欲しいと思うものに近づけていく力っていうのは持っていると思っています。
ただ、どういう表現方法が適切かとか、どうしてこの方法なのか、とか、そういうことは知らなかった。
竹中健司:
それが出来てくれると、今プロデューサーとか伝統工芸触る子いっぱいいるけども、ほとんどみんな出来へん子で集まって大したことが出来へんで終わってしまう。
実際作り手の方の声を聞いて一緒に作ってやってくるとやっぱ出来るようになる。
そして売れるようになったらそれを伸吾がちょっともらってバッチリやる。 繋げる時も必要やで、その時は。
ちゃんとええもん作って技術もしっかりして、売れる話がなるときに集中しなあかん時は間入ってくれる人がいるべきなので。
それを連携していけば、それが発展になってくるっていう。
うちも嬉しいし。
荒川香織:
うんうん。
山崎伸吾:
もう、商品として形になって来てるんですよね。
荒川香織:
なってます。
竹中健司:
版木触ってないやろ。重たいで。
これくちばし、これが目玉。 これがくま。 それが桜の無垢。これが合板。
荒川香織:
純粋な疑問なんですけど、木はこれが横幅って言ってましたっけ。
竹中健司:
縦に切るので、桜の木はできてこれぐらいの幅しか取れない。
山崎伸吾:
産地によってお椀の木取りも横と縦があるんですよね。
荒川香織:
すごい。
山崎伸吾:
平面が立体というか形になっていくと楽しいね。
荒川香織:
全部見たんですよ摺ってもらったもの1枚づつ。
全部違うくて、端っこは圧のかけ方が伝わってくるっていうか。
竹中健司:
端っこには力が入るから。
荒川香織:
そう思えば、弱いところもあったり、なんかそれも面白かった。
山崎伸吾:
今回新しく生まれた「AIUEO KYOTO」としての商品を、これまでの客層の方に届けるために考えていることとかありますか?
荒川香織:
今までは、自分たちの素材への理解がすごい少なかった。見積もりを比べて選ぶとか。
例えばiphoneカバーが世の中にあるからiphoneカバー作る、みたいに。
でも一方でAIUEOのお客さんが何が好きかというと、結局は柄だなと思っている部分も大きくて。 柄可愛いから。
その入り口さえちゃんとキャッチできれば、あとはそのものが出来上がる背景がめちゃくちゃ面白いってことをもっとちゃんと知ってもらえると思っています。作っている私たちも面白くて、自信を持ってアプローチできたら、今までAIUEOの雑貨を買ってくれていたお客さんが、これから何にお金を使ってくれるのか変えられる。柄だけ可愛かったらなんでもいいっていうところから、私たちの制作を通じて、消費活動を変えられるかなと思って、売れたらいいなと期待しているところはあります。
山崎伸吾:
じゃあ今回のプロジェクトは大きなチャレンジなんですね。
荒川香織:
うん大きい。
それと、今までのAIUEOからすると、ちょっと分からなすぎるジャンル、ということもあります。
山崎伸吾:
おー!
コントロール不可能なものが出てきた
荒川香織:
うちわは、AIUEOで発売するのは周りの反応からすると「えー」ていうところもあるかもしれない。
竹中健司:
それは京うちわやから一般的に普及するうちわとはまた違うやん。
肢が分かれてるっていう。それを阿以波さんがすごいこだわりってはって。「風が優しい感じで吹かなあかんでっしゃろ」っていわはる(笑)
京うちわは弱い風にせなあかんから肢とこれが別れてんねん。
荒川香織:
あと店頭では意外と扇子が欲しいっていう声があるんです。
竹中健司:
扇子は結構売れる。
山崎伸吾:
小さくなるしね。
荒川香織:
そうそう。ものとしてもいいよね。
山崎伸吾:
改めて聞くのも変でしょうけど健司さんにとって版画の魅力というか、どこにとりつかれている感じですか。
竹中健司:
とりつかれている?(笑)
山崎伸吾:
家業がそうやし、やっておられるとは思うんですけど。
竹中健司:
別に最初は木版画を継ぎたいわけでもなくて、ずっと工房にはいたけど何してるか全然分からへんかった。
でもアホやから行くとこないし。
そのままいるだけで何してるか、なにが売れるかわからへんけど とりあえず伝統工芸の中で、木版画高い位置やったのに、ちょっと低い位置にきてるということを知った。人数の多さがあるからと。
これを上げていくためにちょっと努力して、何年かかけて。
25歳くらいからずっとやってポジションを作っていった。
仕事であるという考えでやってたけど、最近の仕事は深いところまでの仕事がちょっと濃いので1つに対して、前までやったらコントロールできてたものがコントロール不可能なものが出てきた。
なんやろうと思ったら注文が昔と違って今みたいなのもそうやけど、大学の先生とかみんなが言うてくるのがものすごい細かいねやんか。
前は「はいOK」みたいなものが普通の仕事で、飲みながらやっててええくらいの仕事やって。どの職人さんの仕事も。
僕だけじゃなくて、普通で。 それではできへんようになってきた。飲んではいけないみたいな(笑)
一同:
笑
竹中健司:
昔は飲みながらできたのに、飲んだらできへんよって。
ようやく気付いたみたいな。
次は前の日にも飲んだらいけないことも気付いて。 比べてみるとあれ、酒のときと違うぞってなって。
これはあかんなってきたらちょっとお酒やめるやん。
そしたらTVとか見ないで、目休ましとこかっていうたらさらに深く見れるようになって。
そうすると注文者がそれくらいのこと望むようになった。
するとこっちも好きやから絵の具はどうなってんねんやろとか、調べ倒したらこういう素材であるとかを知って話すとそれを喜ばはる。
そしたらまためちゃくちゃそれが面白くなってきて。
山崎伸吾 荒川香織:
へー!
竹中健司:
ルーティーン。野球のイチロー選手じゃないけども毎日を整えてつくっていくと、前出来てきたことがもちろんできんねやけど、それ以上のものができるようになっていく。
職人ってアスリートやなっていうことに気付いた。
整えていくと、整えたぶんだけのものができてくるのでそこが面白くなってきたかなとようやく50なって笑
今はちょっと手を抜けない仕事が増えてきて、数も違う。
昔はうちわでも保険会社さんが配るうちわとか扇子があって万単位で摺っていた。
その時の作業なんてチャイチャイちゃいっていう感じ。
それを習ってやってた。
そういう仕事はもうないので、精密作業にどんどん変わってきたかな。
今ちょっと整えなあかんなっていう。
さらに誰もできへん仕事になってきた。自信満々になってきた。
山崎伸吾:
職人の仕事の転機ですね。修復や復刻のような歴史の中の仕事をしていると「昔の職人さんと話しながらつくってる時がある」って話す作り手の方がいました。
竹中健司:
そうそう。ただ昔の人の方が偉いってみんな言いがちやけど、昔の人の偉い時代と偉くない時代といっぱいある。
そん時の時代のもの合わすんやったらそん時の時代のちょっと手が落ちるぐらいにしとかなあかんとか。
でも言うてるように版木で対話してるんで。先祖親方と。
こういう風に作ってたんすね。学びました。みたいな。
そんな感じで版木には歴史が入っている。
それから摺られた紙を見て、あーこういう風に刷ってはったなというのをどんどん見れる。
昔の職人さんはそんなことしなくても良かったのできたものどんどん摺っていけば飯食えてた。
今はそんなんじゃなくて、全部見て、どんなもんがきてもどんなもんでも答えられるようにしとかなあかん。
山崎伸吾:
ある時点まではかなり高度な先端技術だったと思うんですよね。
竹中健司:
そうそう。機械が入って機械が上手くなるまで。
最初は機械が下手やったんで。
山崎伸吾:
そう考えたら、さらにそれを今の仕事が更新していけたらすごいですよね。
竹中健司:
そうそう。でもやっぱりもういらんもんなんで。
正直いうと別に機械とかの方が早くできるから。
そうじゃなくて、何が入ってたんだろうか。ということを作り手が伝えられるようにすればそれでいいかなと。
この中に何が入って、今でもまだ残ってるんやろうって。残るには理由があるはずやし、その理由はなんだろうっていう。
荒川香織:
それはすごい知りたい。勉強したい。
山崎伸吾:
今までデジタルでしか仕事してこなかったような人たちとコラボすることによってお互いね。
竹笹堂さんの職人さんも成長するし。
竹中健司:
そうそうそう。
山崎伸吾:
そういうのがいいところだと思いました。
コラボの妙ですね。
伝統工芸とAIUEO
#09
竹笹堂 竹中健司
山崎伸吾
AIUEO 荒川香織
竹笹堂 HP:
http://www.takezasa.co.jp
京都伝統産業ミュージアム
https://kmtc.jp/
AIUEO HP:
https://hello-aiueo.com/
なぜAIUEOが伝統工芸に興味を持ち始めたのか。
竹笹堂さんとのコラボ商品開発するにあたり、今までのものづくりについての考えや、今回感じたことを聞かせてもらうため、京都の伝統工芸に精通するディレクター山崎伸吾さんに聞き手になっていただき、竹笹堂 竹中健司さんとAIUEO 荒川香織さんに対談をしていただきました。
京都で雑貨をつくるAIUEOが伝統工芸に出会い、新たなプロジェクトとして新商品を開発していくことになりました。
なぜAIUEOが伝統工芸に興味を持ち始めたのか。
竹笹堂さんとのコラボ商品開発するにあたり、今までのものづくりについての考えや、今回感じたことを聞かせてもらうため、京都の伝統工芸に精通するディレクター山崎伸吾さんに聞き手になっていただき、竹笹堂 竹中健司さんとAIUEO 荒川香織さんに対談をしていただきました。