AIUEO
#10


竹笹堂とAIUEO|04

京都で雑貨をつくるAIUEOが伝統工芸に出会い、新たなプロジェクトとして新商品を開発していくことになりました。
なぜAIUEOが伝統工芸に興味を持ち始めたのか。
竹笹堂さんとのコラボ商品開発するにあたり、今までのものづくりについての考えや、今回感じたことを聞かせてもらうため、京都の伝統工芸に精通するディレクター山崎伸吾さんに聞き手になっていただき、竹笹堂 竹中健司さんとAIUEO 荒川香織さんに対談をしていただきました。

ずっと勉強できる環境

竹中健司
いつでも、若くてもなんだろうが知らんことは先輩、先生なんで。
それはちょっと学び合いながらやればいい。

荒川香織
そうですね。雑貨って言葉でくくっちゃうとなんでもできる。
最近でいうと美術館のミュージアムショップはどこでも、同じようなものが並んでる。ポストカード、クリアファイル、ぬいぐるみ作ってお菓子作ってみたいな。
私たち雑貨ブランドって言っているけど、そうじゃなくても、なんでも柄乗せたらものって簡単にできちゃう時代だから、この技術がなんであるのかとか、なんで残っているのかとかを考えて、私たちもその技術を理解して使えるようになる、
っていう方にどんどんシフトしていかないと自分たちやデザイナーとかの仕事も価値が無くなるなと思っているんです。
なので今回のことはすごくいい経験。

竹中健司
それが木版だけじゃなくて他の手工芸にも上手く回って、また買う人がそれに気付いていくとちょうどいいのかな。

荒川香織
そうですね。そうなりたいなと期待しています。

山崎伸吾
AIUEOさんが今回竹笹堂さんと仕事している中で、実はここ聞いてみたかったことはないですか?

荒川香織
実は柄について。さっきも言ってくださったんですけど、いやこれはちょっとやりにくかったなみたいなことってあるんですか?

竹中健司
いやもう全部。

一同:

荒川香織
あ、全部笑
色もですね。 蛍光の色とか、濃い紺色も色落ちするので、色止めの加工を頑張ってみますと言ってくださって。色々相談させてもらいました。

山崎伸吾
以前たまたま上の工房にあがるらせてもらった時にAIUEOの商品がすごい並んでいて。竹笹堂がなんかいつもと雰囲気違うってこともありました笑

竹中健司
そうそう目チカチカする。
でもまあどこかでやったことがある仕事ではあるから対応はちゃんとしていくっていう。

山崎伸吾
やっぱり引き出し、経験値がありますね。

竹中健司
これはこういう風にして対応していこうか。とか、まあここら辺でいいやろ。っていうのがあったけど、AIUEOさんに聞くと、ここら辺はちょっと嫌だっていうのもあったから、こちらもそこはそういうべきだねっていう話をして。
技術的ではなくて精神的な話で、デザイナーの人はやっぱりそういう意識を高めてはるからそこにはちゃんと答えなあかんっていう。

荒川香織
逆もありました。今までは私たち完璧主義くらいになってたので。 摺り上がりが全部違うのでこのカスレは可愛いとか、これは良しみたいなことを見つけていったり、喋りながらこれありかなー。いやいいよな。これは可愛いね。 ハケの糸が付いていたりするのはちょっと一回考えてみようとか。
自分たちでも、もう一回印刷に対して考える機会になったなーっていうのはありますね。

竹中健司
ハケの毛も面白くて、日本画もじっくり見てもらうとハケの毛の残っている人がいはる。あー残るんだね。
しょうがないんだっていう話。いつも見ているけどしょうがない。
どこかに少しなんちゅうか、揺れているところが入ってて、それを許すのがすごい難しくて。許せるか許せへんか。

荒川香織
うんうん。そうですね。

竹中健司
許せるようになって来るとちょうどいい感じになってくる。

荒川香織
ハケの毛についてはすごい聞きたかったです。
ハケの長い毛とか短い毛とかたまに出来上がった木版和紙の上に付いてて。

竹中健司
勝手に抜けちゃうんで、見てるけど気づかへん時がある。
毛が付いてたらピンセットで取る。
摺った時にすぐ毛を取ると引っ張って汚れちゃうんで一旦乾いてから取ったら汚れへんしっていうてたら忘れてしまって残ってしまう場合もある。
こんなもん昔せーへんかったで。
この頃やるようになった。

荒川香織
それも愛おしい部分だなーと思って見てたんです。ハケ使ったのがわかるみたいな。

竹中健司
切れるねん。
版の彫った部分がカッターみたいになりよるから。
その話なんやけど、実は摺り師がわざとブラシが痛まへんように彫ってんねん。

山崎伸吾 荒川香織
へー!

竹中健司
ブラシが流れるように、絵の具がちゃんと流れるようにボトムもちゃんと彫ってあって、深すぎてもブラシの形状あるし、バレンも落ちる。
これも全部そういう形で平らにしてある。ギザギザじゃない。

荒川香織
だからですね。
インクの乗らない部分も、どれくらい綺麗にするのかなって疑問でした。

山崎伸吾
すごいですね。

竹中健司
めちゃめちゃ考えてあるで。


世界最古の木版印刷

竹中健司
これが世界最古の木版印刷百万塔 陀羅尼。

荒川香織
あーそれ調べました。それのことなんですか!

竹中健司
これは復刻版やで。

荒川香織
復刻されたってことは元の版から起こし直したってことですか。

竹中健司
元のは薬師寺とか法隆寺とかに置いてあるものを使って復刻した。
でも復刻する時に、こちらは本気なので、ちゃんと黄檗(きはだ)染めをきっちりやって。
お経の内容も一応お坊さんに聞いて確認したけど、結果それは分からないっていう話だった。
薬師寺の人も法隆寺の人も分からないって。

陀羅尼経と書いてあるからお坊さんの本読んで勉強すると、サンスクリット語から中国語、漢字に戻されて。それを日本人がもらった時に分からへんくなった。

意味がもうサンスクリット語から漢字になってて、もうさらに分からないって話になってて。とりあえずそれを形だけとる。
今はもう多少は分かるどほとんど分からない。何が書いてあるか。

荒川香織
えーすごい。

竹中健司
そんで、この時の摺り主はつたない摺り方だったので、キリってやったらあかんねん。
ちょっとつたなくやらなあかん。

山崎伸吾
それができる技術がすごいですよね。

竹中健司
いろんなもん見てるから。見に行ってるし。
むちゃくちゃ勉強したもん。

荒川香織
こういう仏典みたいなのも摺ることが多いんですね。

竹中健司
いやこれはこれとして、うちにしか来やへん。
昔はお経摺るスミ刷り屋さんって人がいはって。
ほんまはお坊さんが摺ってたんやけどね。
今は版木が一番置いてあるとこ、萬福寺で摺ってはるよ。

山崎伸吾 荒川香織
へー!

竹中健司
京都は昔からお経も摺りゃなんでも摺るしっていうのと、むっちゃ考えてる人間がいるので僕の方に回って来てそれを復刻してやってる。
炭はなんの炭使うか。何に摺るかチョイスする。
これは黄色の紙に摺ってるけど今は黄檗(きはだ)で染めてある紙なんてまあない。
黄檗でなぜ染めてあるかいうたら虫が食べない。
全部お経とか黄色なんは虫が食べへんように。

なので高貴な昔の紙は全部黄色の黄檗が塗ってあるっていう。
そうなると、黄色もっと知りたくなって。
クロームイエローっていうのがある。
クロームイエローで摺ったらなんか黒ずんできてた。 そ
したらお父さんが「オキシドール塗ったら戻る」って言ってきた。
オキシドール塗ったら戻んの?!みたいな。笑

山崎伸吾 荒川香織
へーすごい笑

竹中健司
なんで塗ったら戻んねん!
て聞いてたら、工房にいる職人の1人が千葉大の工学部卒業してるから「クロームイエローなんで、多分鉄分のイエローですね。錆びたんですね。オキシドールは過酸化水素水なので、酸素が一個多いから、それを取って、酸化を防ぐんです。」って。
そんで分析したらその通りの結果が出た。
昔は口伝で、何万回も通して、こうしたら治るよって言ってた。
クロムイエローを使うようになった時代は比較的新しいけど、何個か試してるうちに取れることがわかったんちゃうんかな。
いろんなもん使ったから。
さらにクロームイエローってどっからできんねやろって知りたくて、鉱物取りに現地まで見に行って。

荒川香織
へー面白い。

竹中健司
こいつがこうしてこうやってこの絵の具、クロムイエローなんねやなって。
昔は黄色黄檗やったけど、いろんなもんに使うと大量生産できないから自分たちで独自に作っていかなあかん。
最近では印刷するためにはもっといい色を作っていくっていう絵の具がどんどん出て来て、ニセモンとは言わへんけど最初使われた絵の具が全部変わって行ってる。昔のものも熟知しとかへんかったらまた同じ色が復元する時出せへんかったり、色の意味がなくなっていたりするのでそれを考えて黄色を選んでる。
そうなるとめちゃくちゃ面白くなってくる。

山崎伸吾
この歳になってもずっと勉強できる環境がいいですね。

竹中健司
そうそうそう。好きねんか。地学とか天文がな。笑
鉱物が好きやねん。すごい好きやでずっと喋れるで。
地学会館って御所の横にあるんやんか。
ちっちゃいのがあって。めちゃくちゃ面白いでそこいくと。
いっぱい置いてあんねん鉱物が。すごい好き。


伝統工芸とAIUEO
#10
竹笹堂 竹中健司
山崎伸吾
AIUEO 荒川香織

竹笹堂 HP:
http://www.takezasa.co.jp

京都伝統産業ミュージアム
https://kmtc.jp/

AIUEO HP:
https://hello-aiueo.com/

AIUEO
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竹笹堂とAIUEO|04

京都で雑貨をつくるAIUEOが伝統工芸に出会い、新たなプロジェクトとして新商品を開発していくことになりました。
なぜAIUEOが伝統工芸に興味を持ち始めたのか。
竹笹堂さんとのコラボ商品開発するにあたり、今までのものづくりについての考えや、今回感じたことを聞かせてもらうため、京都の伝統工芸に精通するディレクター山崎伸吾さんに聞き手になっていただき、竹笹堂 竹中健司さんとAIUEO 荒川香織さんに対談をしていただきました。